SDSの基準って?
今さら聞けない「SDS(MSDS)って何ですか?」
弊社のWebサイトにおいて圧倒的にアクセス数が多いページがあります。それは「SDS(MSDS)の概要説明ページ」です。化学製造業においてはSDSは一般的な「安全情報シート」なのですが、取扱を始められた方や経験の浅い方にとって「SDS」は身近なものではありません。輸送会社から「SDSを提供してください」と言われて「SDS??」と思われた方も少なくないようです。そこで、弊社Webサイトで掲載しているSDSの概要解説ページを紹介します。
そもそもSDSとは?
SDSとは「Safety Data Sheet」の頭文字から呼ばれています。以前はこれに「Material」がついたMSDSと呼ばれていました。韓国ではいまだにMSDSとなっているように国によって若干違いがありますが、多くの国がGHSの導入時にSDSへ名称を変えました。
1970年代に一部の欧米企業が商習慣や化学工業会指導で自主的に作成提供を始めたのが始まりとされています。その後、米国では1985年にMSDSの義務化、EUでも1985年に「製造物責任に関する指令」で義務化(1993年までに各国で施行)されました。日本でも、1992年に日本化学工業協会がMSDSに関する指針を作成・公表し、1992年~1993年にかけて通商産業省、厚生省、労働省がMSDSに関する告示を策定・公表するなどの動きから始まりました。その後、1995年に「製造物責任法」が施行され、MSDSの提供が義務化されました。しかし、実際のところ多くの事業者の方がMSDSの作成義務に関して関心を持つようになったのは、2000年の労働安全衛生法改正や2001年の化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)の施行、毒物及び劇物取締法の改正からではないでしょうか。
そもそもは化学品を現場において安全に取扱うための情報として提供されるものです。化学物質個々の危険有害性だけでなく、製品(混合物)としての危険有害性を作業者に知らしめることで、化学品事故を未然に防ぐ目的があります。
法的にも先に触れたとおり、労働安全衛生法(安衛法)や毒物及び劇物取締法(毒劇法)、化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)でSDSの提供が求められます。(厳密に言えば別手段での情報提供で済む場合もあります。)
海外においてもSDS作成が必要となる化学物質規制があります。カナダでは1989年、オーストラリアでは1994年、韓国では1996年に制度化されていますし、その他多くの国がSDSの制度を導入しております。
適正に情報伝達ができて、化学品事故を未然に防ぐにはSDSは必要不可欠なとても重要な情報です。
しかし昨今では、SDSがまるで「万能情報シート」のような位置づけでお考えになられる方も見受けられます。製造業の方が明かせない組成成分や含有率のみならず、PL法上の注意点や様々な付加情報の記載を求められていることも良く聞きます。また、全く危険性の無い製品についても「購買のルールだから」という理由でSDSの提供を求められるケースも耳にします。本来の目的とは離れてしまっている感があります。
ところが、記憶にまだ新しい「胆管がんの集団発生」や「膀胱がんの集団発生」については、原因となった化学物質の健康障害が明らかになるまでに長い期間を要するため見過ごされ、発がん性物質として指定されていなかったのです。(その後指定されました)
このような規制を受けていない化学物質が原因となった健康被害報告は意外と多くあります。したがって、すべての製品について危険有害性の伝達が求められるのは自然なことかと思います。
化学品事故、健康被害を出さないために、正しい情報を的確に伝達することが今できる最善の対策です。その情報伝達手段としてSDSがさらに活用されていくことになると思われます。それに伴い、SDSの要求頻度が高まっていくことでしょう。