自分で運営か貸すか?沖縄不動産の新戦略【5/5】

先日、ある方から、こんなご質問をいただきました。
「沖縄の築30年の古民家で民泊を始めたばかりです。売上を伸ばすために“まず最初に手をつけるべきこと”は何ですか?稼働率や単価など、いろいろな数字があって正直迷っています。」
私自身も民泊を始めたばかりの頃、どの数字から見ればいいのか、どこを改善すれば結果につながるのかと考えていた頃を思い出しました。結論から言えば、「数字と土台」をセットで考えることが最初の一歩でした。数字だけ追いかけても成果は長続きしませんし、土台が整っていなければ数字は意味を持ちません。今回は、築古民泊という条件に即して、初心者が最初に確認すべき数字と、その前提となる運営の土台について整理します。
【数字の前に整えるべき土台】
古民家というのは「味わいがある」反面、「古さが気になる」というリスクも同時に抱えています。そのため、数字に向き合う前に必ず取り組んでいただきたいのが、以下の3点です。
•清掃の徹底
築年数が経った物件では、ほんの少しの埃や髪の毛でも、ゲストに「やっぱり古い家だから不衛生だ」と感じさせてしまう可能性があります。だからこそ、清掃は稼働率や単価に直結する最重要ポイントです。家具や家電の動作確認も含め、丁寧さの積み重ねがレビュー評価を大きく左右します。
•レスポンスの速さ
古民家に限らず、問い合わせへの返信が遅いとゲストの不安は膨らみ、予約の成立率が下がります。宿泊予約後のやりとりについても、レスポンスは原則1時間以内を目指すのが望ましいです。特にインバウンドゲストは電話を使わず、メッセージやチャットでの連絡がすべて。返信が遅れることは、そのまま大きな不安につながります。
•周辺情報の提供
民泊の魅力は「地元で暮らすように過ごせること」です。徒歩圏のスーパーや食堂、バス停など、地域に根差した情報をきちんと案内するだけで、ゲストの安心感は大きく高まります。最近はネットで情報を調べるゲストも増えていますが、それでもホストからの“リアルな声”は非常に助かります。大切なのは単にお店のURLを送るのではなく、「おすすめポイント」を短く添えたり、そのゲストのニーズに合った情報をキュレーションする(情報を選び抜き整理して伝える)ことです。
この3つを土台として整えておくと、数字を見たときに「なぜこの結果なのか」を冷静に解釈できるようになります。
【客室稼働率 OCC(Occupancy Ratio)】
まず注目していただきたいのは、客室稼働率(OCC)です。
定義:販売可能客室がどれだけ利用されたかを示す割合。
計算式:OCC(%)=(利用客室数 ÷ 販売可能客室数)×100
例えば、30日ある月に15泊利用された場合、OCCは50%となります。とてもシンプルですが、需要の強さを示す基本中の基本となる数字です。沖縄の場合は繁忙期(夏・連休・年末年始)と閑散期(梅雨・冬)の差が顕著に表れる特徴があります。また、平日と週末でも大きな開きが生じます。OCCを毎月算出することで、「繁忙期と閑散期の落差」や「曜日ごとの穴」を明確に把握できるのです。
【客室平均単価 ADR(Average Daily Rate)】
次に注目すべきは、客室平均単価(ADR)です。
定義:販売できた客室1室あたりの平均売上。
計算式:ADR = 売上 ÷ 利用客室数
例えば、15泊で合計300,000円の売上があった場合、ADRは20,000円となります。
ADRは「ゲストがその価格に見合う価値を感じたか」を示す指標でもあります。特に古民家の場合、写真の見せ方や説明文の工夫、レビューでの印象によって大きく変動します。「古い家」ではなく「味わいのある沖縄らしい古民家」と感じてもらえるよう演出すれば、ADRは着実に引き上げることができます。
【RevPAR(Revenue per Available Room)】
3つ目がRevPAR(レブパー)です。
定義:販売可能客室1室あたりの収益効率。
計算式:RevPAR = OCC × ADR
この指標の優れている点は、「稼働」と「単価」をかけ合わせて全体の収益効率を測れることです。例えば、OCCが50%でADRが20,000円なら、RevPARは10,000円となります。この数字が安定して伸びているかどうかは、物件の経営健全性を測る最もわかりやすい基準です。OCCだけ上がっても単価が下がれば収益は伸びませんし、その逆も同様です。RevPARを毎月確認することで、「稼働と単価のバランス」を客観的に把握できるようになります。
【レビュー評価(Guest Reviews)】
最後に忘れてはならないのが、レビュー評価です。
民泊においてレビューは稼働に直結します。星評価が下がると、即座に予約数へ影響が及びます。特に古民家では「古さ」への不安を払拭できるかどうかが重要で、レビューに「清潔」「快適」「安心できた」といった言葉が並ぶことが信頼につながります。
レビューは数字に表れにくい「信頼」を可視化する貴重な指標です。点数だけではなく、本文に繰り返し登場するキーワードを拾うことで、自分の強みや改善点がより鮮明に見えてきます。特に注目すべきは以下の要素です。
① 室内の快適性・清潔感
② チェックインのスムーズさ
③ ホストの対応の丁寧さ
④ ゲストからの具体的な称賛ポイント
⑤ 他のゲストへの推薦表現
これらが安定してレビューに書かれるようになると、古民家物件に限らず、強い集客力と高い稼働率を維持できるようになります。
【数字と土台の関係】
ここまで紹介したOCC・ADR・RevPAR・レビュー評価の4つは、民泊の「基礎指標」です。しかし、これらの数字は単独では意味を持ちません。清掃・レスポンス・地域情報の発信という土台があって初めて、数字が改善につながるのです。
数字は「鏡」です。自分がどんな姿勢でゲストに向き合っているかが、そのまま反映されます。古民家という条件は強みにも弱みにもなります。だからこそ、土台を整え、数字で確認し、改善につなげるサイクルが大切です。
【まとめ】
沖縄の築30年古民家で民泊を始めるとき、まず取り組むべきは「数字と土台」をセットで見ることです。
•清掃の徹底、レスポンスの速さ、地域情報の提供でゲストの安心感を整える。
•OCC・ADR・RevPAR・レビュー評価という4つの指標を毎月確認する。
この2つを続けるだけで、売上は着実に安定します。民泊運営には魔法の解決策はありません。小さな改善を積み重ねることが、やがて大きな成果につながります。数字を追うのではなく、数字の裏にある「ゲストの声」に耳を傾けること。これこそが、長く選ばれ続ける宿を育てるための第一歩です。
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