訪日342万人で8月過去最多 民泊市場に追い風

多田進吾

多田進吾

テーマ:観光・インバウンド


2025年8月の訪日外国人客数は342万8,000人となり、統計開始以来8月として過去最多を記録しました(出典:日本政府観光局 JNTO)。前年同月比では16.9%増、前月7月(314万3,000人)からも8.2%増と大幅な伸びを示しています。円安基調の継続や航空便の回復、さらに夏休み・お盆など日本の観光需要が重なる時期であることが背景にあります。観光立国を掲げる日本にとって好材料であり、同時に民泊市場にとっても追い風と言えるデータです。




【7月と8月の比較から見える動向】
訪日客数を月別に見ると、2025年7月は343万7,000人、8月は342万8,000人でした。両月とも過去最高水準で推移しており、わずかに8月が減少したものの、340万人を超える水準を2か月連続で維持した点が大きな特徴です。通常、夏場はアジア市場が中心ですが、欧米や中東からの観光客も増えており、需要の裾野が広がっています。特に欧州や中東からの訪日拡大は、従来のアジア依存型からの脱却を感じさせる動きといえるでしょう。




【国・地域別の詳細】
8月の訪日客数を地域別に見ると、以下のような傾向が浮かび上がります。
〈東アジア〉
・中国:1,018,600人(+36.5%)
 回復をけん引する最大の増分。航空便の戻りと夏休みの家族・グループ需要が主力。
・韓国:660,900人(+8.0%)
 近距離・短期滞在の安定需要。直前予約とLCC利用が多く、価格とアクセスの良さが決め手。
・台湾:620,700人(+10.0%)
 家族旅行・複数世帯での利用が厚く、キッチン・洗濯機付き物件の選好が強い。
・香港:226,100人(-8.3%)
 地震に関する情報(うわさ・誤情報を含む)や台風の航空便への影響で減少。
〈東南アジア〉
・タイ:35,500人(+2.4%)/シンガポール:20,500人(-17.3%)
 タイは微増にとどまる一方、シンガポールは高価格帯の選好・競合先との比較で伸び悩み。
・マレーシア:21,100人(+22.9%)/インドネシア:31,400人(+41.9%)
 伸び率が高い新勢力。家族・親族単位での長め滞在傾向。
・フィリピン:44,200人(+13.4%)/ベトナム:61,200人(+16.7%)
 若年層・友人グループの比率が高い傾向。
〈北米〉
・米国:194,500人(+11.7%)/カナダ:51,500人(+9.8%)/メキシコ:13,600人
 (+12.6%)滞在は長めで、キッチン・大型冷蔵庫・乾燥機・駐車場など“暮らす設備”が
 評価される傾向。
〈欧州〉
・英国:36,700人(+24.8%)/フランス:37,200人(+18.4%)/ドイツ:35,700人
 (+48.0%)イタリア:41,100人(+18.6%)/スペイン:32,000人(+23.5%)
 北欧地域:9,100人(+32.4%)
 伸び率・単価ともに期待値が高いセグメント。

【民泊市場への示唆】
訪日客数の増加は、ホテル業界だけでなく民泊市場にも直接影響します。特に8月は夏休み・お盆シーズンで宿泊需要が集中し、都市部の宿泊施設は満室率が高まり、地方や郊外にも波及します。沖縄や北海道、地方都市では「ホテルが取れない」状況が続き、民泊物件が選ばれる機会が増加しました。例えば沖縄では、恩納村や北谷町など観光集積地で民泊需要が顕著です。通常の賃貸相場が上昇する中で、観光シーズンにおける民泊利用はオーナー様にとって大きな収益機会となります。また、欧米からの長期滞在型観光客が増えていることも見逃せません。彼らは「ホテルではなく暮らすように滞在したい」という志向が強く、キッチン付きや複数人で利用可能な民泊物件を好む傾向があります。レビュー評価が高い物件や、地域性を感じられる宿泊体験を提供できれば、単価を下げずに稼働率を高めることが可能です。

【数字で見る収益機会】
民泊オーナー様にとって重要なのは、「訪日客数の増加がどの程度収益につながるか」という点です。仮に1泊あたり25,000円、年間稼働率が50%とすると、年間収益は約457万円。ここに8月のような繁忙期で稼働率が70%を超える月が加われば、月の売上は50万円を突破します。逆に稼働率30%にとどまれば、年間275万円にしかならず、その差は182万円。訪日需要の増加をどう取り込むかが、オーナー様収益の分かれ道になります。

【まとめ】
2025年8月の訪日客数は342.8万人と、7月の343.7万人にわずかに届かなかったものの、2か月連続で340万人超を維持し、過去最高水準を更新しました。7月比では微減ながらも、中国(+36.5%)、欧州(ドイツ+48.0%、英国+24.8%など)、中東(+60.9%)といった市場で顕著な伸びが確認され、訪日需要の裾野が着実に広がっていることが分かります。民泊市場にとって、こうしたデータはまさに「追い風」です。繁忙期の集客力を高めるだけでなく、欧米・中東のように単価が高く長期滞在傾向の強い層に的確に訴求できるかどうかが、収益の差を決めます。オーナー様に求められるのは、数字を単なる統計として眺めるのではなく、自身の物件の強み(立地・設備・体験価値)をどの市場に合わせるかを見極める姿勢です。訪日客数が記録的に高まる今こそ、戦略次第で民泊経営を安定収益へとつなげられるチャンスといえるでしょう。

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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