幼児期の運動能力をぐんぐん伸ばす!大人の役割とは?

近藤健吾

近藤健吾

テーマ:運動

皆さん、こんにちは!子ども運動コンサルのけんご先生です。

「うちの子、どうも体を動かすのが苦手みたいで…」「運動神経って遺伝で決まるもの?」
そんなお悩みをお持ちの保護者の方、いらっしゃいませんか?

実は、幼児期の運動能力は、単なる遺伝や生まれ持った才能だけで決まるものではありません。
そこには、私たち大人の関わり方が非常に大きく影響しているのです。

今回は、「幼児期の運動能力向上における大人の役割」をテーマに、最新のエビデンスに基づいた情報と、ご家庭で実践できる具体的なヒントをたっぷりとご紹介していきます。お子さんの秘められた運動能力を最大限に引き出すために、ぜひ最後までお読みください。

1. 幼児期に運動が大切な理由:未来の健康と能力の土台作り


「走ったり跳んだり、元気に遊んでいればそれで十分でしょ?」そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、幼児期の運動は、単に体を動かすだけでなく、お子さんの心と体の発達に不可欠な、非常に重要な役割を担っています。

1-1. 脳の発達と運動能力の密接な関係


驚くべきことに、幼児期の運動は、脳の発達と深く結びついています。複数の研究が示唆しているのは、運動を活発に行うことで、脳の神経回路がより複雑に形成され、認知機能、記憶力、そして問題解決能力の向上に寄与するということです。例えば、米国のCDC(疾病対策センター)も、子どもたちの身体活動が認知能力の向上に役立つ可能性を指摘しています。新しい動きを習得しようとする過程で、脳は空間認識能力やバランス感覚を養い、これが学業成績にも好影響を与える可能性があると考えられています。

1-2. 基礎運動能力の獲得:将来のスポーツや生活の基盤


幼児期は、「プレゴールデンエイジ」と呼ばれる運動能力のゴールデンタイムの前の非常に重要な時期です。この時期に、走る、跳ぶ、投げる、捕る、バランスをとるといった「基礎運動能力」を十分に経験し、習得することが、将来的に特定のスポーツに取り組む際の土台となります。これらの基礎がしっかりと身についているお子さんは、新しい動きを習得する際にもスムーズに対応できる傾向があります。例えば、文部科学省の「幼児期の運動に関するガイドライン」でも、多様な動きを経験することの重要性が強調されています。

1-3. 心の成長と社会性の育み


運動は、身体的な成長だけでなく、お子さんの心の成長にも大きな影響を与えます。友達と一緒に体を動かすことで、協調性やコミュニケーション能力が育まれます。また、目標に向かって努力したり、失敗を乗り越えたりする経験は、自己肯定感や忍耐力を養う上で非常に重要です。鬼ごっこで追いかけっこをしたり、ボール遊びでパスを交換したりする中で、自然とルールを理解し、相手を思いやる気持ちが芽生えていきます。

2. 大人の役割:環境を整え、意欲を引き出すファシリテータ



では、私たち大人は具体的にどのような役割を担えば良いのでしょうか?それは、お子さんの運動能力を「指導する」のではなく、「引き出す」ための「ファシリテーター(促進者)」になることです。

2-1. 安全で魅力的な運動環境の提供


お子さんが安心して自由に体を動かせる環境を整えることは、大人の最も基本的な役割です。

十分な広さの確保: 屋内であれば家具の配置を見直し、屋外であれば公園や広場など、安全に走り回れる場所を選びましょう。
安全への配慮: 危険なものが周囲にないか、転倒の危険性はないかなど、常に安全確認を怠らないようにしましょう。
多様な遊具の活用: ボール、縄跳び、フープ、平均台など、様々な種類の遊具を用意することで、多様な動きを引き出すことができます。高価なものである必要はありません。身近なものを工夫して使うことも大切です。例えば、布団を山にして登ったり、クッションを並べて飛び石のようにしたりするだけでも、楽しい運動になります。

2-2. 「やってみよう」を促す声かけと励まし

お子さんの「やってみたい!」という気持ちを尊重し、積極的に応援することが重要です。

肯定的な言葉で応援: 「すごいね!」「もう一回やってみようか!」「頑張ったね!」など、具体的に褒めたり、
努力を認めたりする声かけは、お子さんのやる気を引き出します。
成功体験の積み重ね: 難しすぎる課題ではなく、少し頑張ればできるレベルの目標を設定し、成功体験を積み重ねることで、自信を育みます。
失敗を恐れない雰囲気作り: 「失敗しても大丈夫だよ」「次はもっとできるよ」など、失敗を責めるのではなく、挑戦する気持ちを大切にする姿勢を示しましょう。OECDの調査では、子どもたちが挑戦することに前向きになるような、心理的な安全性の確保が重要であることが示唆されています。

実際に私が講師を務める体操クラブでは魔法の合言葉と称して
17個のポジティブな言葉を子どもたちと共に毎レッスンみんなで声に出し復唱するという活動も行っています。
『17の魔法の合言葉』


魔法の合言葉

2-3. 大人も一緒に楽しむ「共遊」の重要性


最も効果的なのは、大人がお子さんと一緒に運動を楽しむことです。

模倣学習の効果: 幼児期のお子さんは、大人の真似をすることから多くのことを学びます。
大人が楽しそうに体を動かしている姿を見せることで、お子さんも自然と運動に興味を持ち、体を動かしたくなります。
絆の強化: 一緒に遊ぶ時間は、親子のコミュニケーションを深め、強い信頼関係を築く貴重な機会です。
鬼ごっこ、かけっこ、ボール投げなど、どんな簡単な遊びでも構いません。
運動習慣の定着: 大人が運動習慣を持っていることは、お子さんにとって良い手本となります。
家族で一緒に体を動かす時間を定期的に設けることで、運動が生活の一部として定着しやすくなります。


2-4. 強制ではなく、自発的な活動を尊重する


「運動しなさい!」と強制しても、お子さんの意欲は低下してしまいます。

選択肢の提供: 「今日は何をしたい?」「どこで遊ぶ?」など、お子さん自身に選択肢を与え、
主体的に運動に取り組む機会を与えましょう。
遊びの中から運動を引き出す: 運動単体として捉えるのではなく、遊びの中に自然と運動の要素を取り入れる工夫をしましょう。

例えば、電車ごっこで線路の役をしたり、動物の真似をして歩いたりするのも良いでしょう。
過度な期待は禁物: 他のお子さんと比較したり、過度な期待をかけたりすることは避けましょう。
お子さんそれぞれのペースと個性を尊重することが大切です。


3. 発達段階に応じた運動のポイント:遊び方のヒント


幼児期といっても、年齢によって身体能力や興味の対象は大きく異なります。ここでは、発達段階に応じた運動のポイントと、具体的な遊び方のヒントをご紹介します。

3-1. 0歳~1歳半頃:探索と感覚の発達


この時期は、寝返り、ずり這い、ハイハイ、つかまり立ち、そしてあんよへと、目まぐるしく体の使い方が変化していきます。

遊びのポイント:
寝返り、ずり這いを促す: 広いスペースでうつ伏せにしたり、お気に入りのおもちゃを少し離れた場所に置いたりして、自発的な移動を促します。
ハイハイの機会を増やす: 段差を乗り越えたり、トンネルをくぐったりするなど、様々な場所でハイハイを経験させましょう。ハイハイは全身運動であり、バランス感覚や体幹を鍛える上で非常に重要です。
つかまり立ち、あんよのサポート: 安定感のある家具や大人にしっかりつかまれる場所で、ゆっくりと練習をサポートします。無理に立たせようとせず、お子さんのペースに合わせましょう。
感覚遊び: 様々な素材のものを触らせたり、音の出るおもちゃで遊んだりして、五感を刺激しましょう。


3-2. 1歳半~3歳頃:歩行の安定と多様な動きの獲得


歩行が安定し、駆け足、飛び跳ね、ボールを蹴るなど、より複雑な動きができるようになります。

遊びのポイント:
かけっこ: 広い場所で一緒に駆けっこを楽しみましょう。追いかけっこや鬼ごっこも喜びます。
ボール遊び: 転がしたり、投げたり、蹴ったりと、ボールを使った様々な遊びを取り入れましょう。大きな柔らかいボールがおすすめです。
ジャンプ: 段差から飛び降りたり、その場でジャンプしたりする遊びを促しましょう。
階段の上り下り: 手すりにつかまったり、大人の手をつないだりして、安全に階段の上り下りを練習させましょう。
全身を使った遊び: 滑り台、ブランコ、鉄棒など、公園の遊具を積極的に活用しましょう。


3-3. 3歳~就学前:協応性とバランス能力の向上、ルールの


体のコントロールが格段に向上し、両手両足を使った協応動作がスムーズになります。友達との関わりの中で、ルールのある遊びにも興味を持ち始めます。

遊びのポイント:
縄跳び: 短い縄跳びから始め、徐々に長い縄跳び、そして二重跳びへとステップアップを目指しましょう。
片足立ち、バランス: 平均台の上を歩いたり、ケンケンパをしたりして、バランス感覚を養いましょう。
ボール遊びの発展: ドッジボール、サッカー、バスケットボールなど、ルールのあるボール遊びを取り入れ、友達との協力や競争を経験させましょう。
自転車の練習: 三輪車から始め、補助輪付き自転車、そして補助輪なし自転車へと段階的に練習しましょう。
ダンスやリズム遊び: 音楽に合わせて体を動かすことで、リズム感や表現力を養うことができます。


4. 運動能力向上における注意点:無理なく、楽しく、継続的に


最後に、お子さんの運動能力向上において、大人が特に注意すべき点をいくつかご紹介します。

4-1. 休養と栄養の重要性


どんなに運動を頑張っても、十分な休養とバランスの取れた栄養がなければ、体は成長できません。質の良い睡眠を確保し、好き嫌いなくバランスの取れた食事を心がけましょう。特に、骨や筋肉を作るたんぱく質、エネルギー源となる炭水化物、体の調子を整えるビタミンやミネラルを意識的に摂取させることが大切です。

4-2. 熱中症などのリスク管理


特に夏の暑い時期は、熱中症のリスクが高まります。水分補給をこまめに行い、帽子を着用させるなど、体調管理に十分注意しましょう。また、寒い時期には防寒対策をしっかりと行い、体が冷えすぎないように配慮が必要です。

4-3. 専門家の意見も参考に


もし、お子さんの発達に気になる点がある場合や、運動能力について具体的なアドバイスが欲しい場合は、小児科医や理学療法士、運動指導の専門家などに相談することも検討しましょう。

4-4. 何よりも「楽しむこと」が最優先


最も大切なことは、お子さん自身が「運動って楽しい!」と感じることです。結果や上達ばかりに目を向けるのではなく、お子さんが笑顔で体を動かしている姿を大切にしてください。無理強いせず、お子さんの興味や好奇心を尊重し、遊びの中から自然と運動能力が伸びていくような環境を整えてあげましょう。

5. まとめ:大人の適切なサポートが、お子さんの可能性を広げ


今回は、「幼児期の運動能力向上における大人の役割」について、様々な角度からお話してきました。

幼児期の運動は、脳の発達、基礎運動能力の獲得、心の成長と社会性の育みに不可欠である。
大人は、安全で魅力的な環境を提供し、肯定的な声かけで意欲を引き出し、自らも一緒に楽しむ「ファシリテーター」の役割を担う。
発達段階に応じた遊びを取り入れ、休養や栄養、安全管理にも配慮する。
そして何よりも、お子さんが「運動は楽しい」と感じることが、継続的な運動能力向上への一番の近道である。
これらのポイントを意識して、今日からお子さんとの運動の時間をより豊かなものにしていきませんか?私たち大人の適切なサポートが、お子さんの秘められた運動能力を最大限に引き出し、未来の可能性を大きく広げることにつながるはずです。

お子さんのわくわくした笑顔と、たくましく成長していく姿を想像しながら、日々の運動を楽しんでいきましょう!

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近藤健吾
専門家

近藤健吾(講師)

わくわくキッズ

子どもも大人も集いわくわくが生まれる体操教室を運営。専門知識と幼稚園教諭経験をもとに、心と体を育てる運動指導の研修を行うほか、YouTubeなどで体を動かす楽しさを伝える活動にも注力しています。

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