Airbnbデータで解明する沖縄民泊の予約行動

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄民泊


現在、沖縄で17部屋の民泊コンサルタントをしています。ある物件で「今の施策のままで本当に良いのか」を検証するために、ゲストの行動ログを細かく確認してみました。具体的には、「お気に入り保存数」と「予約日」の傾向や相関を調べ、どの曜日に検討が進み、どのタイミングで予約に踏み切るのかを分析したのです。
Airbnbを運営していると、「閲覧数」や「予約率」には注目しても、ゲストがどの曜日にお気に入り登録し、どの日に予約へ動くのか、そこまで細かく把握することはなかなかできません。Airbnb上にはその機能がなく、自分で集計するのも相当な手間がかかります。実際、この行動データは通常のホスト画面では見えず、体系的に分析されることもほとんどありません。
そこで私は、2025年7月から11月までの5ヶ月間、沖縄県内の定員7名の物件で、約550件のお気に入り保存とその予約日データを追跡しました。ゲストの約80%は日本・台湾・香港・韓国といった東アジアからの方々です。この規模でまとまったデータは、正直なところ“有料級”の価値があります。そして分析を進める中で、はっきりとした傾向が見えてきました。


※本コラムで扱う「予約日」は、ゲストが宿泊を確定させた日を指します。宿泊日やチェックイン日ではなく、Airbnb上で予約確定の操作が行われた日です。

【1】お気に入りは“火曜・水曜”がピーク
お気に入り保存は火曜が約20%、水曜が約19%で、この2日間だけで全体の約40%を占めていました。週の前半〜中盤に保存行動が集中するのが今回の特徴です。主要ゲストである日本・台湾・香港・韓国は時差がほとんどなく、夕方〜夜のオンライン行動が似ているため、各国の「仕事終わり」の時間帯が重なり、同じタイミングで保存が増えやすいと考えられます。また、この火曜・水曜というタイミングは、週末旅行に向けて候補探しを始める時期とも重なるため、保存が活発になりやすい可能性があります。

【2】予約が動きやすいのは“水曜・木曜”
予約は水曜が約19%、木曜が約17%と週中に集中しました。お気に入りのピーク(火曜・水曜)から1〜2日後に予約が動く流れが見られ、「保存 → 検討 → 予約」というサイクルが短いのが特徴です。特に沖縄は東アジアからの直行便が多く、短距離旅行で意思決定が早いゲストが多いため、検討から予約までのスピードが速まりやすいと考えられます。グループ旅行ではLINEなどで相談し合意形成を行うため、週前半に候補を保存し、週中に「ここに決めよう」とまとまりやすい傾向とも一致します。

【3】保存は多いのに予約につながりにくい曜日
日曜は保存率が約13%と比較的多い一方、予約率は約8%に留まりました。休日は家族や友人と旅行の話題になることが多く、検索や保存までは進みますが、最終決定までは踏み切れないケースが増えるためと考えられます。「とりあえず保存して、平日にまた見よう」という先延ばしの心理が、そのまま数字に表れた形です。

【4】インバウンド比率が高い物件だから起こるスピード感
今回の物件は約80%が日本・台湾・香港・韓国のゲストでした。これらの国や地域は沖縄への直行便が多く、LCCも豊富で旅行しやすい環境にあります。短距離旅行では検索→保存→予約の流れが早く、さらに時差がほぼないため行動時間帯も揃いやすく、週中に意思決定が集中しやすいことが今回の傾向と一致しています。

【5】ホストが実務で活用すべき運用ポイント
保存が伸びやすい火曜・水曜に備え、前日の月曜に写真の更新やタイトル・説明文の改善などを行うと効果が出やすくなります。水曜は保存・予約の両方が増えるため、価格調整やカレンダー調整に適した曜日です。木曜は意思決定が進むため、割引プロモーションの反応が出やすいタイミングです。週末は検索が増えるので、返信スピードを意識することで予約機会の取りこぼしを減らすことができます。また、東アジア比率が高い物件では、英語・繁体字対応を整備することで離脱を減らしやすくなります。

【6】Airbnb公式が明かしている“検索順位に影響する要素”
出典:Airbnb (https://www.airbnb.jp/help/article/39)
Airbnbヘルプセンターでは、検索順位に影響する要素として以下が明記されています。
・お気に入りの保存頻度
・予約される頻度
・ゲストからメッセージを受ける頻度
・ホストの返答率・返答時間
・レビュー内容・評価
・ゲストとのコミュニケーションの質
これらは人気度やクオリティを判断するための指標として正式に示されており、検索結果に影響することが公表されています。ただし、「レビュー返信をした日は露出が上がる」といった具体的な日付を特定した公式見解はありません。

【7】レビュー更新が予約につながりやすい背景
正確には、ゲストがレビューを書いたその日にホストとして返信(レビュー返し)を行うと、その日または翌日に予約が入りやすい傾向があります。これは公式の明示ではありませんが、実務経験と仕組みを踏まえると説明がつきます。レビューが動くとリスティングが“更新された”と扱われ、新鮮度が上がるためクリック率が高まりやすくなります。さらに、最新レビューと丁寧な返信はゲストの安心感につながり、「この宿は信頼できそう」という判断を後押しします。また、Airbnbは最近動きのあったリスティングを一時的にプッシュ表示することがあり、レビュー返しもその対象になり得ます。今回の物件でも、レビュー返信当日や翌日に予約が入る場面が確認されており、実務感覚としても納得のいく動きでした。

【まとめ】
今回の分析では、沖縄のインバウンド比率が高い物件ならではの「保存 → 検討 → 予約」の流れが、曜日によって明確に表れていました。時差がほとんどない東アジア圏のゲストが中心であることや、短距離旅行の意思決定スピードの速さが、週中の保存・予約集中の背景にあると考えられます。また、Airbnb公式の情報からも、検索順位はホストの運用姿勢やリスティングの鮮度に影響を受けることが示されています。レビュー返信当日または翌日に予約が動きやすい傾向も、こうした仕組みと実務経験から説明がつく動きでした。今回のデータはあくまで一物件での傾向ですが、民泊運営において曜日ごとの行動パターンを理解し、適切な運用タイミングを選ぶことの重要性を改めて実感する結果となりました。

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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