PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

五感を活かしたケアの輪を広げ、笑顔で支え合う社会をつくる介護研究家

認知症ケアと看取りに力を注ぎ、高齢者問題に取り組む専門家

石川立美子

認知症ケアと看取りに力を注ぎ、高齢者問題に取り組む専門家 	石川立美子さん
石川立美子さん講演・研修風景

#chapter1

講演活動や研修講師、人材育成、介護相談、アドバイザーなど多分野で活躍

「介護を受ける人と介護する人が、互いを尊重し合える介護現場をつくりたいです」と話すのは介護研究家の石川立美子さんです。

 大阪生まれ。訪問介護を経験した後、ケアマネージャーに。特別養護老人ホームなどの運営管理に携わる中で、「支え合い、共に育ってゆく社会をつくりたい」という思いが高まり「株式会社 介護共育研究会」を設立。「教育と研修」「相談アドバイス」「地域づくり」を軸に事業を展開しています。

 40年近い専門職としての活動で得た経験を生かし、介護現場におけるモチベーション向上と人材育成に尽力している石川さん。地域作りアドバイザー、コンサルティング業務など多分野で活躍。医療・介護現場で必要とされるスキルを伝える講演活動や研修講師の他、介護相談にも対応しています。

 石川さんの強みは、介護保険制度やケアプラン作成実務などに精通しており、認知症ケアと看取りの経験が豊富なこと。学問的な根拠に基づいた知識を、現場経験で得た具体的な事例を交えながらわかりやすく伝えています。「特別養護老人ホームでは200人以上の方々を看取りました」。義父母の認知症介護と、実母の在宅ターミナルケアの経験を生かして、「専門家」と「家族」の2つの視点からアプローチをすることが特徴です。

#chapter2

香りのカードで脳を活性化する「薫くんケア」

 長年にわたる現場経験を独自のメソッドに落とし込んだケアツール「共感ケアコミュニケーション技法」「薫くんケア」「楽らく着物」を提案しています。

 共感ケアコミュニケーション技法は、「1.安心感のある出会い」「2.心身の状態を理解した関わり」「3.意欲の出るやり取り」という3つのステージで構成されており、各ステージを意識することで、不安感の解消や伝わりやすさを実感できます。

「アルツハイマー型認知症では、脳の一部が萎縮することで記憶障害が起きます。そして嗅覚の低下がみられることが多く、認知症の重症度と嗅覚障害には相関関係も認められています。これまで脳の神経細胞は再生しないといわれてきました。しかし近年の研究で、嗅神経は高い再生能力を持つことが発見されました。嗅神経を効果的に刺激し、嗅覚を向上させると、その刺激が脳に伝わります」と話す石川さん。この香りの力を認知症ケアに生かしたいという思いから「薫くんケア」を考案したとほほ笑みます。

「香りは脳を活性化させ、記憶を呼び覚ます効果があります。カレーの香りを嗅ぐと『子供の頃、家族と一緒に食べた』『学生寮でカレーを作ったら友達が集まってきた』といった懐かしい思い出がよみがえる方も多いのではないでしょうか。そうした思い出を人に話し、その時の感情に共感を得ることで、自分の価値を再確認できるようになります」

 薫くんケアでは「受ける人が好む香りのカードを提供すること」また「自主的に香りを嗅いでもらうこと」を重視しているのだとか。自らの意思で香りを嗅ぐという行動には、「認知症ケアだけでなく、さまざまな問題解決につながる可能性を感じる」と語ります。

「香りは脳の海馬と扁桃体に働きかけ、幼児の主体性も育みます。多くの方々にお伝えしたいので、幅広い年代を対象とした『薫くんケア実践講座』を開催したいと考えています」

 車椅子に乗った状態で素早く着付けができる「楽らく着物」。介護する人と介護される人が、助け合って「着物を着る」体験を通じ、お互いを尊重し合える関係をつくります。「認知症の方も着物を着ると笑顔になられます、介護する人も一緒に笑顔になれます。体の動かしにくい方の、ちょっと腰を浮かして着付けに協力して頂く行動が、信頼関係の強化へとつながります」

石川立美子さん講演・研修風景

#chapter3

視る、聴く、触れる――五感の働きを最大限に活用し、他人の価値観に共感

「大人の教育は、一人一人の違いを理解し、価値観を認め合うことが大切です。『水』という言葉を聞いたとき、若い人はペットボトルに入った水を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし高齢者であれば、『水』という言葉から井戸水や川の水を連想することでしょう。人間は、生きてきた過程における体験が一人一人異なるので、価値観も多種多様。『大人のグループ学習』の意義は、自分とは異なる価値観に触れ、共感し、共有し合う体験ができる点にあります」

 日本全国に出張して講演や研修を開催している石川さん。「視る、聴く、触れる」など五感に働きかけることで、優しさや安心感をもたらすケアを広めています。「五感を使ったケアは、介護現場で働く方々のモチベーションを高めるだけでなく、海外人材の育成にも生かせます」。これからも、家族・専門家・地域をきめ細やかに支援し、認知症や看取りを取り巻く環境を改善していきたいと笑顔を見せてくれました。

(取材年月:2020年1月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

石川立美子

認知症ケアと看取りに力を注ぎ、高齢者問題に取り組む専門家

石川立美子プロ

介護研究家

株式会社 介護共育研究会

介護保険制度や介護、ケアプラン作成実務などに精通している。独自のケアツール「共感ケアコミュニケーション技法」「薫くんケア」「楽らく着物」を考案。五感に働きかけ、安心感をもたらす介護を広めている。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ大阪に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または朝日新聞が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO