「人生会議」って、ご存知ですか?
その境目を知るか知らないかで備えは大きく変わります
認知症を発症したり、脳梗塞などの急な病で、
会話を交わすことができなくなったというとき、
どの段階で準備していたかによって、
できることとできないことは大きく変わります。
元気なときには何の問題もないからと何もしないでおくと、
いざ判断力が弱ってきたときには、
「できると思っていたことができない」
という現実に直面することがあります。
たとえば、親が病気で入院したとき。
病院や施設への支払いなど、
お金の管理を家族が当然のように代わりにできるだろうと考えていても、
実際には思ったようにお金の出し入れができない。
あるいは、誰がどこまで関わるのか、
家族の間でも意見が食い違ってしまう。
ひょっとしたら身近でそんな話を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、どうすれば良いのでしょうか。
元気なうちにできる備えがあるのか。
それとも、もう判断力を失ってしまった段階で取れる方法しか残されていないのか。
その「境目」を知っておくことが、家族にとって大切な準備になります。
今回の記事では、状況に応じて使える制度の違い を整理しながら、
「もしものときに慌てないための備え方」を考えていきます。
これまでの記事で、
- 成年後見制度:すでに判断力を失った後に家庭裁判所が後見人を選任する制度
- 任意後見契約:本人が元気なうちに信頼できる人と契約して備えておく制度
をご紹介しました。
両者は「自由にどちらかを選ぶ」ものではなく、本人の今の判断力の状態がどうなのかで決まるようなイメージです。
成年後見と任意後見の比較
| 項目 | 成年後見(法定後見)制度 | 任意後見契約 |
|---|---|---|
| 後見が開始するとき | すでに判断力を失った後 | 判断力があるうちに契約して、将来発効 |
| 後見人を決める主体 | 家庭裁判所 | 本人が信頼できる人を指定可能 |
| 柔軟性 | 法律上の保護が最優先で画一的 | 契約内容を柔軟に設計できる |
| 家族の関与 | 親族が必ず選ばれるとは限らない | 本人の意思で家族を指定できる |
ケース別に見てみる
ケース1:すでに認知症が進んでいる
80代の父が認知症を患い、介護施設への入所契約や財産管理が必要になったが、本人には契約を理解できる力がない。
→ 成年後見制度を申し立てるしか方法はありません。
裁判所に申立てを行い、後見人(多くは専門職)が選任されます。
ケース2:まだ元気だが、将来が不安
70代の母が「もし判断できなくなったら長女に任せたい」と考えている。
→ 今のうちに任意後見契約を結ぶことができます。
公証役場で契約を作成し、将来認知症を発症したときに契約内容がスタートします。
ケース3:親族間で意見が割れそう
兄弟姉妹で「誰が管理するか」をめぐって対立の可能性がある。
→ 任意後見契約で事前に指定しておけば安心。
本人が元気なうちに誰に託すかを明確にしておくことで、将来のトラブルを防げます。
Q&A
Q:成年後見と任意後見、好きな方を選べますか?
A:いいえ。すでに判断力を失っている場合は成年後見しか使えません。任意後見は「元気なうち」にしか結べません。
Q:任意後見契約を結べば、裁判所は関与しないの?
A:いいえ。任意後見ではその効力を発生させるためには家庭裁判所に監督人の選任を申し立てなければなりません。一定の監督下に置かれるので完全に自由というわけではありません。
Q:家族なら後見人になれますよね?
A:成年後見では、家族が必ず選ばれるとは限りません。任意後見なら本人が家族を指定できます。
仕組みを知っておくだけで、「今できること」と「必要になったときにできること」を整理しやすくなります。
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