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CM(建築物をつくり維持する過程の最適化)により良質な建築を創造し、欠陥住宅問題も解決します

欠陥住宅問題を解決し良質な建築の創造へ導く一級建築士

高塚哲治

高塚 哲治(たかつか てつじ)さん
CMと欠陥住宅問題は密接で表裏一体です

#chapter1

100%施主側に立ったCM(コンストラクションマネジメント)方式を遂行したい

 北大阪急行「緑地公園駅」から南へ徒歩約5分。マンション1階に事務所を構える「タウ・プロジェクトマネジメンツ」の高塚哲治さんは、元大手設計会社「日建設計」勤務。1998年11月に独立しました。「日建設計は素晴らしい組織設計事務所ですが、いつかは独立したかった。CM(コンストラクション・マネジメント)を日本に根付かせたいという思いが強かったのです」と高塚さんは話し始めました。

 CM方式は、アメリカでは随分前からありますが、日本では約25年前に紹介されました。家を一軒建てるのに多くの人が関わります。プロセス中のどこかに欠陥や不都合があると、施主(発注者)が思っているものができません。「時代とともにプロセスも変遷し、関わる人も増えたため、どこかで欠陥が出るようになったのです」と高塚さんは言います。
そうしたリスクの多くは施主にあるので、その辺りを事前に施主の意見を聞き、できるだけリスクの少ない方法・プロセスを提案し実行する。これがCMの仕事です。

 CMの目的は「建設事業の複雑さに起因する『隠れた大きな損失』から施主を守る」こと。役割は①施主の業務を代行する②スケジュール・品質・コストの管理を一元化し、透明性・客観性をもたせる③工事の発注には基本的に金額にとどまらず競争原理を導入するなどの緊張感を与える④建設事業を維持管理まで含めたものと考える――と「100%施主側に立った」マネジメントを実行しています。

#chapter2

欠陥住宅問題とCMは密接な関係にあります。表裏一体です

 (株)日建設計を退社した高塚さんは、CM会社の先駆けだった(株)希望社に入りました。「桑原さんという有名な社長から約1年半、CM方式の実態を学びました。中小企業や個人の発注者さんとのつながりができました」。希望社を一躍有名にしたのは、ゼネコンだけでなく下請け業者まで選び、見積もり額を比較して発注して工事費を抑えるやり方です。

 1998年11月に独立し、CMを中心に事業を展開していましたが、知り合いの弁護士から「欠陥住宅で困っている。手伝ってくれないか」と誘われました。「CMで良質な建築物を建てるための欠陥住宅にならないための『予防』をしていたのですが、『なってしまった人』に対するフォローも必要だと痛感しました。裁判になっただけで、この15年間に120件以上。潜在的にはその10倍はあるでしょうね。欠陥の内容は雨が漏る、揺れる、傾いているなど色々あります。原因の多くは、ハウスメーカーなどの元請け業者が下請け業者に丸投げしたり、設計図が詳細に描かれていなかったりで、関係者が現場でそれなりに決めたからです。しかし、このやり方では新しい技術やシステム、また社会に対応できず、中途半端になります。『制度疲労』からくる欠陥ですね」と高塚さんは指摘します。だからCM方式が必要なわけです。

 CMと欠陥住宅問題は表裏一体とも言えます。知識と経験のある専門家が的確な指示を出して統括し、業務を遂行することが何よりも大事です。「欠陥住宅問題を裁判などで解決し、損害賠償金などで修繕するような流れですね。欠陥住宅問題の解決とCMの両方に精通しているのは多分、日本では私くらいではないでしょうか」と高塚さんは胸を張ります。

CMの大切さをアピールしていきたい

#chapter3

これほど重要なCMというシステムもまだ世間に普及していない。もう少しわかりやすく発信しなければ

 以前、大阪難波でCMシステムを導入して賃貸マンションが建設されました。大手ハウスメーカーが設計・施工した物件ですが、図面ができ建築確認申請が下りるという段階になって、高塚さんが図面を見ると、「どうもまずい。梁(はり)が低すぎる」。設計図では2㍍の所に梁をかけることになっていました。すぐに施主、施工者に連絡して、設計を一からやり直したそうです。「施主さんに非常に感謝されましてね。プロでもミスはあるのです。だから設計から完成まで一貫して最適化を図るCMが重要なのです」と高塚さんは言います。

 高塚さんは今、思っています。「これほど重要なCMというシステムが、十分に普及していない。もっとわかりやすく発信しなければならない」と。施主側が「建築したい、改修したい」と思い立った時から、建築して維持管理するまでのプロセスで、「今はどういう状況にあるのか?」「どの辺りに問題があるのか?」をしっかり説明できる人材が少ないのです。

 「今後は、市民セミナーやWeb、マンションの大規模修繕工事の場などを通して、CMの大切さをアピールしていきたい」と考えています。それは新築だけでなく、リフォームなど既存建築物の改修工事ではより重要性を増します。家づくりなどの建築行為は一生の大問題。思い立ったら、建築プロセスに精通した専門家に相談し、建てた後の欠陥住宅の相談も、高塚さんのようなCMr(コンストラクション・マネジャー)に相談することが肝要です。

(取材年月:2015年4月)

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専門家プロフィール

高塚哲治

欠陥住宅問題を解決し良質な建築の創造へ導く一級建築士

高塚哲治プロ

建築家

タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所

大手設計会社での豊富な経験を生かし、多くの欠陥住宅問題を手がけ、日本ではまだなじみの薄いCM(コンストラクションマネジメント)を広く世間に発信し、遂行している

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