冬の肌トラブル対策と漢方
テレビなどで「舌の苔はとりましょう」という話を健康コーナーでしています。舌の苔はとった方がよい人ととらない方がよい人がいることをご存知ですか? このことについてお話します。
舌の苔はとっても翌日には出てきます。薄い白い苔はむしろ水分代謝の正常な印です。舌に潤いを与える働きをしています。
しかし、厚くてねっとりとしてお豆腐カスのような苔は、中医学では「湿」と言って体のなかに余分な水分が溜まっていることを指します。このべっとりした厚い苔には細菌が溜まり、口臭の原因となり、また歯周病の原因となる細菌もいます。体内に熱がこもっていると黄色くこげ茶色にもなります。このような苔はとった方がよいのです。飲み過ぎ、食べ過ぎ、胃腸がもたれてゲップが出るときなど苔が厚くなっていますから、ご自分の舌を鏡で見てください。
中医学では人の体の栄養となる「気・血・水」がうまく循環していると健康と考えます。しかしその命を支える栄養が滞ったり、足りなかったりすると体調が悪くなります。
舌の苔はその命にとって大事な体内の「気・血・水」の「水」が適量あるか、あるいは足りないか、あるいは余って悪さをしているかを表す、大事な外からわかる「ベロメーター」なのです。苔をとって安心してもその日だけです。翌日みれば元の厚い苔に戻っていますから。体調と体質を治せば苔は薄くなり、口臭も薄くなります。
苔が厚くなる原因はほかには風邪を引いて食欲がなくなった時、睡眠不足、食べ過ぎ、胃腸が弱い、脂肪肝、コレスのロールが高いなどもあります。いずれも健康とは言えない状態です。
脂肪肝、コレステロールが高い人はその食生活が関係して苔に出ています。ほかには指先などによくかゆい水泡が出る、アトピー性皮膚炎でじくじくした湿疹が出る方も苔が少し厚いようです。
(写真:厚い苔の舌)
さてその舌の苔を無理にこするとなぜいけないのでしょうか?
それは人生にとって最大と言ってよい喜び「美味しい」という感覚を感じなくなってしまうからです。
当薬局にもたまに「テレビで舌の苔をとりなさい」というからこすっていたらごはんの味が全く分からなくなった、という方がご相談にいらっしゃいます。舌の表面にはぶつぶつした味蕾(みらい)という、味を感じるところがあります。味には甘味、塩味、酸味、苦み、うま味があります。その味を感じなくなったら、それこそ人生味も素っ気もなくなってしまいます。
それでは、苔が厚くならないようにするにはどうしたらよいでしょうか?
体に巡っている「気・血・水」が過不足なく巡っていればよいのです。体に必要な水分が溜まってくると梅雨時のいやな湿気と同じ「湿」となり胃のもたれ、水泡や、むくみ、だるい、ニキビ、などのような症状がでて、その結果舌の苔となって出てくるのです。
では、その水の停滞は「心・肝・脾・肺・腎」の五臓のうちどれが関係するのでしょうか?
中医学では「脾」と言いますが、胃腸です。「脾」とは胃、食道、小腸、すい臓、胆のうなどの消化器全般を示します。「脾」の主な働きは消化し、運ぶことです。
よく噛んで胃袋でよくこなし、食道を通って小腸へ運び、お粥のようにドロドロにして肝臓に送ります。消化しないものは大腸に送り、便となって出ていきます。ここが大事です。
完全にカスだけが出ていけばバナナのような形の太い便が、2,3本出るはずです。でも緩い形のない便が出てくるときは十分消化していないのです。
原因は食べ過ぎか、慢性の胃腸虚弱です。食べ過ぎの人の便は臭く、舌の苔はべっとりと厚く、黄色味を帯びています。胃腸が弱い人の下痢便は匂いが弱く、舌の苔も白く薄くべっとりしています。どちらも原因を治していけば厚い苔は薄くなり、テレビで言われるように苔をとる必要はなくなります。
(上の写真は健康なうっすらと苔がある舌。こちらは苔をとる必要がありません。)
以上をまとめますと厚い苔は味蕾を傷つけないようとっても良い。それ以外はとる必要がない。むしろ舌や味蕾を傷つけるのでとらない方がよい。
けれども厚い苔が出ることは身体にとって健康とは言えないのです。厚い苔が出ないよう食生活や生活をも直しましょう。
厚い苔がない人はは取る必要がない。むしろ中医学から見ると舌や味蕾を傷つけるのでとらない方がよい。これが結論です。
では「湿」を生まない食事は
まず食べ過ぎないこと。
早食いをしないこと。
夜遅い食事は軽くして、翌朝おなかがすいて朝食がおいしく食べられるような食事量をこころがけましょう。
夜は早く寝て朝早く起き、生活のリズムをつけて新陳代謝をよくすること。
毎日よく歩き軽い汗をかいて体の中の「湿」を汗で出しましょう。
ゆっくり入浴するのもいいです。
食物としてははと麦、レンズマメ、枝豆、もやし、しじみ、唐辛子、山椒、緑茶などがあります。
写真:はと麦(ヨクイニン)
次回は絶対に舌をこすったりしてはいけないタイプの話をしましょう。