中国大型連休を掴む沖縄民泊戦略

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄民泊


先日、中国国務院弁公庁より2026年の中国の連休スケジュールが正式に発表されました。
この発表を受けて、沖縄で民泊運営やコンサルティングを行う私にとっても、ひとつの大きな“波”が見えてきたと感じています。なぜなら、休暇のカレンダーこそが旅行者の動きや宿泊ニーズ、そして運営戦略そのものを左右する“設計図”だからです。

そして今、もう一つ見逃せないニュースがあります。旅行大手のExpediaが発表した「Destinations of the Year 2026」において、沖縄が世界第2位にランクインしました。2024年から2025年にかけて、沖縄への宿泊・航空検索数は前年比71%増です。

この結果は、沖縄が“世界のリゾートランキング上位”という新しいステージに立ったことを示すだけでなく、民泊・宿泊施設の運営者にとっては「いままさに波が押し寄せている地域」であることを明確にしています。
ここ数年、沖縄を訪れる中国からの旅行者は確実に増えています。LCCの直行便増加やアジア各国からのアクセス改善、さらに円安の追い風もあり、旅行の形は団体から個人へ、観光から“体験滞在型リゾート”へと変化しています。
その中で、「中国の休暇カレンダー」と「沖縄の世界的注目度」は、民泊運営者にとって単なるトレンドではなく、“戦略の羅針盤”といえる存在です。

たとえば、2026年の春節(旧正月)は2月16日(月)から22日(日)までの7日間と発表されており、実質的にはそれ以上の長期連休を取る方もいると思います。この時期、中国国内はもちろん、香港・台湾・シンガポールなど中華圏全体から海外リゾートへの旅行需要が一気に高まるタイミングです。沖縄という地理的にも文化的にも親和性の高いエリアでは、この波をどう読み、どう準備するかが勝負になります。
私自身、2016年から民泊運営を始め、これまでに1,200件以上の予約を積み重ねてきました。その経験の中で強く感じるのは、民泊経営の成果を左右するのは“物件の立地”よりも、“市場カレンダーを読む力”=プライシング(価格調整能力)だということです。

季節変動や天候よりも、各国の休暇や祝日を先読みして動いたオーナーほど、稼働率と収益の両方を安定させています。
今回のコラムでは、沖縄が世界第2位に選ばれた今というタイミングに合わせて、中国の最新休暇スケジュールをどのように捉え、民泊運営に活かしていくかを、現場経験に基づきながら具体的にお伝えします。

【中国の休暇カレンダーを読み解く】
まず、2026年に中国で予定されている主な国定休日を整理してみましょう。
・元旦:1月1日(木)
・春節(旧正月):2月16日(月)〜2月22日(日)
・清明節:4月4日(土)〜4月6日(月)
・労働節(メーデー):5月1日(金)〜5月5日(火)
・端午節(ドラゴンボート祭):6月19日(金)〜6月21日(日)
・中秋節:9月25日(金)〜9月27日(日)
・国慶節:10月1日(木)〜10月7日(水)

これらの日程はすでに中国国務院弁公庁から正式に発表されており、沖縄で民泊を運営している方にとっては「次の稼働ピーク」を先取りするうえで、非常に重要な情報です。実際、私の運営しているリスティングでも、春節や国慶節の予約がすでに動き始めています。もちろん、この時期は料金をやや高めに設定しています。なぜなら、こうした大型連休の時期は需要が高まりやすく、価格を適正に上げても十分に受け入れられるからです。
特に春節と国慶節の2つは、中国人旅行者の海外旅行需要が最も高まる時期です。旅行会社のツアー価格が上昇し、航空券の予約も一気に動き出す時期。民泊にとっては、まさに「勝負の7日間」と言えるでしょう。

私の経験上、この大型休暇の波には3つの特徴があります。
ひとつは“滞在需要の集中”。春節期間中は多くの人が一斉に海外旅行へ出かけるため、人気のリゾート地では早い段階で予約が埋まります。
次に“前後の予約のずれ”。休暇直前や直後に休みを延長して旅行する人が多く、連休の前後3日間にも予約が集中します。
そしてもうひとつが“価格上昇と混雑リスク”。需要が一気に高まるため、価格設定の工夫や清掃・チェックイン体制の強化が欠かせません。

こうした動きを事前に予測し、早めに準備できるかどうかが、民泊運営の成果を大きく左右します。
私自身、沖縄に移住して宿泊施設を運営してきた中で、予約の入り方には毎年はっきりとした“波”があることを実感しています。特に中国の大型連休前には、3か月ほど前から予約が入り始め、直前には清掃や備品補充、鍵管理など、細部まで整えておくことが欠かせません。

また、2026年の春節は2月中旬にあたります。日本国内では冬の閑散期に重なるため、他の観光地が落ち込む中でも、沖縄の民泊にとっては「冬のインバウンド需要」を取り込める絶好のチャンスです。さらに沖縄では、1月下旬から桜の開花による花見需要が始まり、2月にはプロ野球のキャンプシーズンを迎えます。このタイミングが春節と重なることで、観光と滞在の両面から相乗効果が期待できます。

加えて、航空路線の回復が進み、中国本土から那覇への直行便も増えています。国際線の再拡充とともに、滞在スタイルも変化しています。ホテルよりも、暮らすように過ごせる民泊を選ぶ旅行者が着実に増えており、まさに「今、沖縄が選ばれる理由」がここにあります。

【実践のヒントと戦略】
ここからは、すでに民泊を運営している方、そしてこれから始めようとしている方に向けて、2026年の中国大型連休をどう活かすか――その具体的なヒントをお伝えします。
まず、すでに民泊を運営している方へ。
春節や国慶節のような大型連休では、早いところでは3か月以上前から予約が入ります。春節に向けては、水面下で検索や比較が始まっており、実際に予約が動き出すのは年明け前後です。
まだ対応していない方は、今のうちに宿泊料金や最小宿泊日数の設定を見直しておきましょう。
この時期は需要が高まるため、料金を一段階引き上げても問題ありません。むしろ通常期と同じ価格設定のまま出してしまうと、早期に埋まってしまい、結果的に“機会損失”となることもあります。

次に、これから民泊を始めたいと考えている方へ。
大型連休を狙うなら、まさに今が準備のスタートタイミングです。
春節や国慶節はファミリー層や友人グループなどの利用が中心となるため、最低でも2LDK以上・定員5〜7名ほどの間取りを設計するのが理想です。
私がコンサルティングしているリスティングの多くも2LDK・最大7名の宿泊スタイルで運営していますが、実際には東アジアからの家族連れや友人グループが過半数を占めています。
「家族でゆっくり過ごせる」「キッチンがある」「洗濯ができる」――この3つは、ホテルにはない民泊ならではの強みです。
この“生活できる空間”を意識した設備づくりや内装デザインこそが、長期滞在ニーズの獲得につながります。

さらに、海外ゲストを迎える上で、英語以外の多言語対応も重要です。
特に中国語(簡体字・繁体字)での案内は効果的です。
チェックインの手順、宿泊マニュアル、周辺案内などは、英語・中国語・韓国語で揃えておくと安心です。
私の施設でもこの多言語対応を徹底しており、レビュー評価やリピート率の向上につながっています。

そして、集客の要となるのがプロモーションです。
Airbnbだけでなく、Booking.comへの掲載も検討しましょう。
それぞれのOTA(オンライン旅行サイト)には強みと弱みがあり、どちらか一方だけでは集客に限界があります。
Airbnbは個人旅行者やリピーターが多く、Booking.comは検索流入と即時予約に強い傾向があります。
両方を組み合わせることで、安定した稼働率と価格調整の柔軟性を確保できます。

また、運営代行会社を利用している方、あるいは今後委託を検討している方は、「大型連休時の体制強化」を必ず確認しておくことをおすすめします。
予約対応・清掃・チェックインが集中する期間だからこそ、どれだけ余裕を持って対応できるかが運営品質を左右します。
私自身、清掃スタッフや管理チームと細かく情報共有のタイミングを決め、事前準備を徹底しています。
トラブルを防ぐのは、いつも“前準備”です。

このように、中国の大型連休を意識した民泊運営は、単なる「忙しい時期」ではなく、「しっかり稼げるチャンスの時期」です。波を読んで先手を打てば、売上と評価の両方を伸ばすことができます。沖縄の民泊市場は、まだまだ成長の余地があります。春節や国慶節といった大きな波を見据え、今のうちから着実に準備を進めていきましょう。

【まとめ】
民泊運営というのは、ただの投資ではなく、経営であり事業そのものです。コロナ前まではいわゆるブルーオーシャンでしたが、今は市場も成熟し、競争も激しくなっています。インバウンドが戻り、需要は確実に増えている一方で、運営代行にすべてを任せてしまっては、ほとんど収益は残りません。特に沖縄では、リゾートホテルやラグジュアリーホテルも多く、「立地が良い」というだけでは通用しない時代に入っています。

だからこそ、物件の特徴を生かした設計や、滞在満足度を高める細やかな工夫が求められます。ゲストが「また泊まりたい」と思える体験をつくることが、結果として高い稼働率と安定収益につながります。私自身、現場で一軒一軒と向き合う中で、“民泊経営では、仕組みも大事ですが、取り組む姿勢がすべて”と言っても過言ではありません。

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今後のコラムで取り上げたり、個別にお答えしたりしながら、皆さまの不安や疑問に寄り添える記事を発信していきたいと考えています。
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info@okinawa-realestate.co.jp

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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