ホームページを開設したときの経理処理-「広告費」と「無形固定資産」の区別-
このマイベストプロのページにはアクセス解析が組み込まれていて、どのようなキーワードで検索して私のコラムに辿り着いているのかが分かります。そのキーワードをみていると、なかには面白いものがあります。私は検索キーワードをひとつのニーズと捉えています。全てに答えることはできませんが、時々これに答えていきたいと思います。そして、今回はその試みの一回目ということになります。
今回私が面白いと思った検索キーワードは、「月利益80万円役員報酬額は?」というものです。おそらくこの検索をされた方は、現時点での役員報酬がいくらなのかが不明ですが、1ヶ月当たりの税引前利益が80万円のときに役員報酬をいくらにすれば最も節税になるのかを知りたいのでしょう。ここでは、現時点での役員報酬月額が20万円、1ヶ月当たりの税引き前利益が80万円と仮定して話を進めていきます。また、1ヶ月当たりの税引前利益80万円は年間にすると960万円ということになりますが、ざっくり1,000万円ということにします。また、会社規模は資本金1,000万円以下、従業員は50人以下で社長は40歳未満ということにします。
会社は、税引前利益1,000万円のとき、法人税(地方税、事業税を含む)はおよそ314万円、これに役員報酬20万円×12ヶ月分の会社負担の社会保険料がおよそ32万円で合計346万円となります。
社長個人は役員報酬20万円で年収240万円のとき、扶養家族1人社会保険料以外の所得控除はなしと仮定した場合、所得税と住民税がおよそ7万円、これに社会保険料の個人負担分がおよそ32万円で合計39万円となります。
すると、役員報酬が月額20万円(年間240万円)で会社の税引前利益が1,000万円のときに、会社と社長個人の税金および社会保険料の合計額は385万円になります。そして、これが比較対象となります。
次に、役員報酬を月額30万円に変更した場合にはどうなるのでしょうか。役員報酬額の変更は通常、期首から2ヶ月を経過してからになります。(詳しくはコラム「役員報酬の増額と減額について」を参照してください)したがって、役員報酬を月額30万円に変更した場合の年間金額は20万円×2ヶ月+30万円×10ヶ月で340万円となります。
この変更によって、会社の税引前利益は役員報酬の差額100万円を引いた900万円ではなく、役員報酬の増加に伴う会社負担の社会保険料分もマイナスして、およそ886万円となります。このとき法人税(地方税、事業税を含む)はおよそ263万円、これに役員報酬340万円の会社負担の社会保険料がおよそ45万円で合計308万円となります。
社長個人のほうは、役員報酬が増加して年収340万円のとき、所得税と住民税がおよそ16万円、これに社会保険料の個人負担分がおよそ45万円で合計61万円となります。すると、役員報酬を月額30万円に変更した場合に、会社と社長個人の税金及び社会保険料の合計額はおよそ385万円から369万円になります。
ちなみに、役員報酬を40万円に変更した場合の会社と社長個人の税金及び社会保険料の合計額はおよそ360万円、役員報酬を50万円に変更した場合にはおよそ366万円になります。
もし、手計算でこのシュミレーションをする場合には、法人税、所得税の基礎知識と、これに加えて社会保険料を忘れずに考慮に入れることが必要です。また、役員報酬の変更は通常、期首から2ヶ月を経過する日までには行っていなければなりません。それ以降に変更することは通常はできませんので、できる限り正確に業績を予測することが節税のポイントになります。
尚、このシュミレーションの計算方法につきましては、関連する全ての税金の税率と社会保険料率を加味しなければならないなど相当に複雑ですから、ここに記載しきることができません。あしからずご了承ください。加茂川税理士事務所プラスでは自社制作アプリによる、このような役員報酬の変更シュミレーションも行っています。