Airbnbデータで解明する沖縄民泊の予約行動

沖縄の民泊市場は拡大を続けていますが、オーナー様の中には「部屋を整えているのにレビューが伸びない」「平均評価が4.6前後で止まってしまい、スーパーホストになれない」といった悩みを抱えている方が少なくありません。実はその原因の多くは、日本人と外国人観光客の文化的な違いにあります。静かで清潔な環境を期待する日本人ゲストに対し、外国人ゲストにとっては必ずしも十分ではないことがあります。逆に、外国人ゲストが期待するホスピタリティが不足することで、不満につながりやすいのです。私は2016年からAirbnbホストとして運営を始め、これまでに1,200件以上の予約を受け入れ、700件以上のレビューを獲得してきました。現在もスーパーホストやゲストチョイスとして沖縄で複数の物件を運営しています。さらに運営代行では、レビュー平均4.85や5.00を含む高評価物件を管理しており、文化的な違いを理解し対応することが収益に直結することを実感しています。
【文化の違いがレビューに与える影響】
Airbnbや観光調査からも明らかなように、レビュー評価を左右する文化差は大きく分けて3つあります。
1. 清掃や清潔感の基準の違い
日本人ゲストは「隅々まで完璧な清掃」を期待します。髪の毛一本でも低評価につながることがあります。
一方で欧米やアジアのゲストは、多少の生活感は許容する代わりに「アメニティや設備の充実」を重視する傾向があります。
2. 滞在スタイルの違い
日本人は室内で静かに過ごすケースが多いですが、外国人ゲストは外出や友人との集まりなどアクティブに滞在する傾向があります。そのため騒音や人数超過といったトラブルは、主に外国人ゲストとの間で発生しやすいのです。
3. コミュニケーションに対する期待の違い
日本人ゲストは「必要最低限のやり取り」を好む一方で、外国人ゲストは「ホストがフレンドリーに接してくれる」ことを期待します。チェックイン時の一言や滞在中のフォロー連絡が、レビューを大きく左右します。
【沖縄民泊の稼働率データから見る改善余地】
私が実際に運営している沖縄の物件の稼働率データを振り返ると、観光需要の季節性がはっきりと数字に表れています。年間平均では約63%ですが、月ごとの差は非常に大きいのです。たとえば1月は40%にとどまる一方で、8月は90%、10月も70%に達しています。つまり「稼働率30%で止まっている」という状況は、実際の市場水準や運営実績と比べてもかなり低い水準であり、大きな改善余地があると言えます。この波を的確に捉えることが収益最大化のカギです。繁忙期の高稼働を確実に取り込み、閑散期の40〜50%台を底上げできれば、年間稼働率を10〜15ポイント改善することも十分に可能です。その結果、年間収益が100万円以上増加するケースも現実的に期待できます。
【具体的な対応策】
文化の違いを理解したうえで、オーナー様ができる具体的な工夫を挙げます。
1. 多言語対応の徹底
ハウスルールやゴミ出し方法、設備の使い方を英語・中国語・韓国語で用意。ピクトグラム(図解)を活用すれば、文字を読まないゲストにも伝わります。
2. チェックイン体験の工夫
セルフチェックイン導入物件であっても、到着前にメッセージで周辺情報や交通手段を案内するだけで印象は格段に向上します。
3. レビュー改善に直結するポイント
・清掃の徹底(特に日本人ゲスト向け)
・利便性の明示(Wi-Fi速度、交通手段など外国人ゲストが重視する情報)
・ホスピタリティ(「Welcome!」「滞在を楽しんでください」などの一言で十分)
【数字で見る効果】
Airbnbの検索アルゴリズムではレビュー評価が非常に重要です。実際に調査で、スーパーホスト物件は一般ホストより収益や稼働率が20〜25%高い傾向が確認されています(出典:民泊投資ナビ)。私の管理物件でも、レビューが4.6から4.8に改善したケースでは、年間売上が100万円以上伸びた実例があります。仮に1泊25,000円設定で稼働率30%(約110泊)の物件は年間275万円の売上ですが、50%(約183泊)に改善できれば年間457万円となり、その差は182万円にのぼります。
【チェックリスト:文化理解の観点からできること】
□ ハウスルールや案内を多言語化しているか?
□ ゲストの国籍ごとの期待の違いを把握しているか?
□ 到着前・滞在中・出発後の3回はメッセージを送っているか?
□ 外国人ゲストに「歓迎されている」と思わせる工夫をしているか?
□ 日本人ゲスト向けには「清掃の完璧さ」を最優先しているか?
【まとめ】
レビューが伸び悩む原因は単なる清掃不足ではなく、日本人と外国人ゲストの文化的な価値観の違いにあることが多いのです。オーナー様がこの違いを理解し、物件運営に反映できれば、レビューは安定し、稼働率と収益を確実に伸ばせます。ただし同時に、日々の対応や改善をすべてオーナー様ご自身で担うのは大きな負担になります。文化の違いを理解し、収益改善のポイントを押さえることは大切ですが、自分で運営するより、別の活用方法を考えるきっかけにもなるでしょう。
次回は「資産を守るための選択肢」をテーマにお届けします。これまで4回で解説してきた稼働率改善やレビュー戦略、価格設定、文化理解といった実践的なノウハウを踏まえつつ、「ご自身で運営を続ける」以外の選択肢についても考えます。



