家族葬の四十九日法要について。香典は必要?
“デジタル遺産”という言葉を御存知ですか?
“遺産”というと、現金や貯金、株、土地建物などが思い浮かびますよね。
葬儀業を営む私の所に寄せられる相談も、この現金、貯金、土地建物が多いのですが・・・
令和になってから、“デジタル遺産”のご相談が急増しているのです。
そしてこのデジタル遺産トラブルにより、『何百万、何千万円という資産が消失する事態』も日本各地で起きています。
今日はこのデジタル遺産について詳しく見ていきましょう。
デジタル遺産とは?
今回ご紹介するデジタル遺産とは、
『スマートフォン』『パソコン』などに入っているデータ化された遺産を指します。
たとえば“ネット証券”や“ネット銀行”の財産。
スマートフォンに溜まっているポイント、交通機関等のカードにチャージされている残高もこれに当たります。
なお、相続財産に関わらない写真などのデータに関しては『デジタル遺品』といわれ、分けて考えられています。
仮想通貨も“デジタル遺産”なので、ビットコインを買って保持している人も要注意です。
では、“デジタル遺産”について1つずつ見ていきましょう。
スマートフォンのデータ
日進月歩で進化し続ける『スマートフォン』と、それに付随する『アプリケーション』。
2024年1月時点で日本人の携帯電話所有者のうち97%がスマートフォンを利用しているとの統計があります。
最近では、「パソコンは使わないけどスマホは片時も離さない。」なんて人もいるようです。
簡単に使える分、大切なデータや個人情報をアプリに登録しているのでしょう。
ちょっとした写真データやダウンロードされた音楽などであればマシですが、悪用されると怖いデータも入っているはず。
電話番号や住所、SNSのログイン情報などですね。
万が一悪用されて、ご遺族が金銭的な被害を受けたら一大事でしょう。
最近ではSNSの乗っ取り事件も多発しているので、注意が必要です。
パソコンのデータ
パソコンの中にあるデータも、“個人”で使っているスマートフォンのデータと重要性はなんら変わりません。
むしろパソコンには会社の機密情報が入っている場合も多いので、スマートフォン以上にトラブルが大きくなる可能性もあるでしょう。
また業務上の引継ぎが必要なデータが引き出せなくなると、会社に実損が発生するかもしれませんよね。
想い出の写真やLINEデータ
スマートフォンに入っている想い出の写真や、動画は、個人的に映している写真ばかり。
『あなたのスマートフォンに入っている写真は、遺族となった家族に、見られてもいい写真ばかりですか?』
私のスマートフォンにある画像や動画データは、他人に見られてもいいものがほとんどですが・・・・
正直、酔っ払っている時に撮った写真などは、誰にも見てほしくないものです。
一方、SNSのDM(ダイレクトメッセージ)やメールなどは、公開できるものばかりではないですね。
故人の死亡の在り方によっては、スマートフォンをご遺族や警察関係の第三者が閲覧できる場合もあるので、万が一見られてトラブルに発展しないよう日頃から整理することをオススメします。
個人の趣味や嗜好であれば、まだ笑って済ますことができます。
しかし、写真の内容次第では、会社の機密事項になりえます、社会的に地位がある人であれば尚のこと注意が必要でしょう。
電子証券やWEBマネーなど
ネット銀行やネット証券の口座、FX、仮想通貨、電子マネー、マイレージや賞品と交換できるポイントも遺産として取り扱われます。
忘れがちになるのが、“サブスクリプション”の登録です。
動画見放題や雑誌読み放題、ジム通い放題などの“自動引き落とし契約”ですね。
パスワードに守られたアカウントが1つひとつが資産となりますが、解約できるまで引き落とされ続けるのは厄介です。
特に、本人が死亡している場合だと、解約手続きだけで数カ月かかることもあるでしょう。
実際の事例
実際にあったトラブル事例をご紹介します。
これはあるご夫婦にまつわる話で、ご主人が単身赴任先の大阪で亡くなり、その葬儀依頼を受けた時のこと。
まず、奥様が驚いたのは。ご主人の家に積まれていた『Amazon』と書かれた段ボール箱でした。
様々なサイズの箱が奥様の身の丈ほどに積み上げられ、家の中には“アクセサリー”や“ブランドシューズ”があちらこちらに。
次に驚いたのは、大阪に乗っていったはずの高級車がないこと。
車の行方が気になり、ご主人が在籍されていた会社の人に聞くと、なんと盗難されたそう。
奥様はご主人のお金の使い方に不安を覚え、郵便物や会社の私物、ロッカーを調べました。
残念ながらご主人の大阪の生活が分かるのは、いつも使っていたiPhoneと財布、給料が振り込まれる通帳のみ。
iPhoneから情報を引き出そうにも、ロック解除するための数字が分かりません。
思いつく数字を何度試しても、解除することはできず・・・。
以前使っていたiPhone8やseなどは、指紋認証でロックが解除されたのですが。
ご主人が使っているiPhoneX以降の機種は顔認証解除になっており、目を閉じた状態では解除できませんでした。
また、給料が支払われる銀行口座を記帳すると、わずかな金額のみが残されていたようです。
財布の中を確認しても、紙幣が数万円、小銭が少々。
カード類を確認すると“消費者金融のカード”も見つかりました。
クレジットカードの明細を早く確認したかったのですが、この明細はホームページから確認するタイプのようで、もちろん明細書は自宅にありません。
消費者金融にもどれだけ負債があるのか確認もできない。
本人のiPhoneのロック解除ができない限り、インターネット上の資産にアクセスし把握もできない状態です。
通常、私がこのような相談を受けた場合、1〜2ヵ月程の期間、自宅に来る郵便物を確認して、
・他に消費者金融からお金を借りていないか
・他に督促が来ないか確認をしてもらいます。
を確認をしてもらいます。
これは残高を知るという理由もありますが、何より遺産相続に絡む問題だからです。
相続というのは、資産だけでなく“負債”もあわせて引き継がなくてはならないため、隠れた借金があることを知らないまま相続手続きをすると、大きな借金を背負うことになります。
実際に相続放棄のアドバイスをするケースも多いです。
相続放棄の期限は、相続を知ってから3ヵ月以内。
プラスの財産が多いか、マイナスの財産が多いか3カ月以内に確定しなければなりません。
しかし今回は、郵便物を待とうにも、ご主人が住んでいたのが社宅だったそうで、会社側から退去願いが出されてしまいました・・・。
その後
ここまでが、葬儀前に奥様から聞いた話。
その後、粛々と葬儀をすすめ、無事に葬儀、火葬、初七日が終わり、葬儀後、奥様はご主人のお骨を持って関東の自宅に帰られました。
帰宅後も何回か電話で話したが、結局は司法書士に継ぎ、相続放棄に向けて手続きをすすめられたそうです。
解決策
事例のように、突然の死は誰しも訪れるもの。
現物資産であれば処理は容易ですが、“デジタル遺産”はその特性上、扱いが難しいのです。
万が一に備え、IDやパスワード等のアクセス情報の保管場所はご親族に伝えておくべきですが、自分が元気で若いうちに“死亡した時の準備”をする人は少ないでしょう。
“遺産”ではない写真やメールなどの『デジタル遺品』は随時、自分で整理をしておく。
そして“遺産”として相続しなければならない財産に関しては、相続人が分かるように整理して、デジタルではなく契約情報の紙をファイリングしておくことをオススメします。
・銀行口座一覧
・証券会社一覧
・保険一覧
・ポイントカード一覧
・サブスクリプション一覧
我が家でも、
『金融関係の書類は〇〇マークのファイルに入っているから』
『保険は〇〇色のファイルにはいっているよ』
など、情報を家族と共有をしています。
これにより、スマートフォンのロックが解除できなくても、金融関係の資産は把握できるようになっているのです。
その他の方法
Appleアカウントの場合は、生前にアカウントを引き継ぐ人を決めることができます。
自分で選んだ第三者を、自身の死亡後のアカウント管理連絡先に設定できるのです。
その他にも、Windowsパソコンの場合、パスの解除などがあるのですが、そちらは次回、他の事例を含めて執筆することにします。
“転ばぬ先の杖”ではないのですが、前もって準備するに越したことはないですね。
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