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栗原憲二

一人一人の気持ちに寄り添う服薬指導のプロ

栗原憲二(くりはらけんじ) / 薬剤師

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コラム

仮説を持って取り組む

2023年6月13日 公開 / 2023年6月14日更新

テーマ:調剤薬局、薬剤師、外来患者

コラムカテゴリ:医療・病院

 おはようございます。富士・富士宮地区にて在宅医療に携わらせていただいている薬剤師の栗原です。

 薬剤師の働きとしてどうしても欠かすことができないのが、患者様から疾病の様子や服用後の状態を聞き出すということです。単にお薬をお渡しするのが薬剤師の仕事ではありません。患者様から情報をお伺いして、そのお薬で問題ないか最終確認することが薬機法でも求められています。
 患者様はいわば顧客とも言えます。その顧客から情報を聞き出せるというのは、特権的なこととも言えます。例えばコーヒーショップでコーヒーの味はどうだったかなどアンケートを回収すると、それなりに投資が必要です。けれども薬剤師は、お薬をお渡しするという立場上、患者様も聞けば答えてくださるという特別な関係に置かれています。
 ところが、実際はそう、うまくはいきません。患者様も処方箋を出された医師や、調剤する薬剤師をかなり信頼してくださっているので、特に何も自分から薬剤師に申し出るわけではなく、お薬を受け取られるのです。
 もっと患者様のことを知ってから、お薬をお渡ししたい・・。それが私たちの願いです。

1)「開いた質問」と「閉じた質問」

 職業的な知見を述べると、薬剤師が患者様に問いかける方法は、主に2通りあります。
 一つは「開いた質問」。「最近どうですか?」とかいったアバウトな問いかけです。一般に、この開いた質問は、患者様からの聞き取りがしやすいと言われています。漠然とした質問なので、なんとでも答えられる、というのがその理由です。
 
 反対に「閉じた質問」というのは、何か聞きたいことを限定して患者様に質問することです。例えば「今日はもうお薬を何か飲まれましたか?」とか「これまでお薬を飲んで、何か気になる症状が出たことがありますか?」といったことです。質問内容が限定されていますから、患者の側に立つと不自由さがあり、重要なことを聴取できなくなることがあると言われています。

2)薬剤師の「開いた質問」の課題

 私もそのように教えられてできるだけ開いた質問を投げかけるようにしていました。・・でもあるとき気がつきました。「体調はどうですか?」と問いかけたところで、それに具体的に答えてくださる患者様の確率はとても低い、と。何度同じ患者様を相手させていただいても、薬歴に具体的に乏しい情報しか書き込めないのです・・。
 どうしてでしょうか?
 私は、ここには薬局ならびに薬剤師との対話という背景が理由として横たわっていると感じます。
 患者様は、時間と体力をかけて病院にやってこられています。病院では待たされることも少なくないでしょう。自由の効かない、固い椅子に数時間座っていることも珍しいことではありません。
 そして診察。先生がいろいろ聞かれて、それに答えて、その上で先生は処方箋を書き、患者様はそれを窓口で漸(ようや)く受け取るのです。
 その上、さらに薬局まで来て、薬剤師から漠然とした質問をされた時、大抵の人は、答えるのが面倒くさいと感じてしまうのも仕方ないのではないでしょうか?

3)「仮説」を立てて患者様と接する

 ですから私の場合、処方箋の内容、薬歴(患者が飲んだ過去のお薬の情報)、お客様の様子などを拝見させていただき、何らかの「仮説」を立てて質問するようにしています。

 たとえばお薬が変更していたら、「痛みが軽くなったのではないか?」とか「前のお薬は体に合わなかったのではないか?」とかです。「あのお薬は気持ち悪くなることがあるので、患者様の方から変えてもらったのではないかな?」といった仮説です。それを患者様にぶつけるのです。そうすると患者様から何らかのアクションが必ずあります。「いやいやそうじゃないし・・」といった具合に・・。

4)「仮説」は間違っていても全然問題じゃない

 私は、自分が立てた仮説は間違っていても構わないと考えています
 え??仮説が間違っていても問題ない、と言われてびっくりする方もいるでしょう。でもちょっと待ってください。
 間違ったことを言っていいわけではありません。
 でも根拠のある仮説であるということが大事なのです。このお薬が出たのは、こういう痛みの症状があるからではないか?・・なぜならこのお薬は神経の痛みに効果的だから、といったことです。
 ビジネスの世界にも、PDCAサイクルを回せ、という考え方がありますが、薬剤師だって同じです。PDCA、つまり仮説を経て、情報を得て、それを分析し、次に(服薬指導)につなげていく・・。この動きを繰り返すからこそ、経験値も上がっていきます。
 それは、受身的に、届けられた処方箋に基づいてお薬を調剤していくことを繰り返すのとは全然違います。このサイクルを回している人とそうでない人は、1年も経てば、かなり大きな差がついてしまうでしょう。
 それに、仮説が間違っていたとしても、それがきっかけで患者様が症状や経緯を話してくださるというメリットもあります。
 そこで最低限必要なことは、それがちゃんと根拠(理由)のある仮説である、ということだけです。

5)患者様から教えて頂く

 もちろん薬剤師は予言者などではありませんから、患者様が調節に自分で伝えていないことを言い当てて患者様の妄信を獲得しようとすることは、大きな間違いです。仮説は、経験と知識に裏付けられたものなのであって、根拠のない直感などであってはいけません
 私も整形外科前の薬局で調剤しておりますので、患者様の痛みが、腰にあるのか、足なのか、膝なのか何となく分かることがあります。でもそれは、歩き方や顔の表情などから分かるのです(例えば腰の痛みのある方は陰鬱な表情をしている、など・・)。
 薬剤師にとって疾病を抱えられた患者様は、ある意味「先生」的な立場だとも言えます。(少なくともその患者様の)疾病の状態についてより知っているのは、薬剤師ではなく患者様だからです。
 ですから、仮説を立てて能動的に患者様と関わっていくとしても、薬剤師はあくまでも患者様に対して謙遜な態度であることが求められていると思います。

結論)能動的で質の良い経験を手にし成長してく

 薬剤師は、ともすれば受身的な立場に置かれた身分に成り下がります。かつては薬剤師は、対物行為、すなわちお薬だけを相手にしていればいい、お薬の取り揃えをいかに間違わないようにするかが重視された時代がありました。調剤薬局が30年近く前、日本にも登場したころはそういう傾向が確かにあったと思います。
 けれども、たとえば最近はピッキング(お薬を取り揃えること)も、機械の手助けをしてもらって間違いをなくすことが一般的になってきました。つまり薬剤師は、対物の業務から解放されて、より患者様に関わっていくことが求められています。
 そのほか、処方箋の内容に疑義があれば、医師に問い合わせる役割を持ってもらおうとか、最近は病院内で薬剤師が患者様の症状を見て医師に処方提案を行うことも増えてきました。
 つまり薬剤師も、今の時代、対物業務から解放され、いかに経験値を積み重ねていくかが問われる時代となっているのです。
 受身的立場から得られる経験と、能動的に自分から問いかけ、働きかけて得る情報の質は、全く異なります。自分の得意な分野を育てていくためには自分から患者様にアプローチし経験を積み重ねていくことが重要なのです。
 薬剤師という肩書きは同じだとしても、自分の得意分野を持って、その領域でエキスパートとして自分を活かせる薬局・・。そういう薬局こそが、今の時代求められています。

 私どもの薬局では、基本すべての業務を全ての薬剤師が共同して作業しておりますが、製薬会社担当、施設担当、個人宅担当、透析担当、整形外科担当など、得意分野をそれぞれ持っています。

 ぜひ皆様に、信頼できる在宅医療機関、ケアセンター、薬局、薬剤師を紹介させてください。私どもも日々、チームとして研鑽していきたいと思っています。そのためには、皆様からのご支持も不可欠です。どうぞよろしくお願いいたします。

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