「高額査定」に惑わされない。不動産売却で大切なこと

沖縄の不動産市場では、ここ数年、地価の上昇や観光需要の回復が続き、所有不動産の見直しを検討されるオーナー様が増えています。国土交通省の公示地価でも、沖縄県は11年連続で上昇が続き、住宅地の伸びも全国上位に入ります。こうした数字を見るたび、売るべきか、貸すべきか、空き家をどう活かすべきかと悩まれる方が増えるのも自然な流れだと感じています。
私は不動産の世界に入る前、十年以上にわたりブライダル業界に身を置いていました。新郎新婦の想いを丁寧に聞き取り、最適な選択肢を共に考え、人生の大切な一日をプロデュースする「ブライダルコンシェルジュ」として、多くのお二人に寄り添ってきました。本音を引き出し、関係者全体を調整し、当日のトラブルにも迅速に対応し、そうした積み重ねの中で、「寄り添いながら最良の判断へ導く力」を磨いてきたと思っています。
不動産の仕事に携わるようになってから、私は沖縄の売却現場に特有の違和感を覚えるようになりました。公開データや取引事例が限られているため、売主様が十分な判断材料を得にくく、査定額という“数字”だけが一人歩きしてしまう場面が少なくないのです。さらに査定一括サイトの普及により、根拠の乏しい高額査定で契約を取る業者も増え、その結果、売却が長期化して値下げを余儀なくされる方も見てきました。
地元密着の小規模事業者と県外資本の大手仲介会社が混在する沖縄市場では、情報の非対称性が生じやすく、売主様が本来の目的や想いを大切にしながら判断することが難しいと感じる場面が多々あります。私は、この「見えにくさ」や「迷いやすさ」を解消したいと考えるようになりました。
売主様が冷静に、そして納得をもって判断できるように。数字だけではなく、「想い」や「目的」を大切にできる環境を整えたい。そんな想いが、売主専属の「沖縄オーナーズエージェント」というサービスをつくる原点になりました。今回のコラムでは、この売主専属代理という仕組みが、なぜ沖縄の不動産市場で必要とされるのか、その背景と価値を丁寧にお伝えしたいと思います。
【仲介と代理の違いをやさしく整理する】
不動産売却では一般的に「仲介会社」に依頼します。仲介は売主と買主の間に立ち、双方の利害を調整しながら取引をまとめる役割を担います。しかし、特に両手仲介と呼ばれる形態では、売主と買主双方から手数料を受け取ることが可能なため、どうしても取引成立を優先しやすい面があります。制度上は認められているものの、売主から見ると、自分の利益を最優先に考えてくれているのか判断しにくい場面があり、不安の要因となることがあります。
図のとおり、仲介と代理では立ち位置がまったく異なります。仲介は中間に立つ一方で、代理は売主の利益最大化を最優先に考える役割を法的に担います。価格交渉や販売戦略、査定の比較などを売主の視点で組み立てていくため、売却プロセスの透明性が高まり、判断のしやすさが変わってきます。
【解説2 沖縄市場で代理という仕組みが求められる理由】
沖縄の不動産市場は、地元ネットワークや企業間の関係性が強く、外部の方からは見えにくい部分が多くあります。県外にお住まいのオーナー様や相続物件を抱えている方からは、査定額が大きく異なり根拠が分からない、内覧数が伸びないという相談も少なくありません。こうした不安は、オーナー様ご自身の問題ではなく、市場特有の構造によって生じやすいものだと感じています。
ちなみに、これは本日現在、沖縄最大の不動産ポータルサイト「うちなーらいふ」に掲載されている売買物件数です。マンションが1,417件、土地が4,240件、一戸建てが5,183件と、市場には相当数の物件が出ています。掲載数はそのまま在庫数とも読み取れますが、もし適正な価格で募集されているのであれば、これほど多くの物件が長期間掲載され続けるものだろうかと感じることもあります。もちろん需給のバランスや時期的な要因、物件ごとの事情によって結果は変わるため、一概には言えません。ただ、売主様が判断するための材料が十分でないことが、その背景にあるのではないかと考える場面が少なくありません。
こうした市場環境の中で、オーナーズエージェントではまず判断材料を整えることを大切にしています。ビッグデータとAIによる相場分析に、沖縄の地域特性を加味した独自の補正ロジックを組み合わせ、査定の根拠を可視化します。また、複数の不動産会社への査定依頼や比較、交渉といった通常オーナー様が負担を感じやすい部分は、専属の宅建士が代理人として代行します。売主が迷いやすい場面を一つずつ整理しながら、冷静に判断できるよう伴走することを重視しています。
特に県外オーナー様にとって、沖縄へ頻繁に来るのは大きな負担です。オンライン相談を中心に進められるため、現地に行かなくても販売活動や状況確認ができ、契約の立ち会いまで一貫してサポートできます。空き家や相続物件では、まず何から手をつければよいのか分からないという段階が多く、その意味でも代理人が側にいる価値は大きいと感じています。
【売却だけが答えではない 資産全体で考えるという視点】
不動産の売却をご相談いただく際、結論がすぐに「売るべき」という方向に決まるとは限りません。むしろ、賃貸として活用する、民泊で一時的に収益化する、あるいは適切なタイミングまで保有するなど、複数の選択肢を冷静に比較することが大切です。不動産は数字だけで動かせるものではなく、オーナー様の想いや家族の状況、将来の計画と深く関わっているためです。
私はブライダル業界で長く携わった経験から、目の前の状況だけでなく、その方の背景や目的を丁寧に伺いながら、最適な選択肢を一緒に整理する重要性を強く感じています。不動産でも同じで、まずは現状を把握し、売る、貸す、民泊、保有のそれぞれを比較しながら、オーナー様が納得できる方向性をご提案することを重視しています。
そのうえで売却が最適と判断された場合に、売主専属代理として利益最大化に向けて伴走する、その順番を大切にしたいと考えています。
【オーナー様の状況に応じた最初の一歩】
県外在住のオーナー様は、相続物件や空き家の扱いについて「現状が整理できていない」という段階からご相談されることが多くあります。まずは、物件の状態や費用、将来の見通しを把握するだけでも方向性が見えてきます。オンラインでの相談は移動の負担がなく、初期の整理に適しています。
空き家をお持ちの方は、売却、賃貸、民泊のいずれにも可能性があります。建物の状態やリフォーム費用、地域の需要によって適した方向性は変わるため、5年後、10年後のライフプランと照らし合わせながら決めることが大切です。
賃貸中のオーナー様の場合は、収益の見直しと売却の比較がポイントになります。家賃の伸び悩みや修繕費の上昇が気になる場合でも、すぐに売却すべきとは限りません。運用改善で状況が変わることも多いため、一度収支バランスを整理しながら方向性を考えていきます。
【まとめ】
不動産は人生や家族の未来にも影響する大切な資産で、市場が変化する今だからこそ、表面的な数字だけではなく、ご自身の目的や想いを含めた総合的な判断が必要だと感じています。特に沖縄では、情報の見えにくさから迷いやすい場面が多く、判断材料を丁寧に揃えることが安心につながります。
売主専属代理というサービスは、その判断を支えるための選択肢のひとつです。利益相反のない関係性、透明性ある進め方、納得を大切にしたプロセスによって、オーナー様が自信をもって決断できる環境づくりを目指しています。
私自身、まずは状況を伺いながら一緒に整理していくことを大切にしています。相談料や手数料はかかりませんので、方向性がまだ定まっていない段階でも安心してご連絡いただければと思います。沖縄にお住まいの方はもちろん、県外から相続物件を扱う方や空き家の扱いに迷われている方にとって、気軽に本音を話せる窓口としてお役に立てれば幸いです。
これからも地域に寄り添いながら、不動産の価値を丁寧に見極め、未来につながるご提案を続けてまいります。
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