なぜ同じ条件でも差が出るのか 売れる民泊の設計と実データ

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄民泊


ここ1ヶ月ほどは、新店舗の開業準備に時間を使っていましたので、こうしてコラムを書くのは少し久しぶりになります。
今回のテーマは、先日立ち上げた新規物件についてです。名前は控えますが、戸建てタイプの宿泊施設で、コンセプト設計から開業までを一貫して組み立てたプロジェクトになります。
民泊というと「運営代行」という言葉で語られることが多いのですが、私自身はその捉え方をしていません。どう作るかではなく、どう収益を最大化するか、その一点に重きを置いています。私はこれを「資産運用代行」として捉え、その前提で今回の物件も最初から最後まで設計しています。

【コンセプトは“後”ではなく“最初”】
この物件で最初に取り組んだのは、家具選びでも内装でもありません。まず行ったのは徹底した競合調査と直近データの洗い出しであり、OTAサイトから取得できる情報はすべて拾い上げ、予約数やお気に入り登録数、国籍別構成、ADR、予約ターム、さらにはゲストの旅行歴まで含めて、実際にどのような動きが起きているのかを一つずつ確認しています。
どの価格帯が動いているのか、どの人数帯に需要が集まっているのか、どの国のゲストがどのタイミングで予約を入れているのか、そうした現実の数字を前提にしたうえで、「この物件はどこを取りにいくのか」を最初に決めています。
その結果として定めたコンセプトが、「静かな丘の一軒家で、大切な人と過ごす時間。」です。
沖縄の宿泊施設は、海やリゾート、南国といった分かりやすい価値に寄りやすい傾向がありますが、そこに乗せていくほど競争は激しくなり、後発で優位性を作るのは簡単ではありません。
今回はその方向には行かず、沖縄らしさを前面に出さないこと、装飾に頼らないことを前提にしたうえで、「誰と来て、どう過ごすか」という滞在そのものに価値を置く設計にしています。



【設計図を作らないと運営はブレる】
ここまでの話はコンセプトの話ですが、実際にはここで終わりません。
今回のプロジェクトでは、このコンセプトを言葉だけで終わらせず、「どういう滞在体験になるのか」「どこに価値があるのか」「どの層に選ばれるのか」をすべて可視化した設計図を作っています。この設計図を完成させるまでに、約2週間かかっています。
例えば、この物件の強みは設備ではなく環境です。立地の特性を活かし、外からの視線が入りにくい独立性や、夜に星がきれいに見える静けさなど、他では簡単に再現できない要素を軸に据えています。
そのうえで、滞在の流れも設計しています。朝はテラスでコーヒーを飲み、昼は沖縄本島を自由に動き、夕方はテラスで食事をし、夜は星を見ながら過ごす。この一連の流れが自然に成立するように、空間と導線を組んでいます。
さらに、誰に選ばれるのかも明確にしています。誰でも泊まれる宿ではなく、関係性が深まる滞在を求める層に刺さるように設計し、その結果として価格を維持する構造にしています。
民泊は、開業してから調整するものだと思われがちですが、実際には逆です。設計の段階でほとんどが決まります。ここが曖昧なままスタートすると、運営は必ずブレます。



【設計通りに動くかは数字が答え】
ここまで設計の話をしてきましたが、最終的にそれが正しかったかどうかは、すべて数字に表れます。
今回の物件は3月中旬にリスティングを公開していますが、3月末までの約2週間で、予約は約30件、売上は約200万円という立ち上がりになっています。
短期間の数字としてどう捉えるかは人それぞれですが、私自身は「設計通りに動いている」と判断しています。理由は単純で、単に予約が入っているという話ではなく、想定していた計画を上回る形で予約が成立しているためです。
例えば、国籍の内訳を見ると、日本が60%、香港が14%、台湾が10%と、東アジアを中心とした構成になっており、当初想定していた市場と大きくズレてはいませんが、日本の比率については想定外の動きでした。ただ、予約の入り方を見ても、単価を大きく崩して数を取りにいっている状態にはなっていません。
ここが一番重要なポイントで、民泊は「埋まっているかどうか」だけでは判断できません。どの条件で埋まっているのか、誰に選ばれているのか、この2つが設計と一致しているかどうかで、その後の伸び方は大きく変わります。
また、公開直後にも関わらずお気に入り登録が一定数積み上がっており、比較検討の土俵にしっかり乗っていることも確認できていますし、実は予約動向の先行指標として、このお気に入り登録が重要だと私は考えています。ここが弱いと、後から広告や値下げに頼るしかなくなりますが、現時点ではその必要はありません。
また、今回の設計にあたっては、これまで運営してきた既存リスティングのデータもベースにしています。2025年7月に開業した物件では、レビュー55件すべてが星5評価となっており、Airbnb内でも上位5%に入る「ゲストチョイス」に選ばれています。
この結果は偶然ではなく、どのような設計にすれば、どのようなゲストに選ばれ、どのような評価が返ってくるのか、その積み重ねの延長線上にあります。
もちろん、まだスタートしたばかりですので、この数字だけで全てを評価するつもりはありません。ただ、少なくともコンセプト、設計、ターゲットの設定がズレていないことは、この初動の動きから十分に読み取れます。



【数字では測れない価値はレビューに出る】
ここまでは数字の話をしてきましたが、もう一つ大事なのが、実際に宿泊したゲストの反応です。
今回の物件では、現時点でレビューはまだ2件ですが、その内容を見ると、この設計がどこまで届いているのかがはっきり分かります。
一つは、お子様連れのご家族の滞在で、設備の使い勝手や清潔さに触れながら、ホスト対応も含めて満足度の高いコメントをいただいていますし、もう一つは、1泊という短い滞在にも関わらず、「ここに来て本当に良かった」と書いていただいています。
この「本当に良かった」という一言は、数字以上に重く、単に泊まったという評価ではなく、その時間自体に価値を感じてもらえたという意味になります。
印象的だったのは、「家に帰ってきたような安心感」と「非日常のワクワクが同時にあった」という表現で、この2つは今回のコンセプトの中心に置いていた部分でもあります。
広くてきれい、設備が充実している、そういった評価は他の物件でも取れますが、「誰と過ごした時間がどうだったか」まで言及されるかどうかは、空間設計によって変わります。
今回のレビューはまだ数としては少ないものの、狙っていた方向とズレていないことははっきり確認できていますし、この積み重ねが、そのまま次の予約につながっていきます。
民泊はレビューが増えれば良いという単純なものではなく、「どんな言葉で書かれているか」が重要ですので、その意味でも、今回の初期レビューは十分に意味のある内容になっています。



【まとめ】
ここまでお話ししてきた通り、今回のプロジェクトは、コンセプト設計から数字、レビューまで、一貫して同じ方向で組み立てています。
民泊の世界では「運営代行」という言葉が当たり前のように使われていますが、私の感覚ではそこには収まりません。清掃やゲスト対応だけであれば代行ですが、それだけでは収益は安定しません。
どの市場を取りにいくのか、どの価格帯で戦うのか、どの層に刺さる設計にするのか、そこを最初に決め、その通りに動かし、数字とレビューで検証しながら修正していく、この一連の流れまで含めて、結果が作られます。
今回の事例が、その判断材料の一つになればと思います。
新規で運営を任せたいと考えている方や、現在の物件を見直して収益を改善したいと考えている方からのご相談も受けていますが、すべてのご依頼をお受けしているわけではありません。民泊を単なる運営ではなく、資産としてどう扱うかという視点で考えている方、もしくは既存の運営に違和感を持ち、本質的に見直したいと考えている方に限ってお話しさせていただいています。
私自身が一人で設計から運営まで関わっているため、対応できる件数には限りがありますし、数を追うつもりもありません。だからこそ、一つひとつの物件に対して、最初から最後まで責任を持って向き合える形を大切にしています。

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記事を読んで「もっと詳しく知りたい」「自分のケースではどうなるの」と感じた方は、ぜひお気軽にご質問ください。今後のコラムで取り上げたり、個別にお答えしたりしながら、皆さまの不安や疑問に寄り添える記事を発信していきたいと考えています。ご意見、ご質問は下記メールまでお寄せください。
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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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