民泊オーナーが最初に押さえるべき9つの数字

Airbnb運営において最も重要なテーマのひとつが「収益性」です。レビューや体験価値が高く、ゲストから好意的な評価を得られていたとしても、継続的に利益を確保できなければ運営を続けることはできません。特に初心者オーナーにとっては、「この物件はどれくらいの売上を生み出せるのか」「投資に見合うリターンがあるのか」といった収益の見通しこそ、運営判断の最大のポイントになるはずです。
そこで今回は、実際の売上データと滞在日数の傾向を掛け合わせ、シミュレーション形式で収益性を具体的に検証していきます。数字を並べるだけでなく、「1予約あたりの売上」「稼働率を加味した月間収益」といったリアルな運営の姿を可視化することで、これから民泊を始める方にも「自分の物件に置き換えた場合の規模感」をイメージしていただけるはずです。
【価格帯別の分布から見える「人数構成との密接な関係」】
売上データを見直すと、価格帯は1万円台から5万円以上まで幅広く分布していました。最も多かったのは「50,000円以上」で全体の19%、次いで「25,000〜29,999円」が15%、「20,000〜24,999円」と「10,000〜14,999円」がそれぞれ12%と続きます。つまり、この物件は「低価格帯に偏るタイプ」ではなく、高価格帯の予約も一定数獲得できていたことがわかります。
では、なぜ幅広い価格帯で予約が成立していたのでしょうか。その背景を理解する鍵が、予約人数別の分布にあります。最多は「4人」25%、「6人」18%、「5人」16%で、この3カテゴリだけで全体の約6割を占めていました。つまり、予約の中心は「4〜6人の中規模グループ」であり、この人数帯が価格の中心値ともリンクしていたのです。
例えば「50,000円以上」の高単価予約も、6人以上のグループ利用であれば1人あたり8,000〜10,000円程度。実際には標準的な宿泊費水準に収まっているケースが多いのです。一方で、2〜3人での滞在は「20,000〜29,999円台」に集中しており、ホテルでは提供が難しい「大人数で一緒に過ごせる体験」を選ぶ理由となっていました。
このことは、南城市の物件が「ホテルでは拾えない需要」をしっかりと受け止めていた証拠です。特に中規模から大規模のグループ利用では、3LDK・57㎡という間取りが「一緒に泊まれる・コストを分散できる」という明確な価値を生み出していました。結果として、表面的には高額に見える予約も人数で割ると合理的な選択肢となり、リピーターや紹介へとつながっていったのです。
さらに少人数利用でも「ホテルより広い空間を独占できる」という利点が支持され、カップルや小さな家族連れが繰り返し選ぶ理由となりました。沖縄旅行では「友人や親族との同行」「複数台でのレンタカー移動」が一般的であり、この物件はそうしたニーズを正面から満たせる条件を備えていたといえます。
言い換えれば、価格帯の幅広さは「料金設定の偶然」ではなく、「人数や旅行スタイルに応じて柔軟に価値を提供できた」ことの結果です。だからこそ、5万円超えの予約と2万円台の予約が同時に成立し、結果としてADR33,000円という安定した収益に結びついていました。
この関係性から導ける教訓は、価格戦略を「人数」とセットで考える必要があるという点です。広さ57㎡・3LDKの間取りはグループ利用に最適であり、ゲストは人数を分散させることで「高価格帯でも割安感」を感じていました。結果として、価格帯の幅広さがそのまま「人数構成の多様さ」によって支えられていたといえます。
全体を平均化した結果、ADR(平均客室単価)は約33,000円となりました。この数字は「単純に1泊でこれだけ稼げる」という指標であると同時に、「人数に応じて高価格でも成立する耐性がある物件」であることを示しています。初心者オーナーにとっては、このように人数別データを組み合わせて分析することが、値付けや稼働率を高める上で非常に有効です。
特に、2〜3万円台にボリュームゾーンがありつつ、5万円を超える高単価帯も2割近く存在する点は注目に値します。これは「ファミリー層や中規模グループなど、ホテルでは受け止めきれない需要」を獲得できていたことを意味し、物件の持つ独自の強みを示しています。価格の幅を持たせつつ、ホテルが拾いきれない層を取り込む工夫が、収益の安定化だけでなく、差別化の武器にもなったといえます。
【滞在日数は2〜3泊が主流】
続いて宿泊日数の分布を見てみましょう。最も多かったのは「2泊」で全体の38%、次いで「3泊」が25%、「4泊」が15%と続きました。1泊のみの利用は10%にとどまり、5泊以上の長期滞在は全体の1割強に過ぎません。つまり、南城市における宿泊スタイルは圧倒的に「2〜3泊の観光拠点利用」が主流だったのです。
この背景には、南城市の立地特性が関係しています。南城市は沖縄本島の南部に位置し、那覇空港や北部リゾートへの移動拠点として適しています。そのため、観光客は数泊で主要スポットを巡り、次の目的地へ移動するケースが多いのです。また、2〜3泊の回転率が高い滞在形態は、清掃やリネン交換の頻度を増やす一方で、安定的な収益につながります。逆に長期滞在は一件あたりの売上は高くなるものの、割合としては限定的でした。
このデータから、運営戦略を立てる際には「短中期の滞在に最適化されたオペレーション」を重視することが求められます。たとえば、清掃体制の効率化や、数泊で十分に満足してもらえるアメニティの充実が収益性を大きく左右するのです。
【収益シミュレーション】
今回算出したADR(平均客室単価)33,000円を基準に、宿泊日数を掛け合わせることで、1予約あたりの売上規模を把握できます。試算すると以下のようになります。
- 2泊:66,000円
- 3泊:99,000円
- 4泊:132,000円
このシンプルな計算に、実際の宿泊日数の分布比率(2泊38%、3泊25%、4泊15%など)を加味すると、1予約あたりの平均売上は約90,000円前後に落ち着きます。つまり、1件の予約が入るたびに「10万円に近い売上が期待できる」構造であったことがわかります。
さらに、稼働率を50%と仮定した場合の月間シミュレーションを考えてみましょう。1か月の営業可能日数を30日とすると、50%の稼働は15泊に相当します。ここにADR33,000円を掛け合わせると、月間売上はおよそ49万5,000円という数字が導き出されます。
もちろん、この金額がそのまま利益になるわけではありません。シーズンごとの価格変動や予約の偏り、さらに清掃コストや光熱費などの経費を差し引く必要があります。それでもなお、「稼働率50%でも月50万円近い売上規模が見込める」という事実は、物件の収益ポテンシャルを裏付けています。初心者オーナーにとっても、この試算は「最低ラインとしてどの程度の収益を期待できるか」を考えるうえで有益な目安になるでしょう。
【まとめ】
南城市の物件における収益モデルは、「ADR3万3,000円前後」「滞在2〜3泊が主流」という構造に集約されました。これはレビューで高く評価された清潔さ・ホスト対応・設備といった強みを背景に、安定的な予約を獲得できていた証拠でもあります。
一方で、稼働率を50%に設定しても月50万円近い売上規模が見込めることから、最低ラインとしての安心感を備えていたことも確認できました。価格帯が広がっていたのは単なる偶然ではなく、グループ・少人数利用といった多様なニーズに応えられる間取りと条件を持っていたからこそです。
この事例が示すのは、「高評価を維持する運営姿勢」と「収益性を裏づけるデータ分析」の両輪があって初めて、民泊は長期的に持続可能になるという点です。初心者オーナーにとっては、このモデルを基準に自分の物件に当てはめながら、現実的な収益シミュレーションを考えることが第一歩になるでしょう。
次回第4回では、国別ランキングをもとに「どの国からの予約が多く、どの時期に動くのか」を整理します。実際のデータを通じて、集客戦略をどう描けば収益性につながるのかを具体的に考えていきましょう。



