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舌の苔をとってはいけない人の話。養生法と漢方

植松光子

植松光子

前回、舌の苔が厚く、取っても良い舌の苔の話をいたしました。
今回は苔を取ってはいけない舌の話をいたします。

最近「舌が痛い」と訴える方が増えたような気がします。舌を拝見しますと舌の苔が薄く、乾いているか、ほとんどなく舌が赤いのです。
「口が渇きますか?」とお聞きしますと、全員が「乾きます」と答えます。この体質は中医学では「体に必要な水分が足りない」と言う意味で「陰虚(いんきょ)」と言います。

「陰」が正常範囲より不足している状態です。ここで中医学の基本の陰陽の話をします。自然界のすべての現象や物を陰陽のバランスで解釈する理論です。
「陽」は太陽・天・昼・熱温・男・春夏など。
「陰」は月・地・寒涼・女・秋冬などです。

この陰陽のバランスで言いますと陰が少ないと「陽」は余ります。「陰」である水がすくないので、「陽」である熱が相対的に余り、その結果乾燥状態になります。手足がほてる、喉や舌の乾燥・舌質が濃い赤色、苔が少ない、舌がひりひり痛む、舌に細かい割れ目がある、辛い物が沁みる、目や肌の乾燥、このような状態が見られます。

どうですか? このような状態でなお舌の苔を取らないといけないのでしょうか?
第一、舌の苔がありません。無理にこすったら痛みを起こすでしょう。このような方が最近増えています。
原因は
1:乾燥体質(陰虚体質)
2:老化 赤ちゃんに比べ高齢者の体内水分は減少します。
3:汗の出すぎ
4:ストレス社会で自律神経が乱れ、興奮状態が続き体に熱がこもっている。
5:地球の温暖化
6:お酒の飲み過ぎ
などがあげられます。

もともとの体質とさらに自然環境、社会環境などで体に「熱」がこもると、相対的に水分が不足します。結果舌が乾燥して苔は薄くなり、なくなって細かい亀裂が入る「陰虚」の舌になります。



(上2つ写真:陰虚の舌) 


(上写真:健康な方の舌)

身体に現れる症状としては
1:皮膚の乾燥・髪に艶がなくなる。
2:目の乾燥と痛み・ごろごろ感

3:口や喉の渇き・声がれ・空咳
4:唾液が減り食べ物も痞えやすくなる。
5:生理周期が短くなる
6:生理の血液やおりものが少なくなる。
7:性交痛
8:便が固くコロコロ便になる
9:舌の苔が乾燥

乾燥する、ということは様々に人体に影響を及ぼすことに驚かれることでしょう。
体質改善として次のことが揚げられます。

1:睡眠:夜は11時まで眠りに就き十分な睡眠をとる。昼は「陽」夜は「陰」です。昼活動して汗をかき体は熱くなり、頭も使います。夜は体温が下がり、栄養分を貯え潤す時間です。この夜早く寝ると十分栄養や水分が貯えられ体が潤います。ただでできる大事な養生法です。

2:飲食物:滋養のある温かい水分と潤す力の食べ物をたっぷりとる。
潤す食べ物:枸杞の実、大根、桃、梨、スイカなど


(写真:枸杞の実が入ったお茶)

3:漢方生薬には潤す成分が多種類あり、食事と睡眠に気を付けると同時に漢方薬を飲んでいくと効果が早いです。枸杞の実は食べ物として、また長く飲んでもよい不老長寿の働きがある、養生薬という意味の上品(じょうほん)に朝鮮人参・胡麻・蓮根などと一緒に、「神農本草経」に載っています。長く飲んでいると目の疲れに効きます。他には地黄、麦門冬、百合の仲間などがあります。


1、2の養生と漢方薬を飲んでいくと乾燥が少なくなり、舌の割れ目(裂紋)が少なくなり、症状が改善され元気になっていきます。

人の体質は個人差があります。また季節でも変わります。テレビなどで言うのは一般的なことであって、あなたに合うかどうかはわかりません。思い当たれば実行しても、はてな?と思ったらお近くの漢方を専門に勉強している医療者にお聞きするのが安全です。

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植松光子
専門家

植松光子(薬剤師)

有限会社ウエマツ薬局(漢方薬膳サロン ウエマツ薬局)

症状や悩みに合わせた生薬を煮出す「煎じ薬」を取り扱う漢方専門薬局。「ほっとできるサロン」としてアトピーや不妊のほか心身の悩みに寄り添い、薬膳の知識や適切なスキンケアをアドバイス。

植松光子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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