保護者の悩みを解決!子どもの運動習慣を家庭で楽しく継続させるための秘訣

近藤健吾

近藤健吾

テーマ:運動

「子どもの運動って大事だってわかっているけれど、うちの子全然体を動かしたがらなくて…」
「共働きで忙しくて、なかなか公園に連れていってあげられないんです。」
「家でできる運動って、どんなことをすればいいの?」

このようなお悩みを抱える保護者の方は、決して少なくないはずです。現代社会において、子どもたちの運動量は減少傾向にあり、その背景には、保護者の皆様が直面する様々な現実的な課題があります。

私自身、日本体育大学で身体教育を学び、幼稚園教諭として長年多くの親子と関わってきました。その経験から、子どもの運動習慣は、園だけでなく「家庭」での取り組みが非常に重要であると強く感じています。しかし、頭ではわかっていても、日々の忙しさの中で実践するのは難しいと感じることもあるでしょう。

この記事では、保護者の皆様が抱える具体的な悩みに寄り添いながら、子どもの運動習慣を家庭で「楽しく」「無理なく」「継続」させるための秘訣を、専門家としての視点と、同じ子育て世代としての共感を込めてお伝えします。

なぜ、子どもの運動習慣は家庭で定着しにくいのか?保護者の声から見える課題
まず、多くの保護者が子どもの運動習慣についてどのような悩みを抱えているのか、その背景を探ってみましょう。一般的な調査や私の経験からも、以下のような声が多く聞かれます。

「時間がない」:


共働きで帰宅が遅く、平日は子どもを外で遊ばせる時間がない。
休日も家事や習い事の送迎などで手一杯。
短時間でも効果的な運動が分からず、結局何もできない。

「場所がない・環境が整わない」:


近くに安全に遊べる公園がない、または遊具が少ない。
雨の日や暑すぎる・寒すぎる日に、室内で体を動かすスペースがない。
マンションなので、飛び跳ねる遊びは近所迷惑になる。

「子どもがやりたがらない・続かない」:


ゲームや動画ばかり見ていて、外遊びに興味を示さない。
せっかく誘っても「つまらない」とすぐにやめてしまう。
特定の運動に偏りがちで、多様な動きを経験できていない。

「どう関わればいいか分からない」:


どんな運動をさせれば、子どもの発達に良いのか分からない。
自分自身が運動が苦手なので、子どもに教えられない。
無理にやらせて、運動嫌いになったらどうしようと不安。

「費用がかかる」:


スポーツ系の習い事は月謝が高い。
道具を揃えるのにお金がかかる。
これらの悩みは、保護者の皆様が日々感じている切実な問題です。しかし、大切なのは、完璧を目指すことではありません。小さな一歩からでも、できることから始める工夫が、子どもの運動習慣を楽しく継続させる鍵となります。

秘訣1:親自身が「楽しむ」姿勢を!親子で体を動かす時間の質を高める


子どもは、親の背中を見て育ちます。親が楽しそうに体を動かす姿は、子どもにとって何よりのモチベーションになります。

「ながら運動」で日常に運動習慣を:


歯磨き中に片足立ち: バランス感覚を養いながら、家族でタイムを競うのも楽しいでしょう。
テレビを見ながら足踏みや軽いストレッチ: コマーシャルの間だけなど、区切りをつけて取り入れると継続しやすいです。
家事も立派な運動に: 掃除機をかける、洗濯物を運ぶ、お風呂掃除をするなど、家事も全身運動です。「どっちが早く拭けるかな?」など、遊びの要素を取り入れると、子どもも喜んで手伝ってくれるかもしれません。

「すきま時間」を意識的に活用する:


信号待ちで足踏み・ジャンプ: 信号が変わるまでのわずかな時間も、体を動かすチャンスです。
エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う: 「何段登れるかな?」と数えたり、「鬼が来るから急いで!」など、ストーリーを作ると飽きずに続けられます。
お風呂上がりに親子でストレッチ: 一日の疲れを癒しながら、体の柔軟性を高めます。動物の真似をしながら伸ばすのも楽しいです。

完璧な運動ではなく「楽しい触れ合い」を優先する:


休日に必ず広い公園に行く必要はありません。自宅の庭や、近所のちょっとしたスペースでも十分です。
「今日は何をしようか?」と子どもに尋ね、子どもの「やりたい」という気持ちを尊重しましょう。
親が運動が苦手でも大丈夫です。一緒に転がったり、追いかけっこをしたり、子どもが笑ってくれることが一番大切です。
親が「運動は楽しいものだ」と感じていることが伝われば、子どもも自然と体を動かすことが好きになります。

秘訣2:「主体性」を育む!自ら体を動かしたくなる環境と声かけ


子どもが自ら進んで運動に取り組むためには、「やらされている」という感覚ではなく、「楽しい」「もっとやりたい」という内発的な動機付けが不可欠です。

「選択肢」を与える声かけ:


「今日は何して遊びたい?」と尋ね、ボール遊び、鬼ごっこ、縄跳びなど、いくつかの選択肢を提示します。
「外に行くと、どんな発見があるかな?」など、好奇心を刺激する声かけをします。

「遊び」の中に運動要素を組み込む:


宝探しゲーム: 隠された宝物を探しに家の中や庭を駆け回ることで、自然と全身運動になります。
動物ごっこ: ライオンのように四つん這いで走る、ウサギのように跳ねる、鳥のように羽ばたくなど、多様な動きを経験できます。
お絵かき遊び: 広い紙に寝転がって絵を描く、壁に貼った紙に背伸びして描くなど、姿勢を変えるだけでも運動になります。

成功体験を積み重ねるポジティブな声かけ:


「すごい!こんな高いところまで登れたね!」
「諦めずに何度も挑戦したからできたんだね、素晴らしい!」
結果だけでなく、「頑張ったプロセス」を具体的に褒めることで、子どもの自信と意欲を引き出します。
失敗しても「ドンマイ!次はこうしてみようか!」と、前向きなアドバイスを心がけます。

安全な「見守り」の姿勢:


子どもが少し難しいことに挑戦しようとしている時も、すぐに手を差し伸べるのではなく、まずは見守る姿勢が大切です。
ただし、危険な場所や遊び方にはしっかりと注意を促し、安全管理は徹底しましょう。
子どもが思い切り体を動かせるよう、家具の配置を見直したり、床の滑り止めをしたりするなどの環境整備も重要です。
秘訣3:年齢・発達段階に合わせた運動遊びのアイデア(室内&室外)
子どもの発達段階に合った運動を提供することは、飽きさせずに楽しく継続させる上で非常に重要です。ここでは、0歳から5歳までの子ども向けの具体的な運動遊びのアイデアをご紹介します。

0~1歳児(ねんね・はいはい・つかまり立ち期)
室内:
寝返り・ずりばい・ハイハイ競争: 親が少し先でおもちゃをちらつかせ、取るのを促します。
トンネルくぐり: 段ボールや毛布でトンネルを作り、ハイハイでくぐらせます。
つかまり立ち・伝い歩きサポート: 家具を使って移動するのを促し、安定してきたら少し手を離して支えます。
いないいないばあ: 顔の表情や声のトーンで子どもを刺激し、全身を使って反応を促します。
室外:
抱っこで散歩: 外の景色や音に触れさせ、五感を刺激します。
芝生でゴロゴロ: 自然の中で寝転がったり、ハイハイしたり、土や草の感触を楽しみます。
1~2歳児(よちよち歩き・走り始める時期)
室内:
ボール転がし・投げっこ: 軽くて柔らかいボールを使い、親子で転がし合ったり、優しく投げ合ったりします。
タオル綱引き: 短く丸めたタオルを使い、親子で軽く引っ張り合いっこします。
障害物コース: クッションや座布団を並べて、またぐ、乗り越える、くぐるなどの動きを促します。
音楽に合わせてダンス: 好きな音楽をかけて、自由に体を動かします。手拍子や足踏みも楽しいです。
室外:
かけっこ・追いかけっこ: 短い距離でも、親が追いかけることで走る意欲が刺激されます。
砂場遊び: 砂を掘る、運ぶ、形を作るなど、指先や腕の運動になります。
落ち葉拾い・石集め: 自然の中でしゃがんだり、立ち上がったりする動きを繰り返します。
3~5歳児(全身運動が活発になる時期)
室内:
新聞紙遊び: 新聞紙を丸めてボール、ちぎって雪、広げて隠れ家など、様々な遊びに発展させます。投げる、走る、跳ぶなど多様な動きができます。
風船バレー: 軽く叩くだけで動く風船は、小さな子どもでも成功体験を積みやすく、全身を使います。
サーキット遊び: 複数の運動(平均台渡り、縄跳び、跳び箱ごっこ、マット運動など)を組み合わせたコースを作り、順番に挑戦します。
手押し車・動物歩き: 親が子どもの足を持って手押し車をしたり、クマ、カニ、アヒルなどの動物の歩き方を真似したりします。
室外:
鬼ごっこ・だるまさんがころんだ: ルールのある遊びは、集中力、判断力、社会性を育みます。
縄跳び: 最初は縄を地面に置いて跳び越える練習から始め、少しずつ回して跳ぶ練習へとステップアップします。
うんてい・鉄棒: ぶら下がる、前回りなど、握力や全身の筋力を養います。
ボール遊び(キャッチボール、サッカーごっこ): 目と手の協応動作や、足を使ったボール操作を養います。
三輪車・自転車: バランス感覚と全身運動を同時に鍛えます。


秘訣4:運動習慣の定着が子どもにもたらす多面的なメリット


運動は、単に体を丈夫にするだけでなく、子どもの心と脳の発達にも驚くほど良い影響を与えます。このメリットを保護者自身が理解していれば、日々の運動へのモチベーションを維持しやすくなります。

体力・運動能力の向上: 丈夫な体を作り、病気になりにくい体質になります。基本的な運動能力が向上し、将来様々なスポーツに挑戦する土台ができます。
心の健康と自己肯定感の育成: 「できた!」という成功体験は、子どもの自己肯定感を高めます。ストレス解消になり、感情をコントロールする力が育ちます。
脳の発達と学習能力の向上: 運動は脳の神経細胞を活性化させ、集中力、記憶力、思考力などの認知能力を高めます。これは、就学後の学習にも良い影響を与えます。
社会性とコミュニケーション能力の発達: 友達と一緒に遊ぶ中で、ルールを守る、譲り合う、協力するといった社会性が育ちます。言葉だけでなく、非言語的なコミュニケーション能力も養われます。
生活リズムの確立と質の高い睡眠: 適度な運動は心地よい疲労感をもたらし、夜の寝つきを良くし、深い睡眠を促します。良質な睡眠は、成長ホルモンの分泌を助け、心身の成長に不可欠です。
意欲と忍耐力の向上: 難しいことに挑戦し、失敗しても諦めずに繰り返す中で、目標に向かって努力する意欲や忍耐力が養われます。
これらのメリットは、子どもたちが将来「生きる力」を身につける上で、かけがえのない財産となります。

秘訣5:無理なく、楽しく、長く続けるためのアドバイス


「継続は力なり」と言いますが、子どもの運動習慣もまさにその通りです。無理なく楽しく続けるためのポイントをまとめました。

毎日「少し」から始める:


「毎日1時間公園に行く」といった目標はハードルが高いかもしれません。まずは「毎日15分、家で体を動かす時間を作る」など、達成可能な小さな目標から始めましょう。
目標を達成できたら、親子で喜びを分かち合うことで、次のモチベーションに繋がります。
「ご褒美」を上手に活用する:
運動ができたら、大好きな絵本を読んであげる、一緒にシールを貼る、といった形で「ご褒美」を設定するのも効果的です。物ではなく、体験や親子の触れ合いを重視したご褒美が望ましいです。

他の習い事とのバランス:

早期教育ブームの中、たくさんの習い事をさせているご家庭もあるかもしれません。しかし、子どもの自由な遊びや運動の時間を奪ってしまわないよう、習い事の数や内容を見直すことも時には必要です。
習い事の移動時間を歩く時間にする、といった工夫もできます。

子どもの「好き」を尊重する:

サッカーや野球など、特定のスポーツに限定せず、子どもが興味を示した遊びや動きを応援しましょう。
時には親が思いつかないような、子どもならではの遊びを発見することもあります。その発想を大切にし、一緒に楽しんでみましょう。

体調に合わせた調整:

子どもが体調を崩している時や、疲れている時は無理に運動させないことが大切です。
病み上がりや季節の変わり目など、子どもの体のサインを見逃さずに、運動量や内容を調整しましょう。

まとめ:家庭は最高の「運動場」!笑顔で体を動かす毎日を

子どもの運動習慣を家庭で楽しく継続させる秘訣は、親が「完璧」を目指すのではなく、「できること」から「楽しく」始めることにあります。
広大な公園や高価な遊具がなくても、リビングのマット一つ、ボール一つ、あるいは何もなくても、親子のアイデア次第で家庭は最高の「運動場」に変わります。

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近藤健吾
専門家

近藤健吾(講師)

わくわくキッズ

子どもも大人も集いわくわくが生まれる体操教室を運営。専門知識と幼稚園教諭経験をもとに、心と体を育てる運動指導の研修を行うほか、YouTubeなどで体を動かす楽しさを伝える活動にも注力しています。

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