稼働率改善の基本【1/5】

多田進吾

多田進吾

テーマ:沖縄民泊


「観光地・沖縄なら、民泊を始めれば自然と予約が入る」そう思ってスタートしたものの、実際には思うように稼働率が上がらず悩んでいるオーナー様は少なくありません。特に初心者層に多いのは、「年間稼働率30%前後にとどまってしまうケース」です。これは1年365日のうち、わずか約110泊しか稼働していない計算になります。本来であれば50%(約183泊)を一つの目標にしたいところですが、現実には「単価を下げないと予約が入らない」「レビューが伸び悩む」といった声が多く聞かれます。
私は2016年から民泊事業に参入し、Airbnbホストとして1,200件以上の予約を扱ってきました。レビューは730件を超え、スーパーホスト・ゲストチョイスとして現在も運営を継続しています。東京での運営に加え、沖縄では11部屋を管理し、大宜味村・今帰仁村・本部町・恩納村・読谷村などでコンサルティングも手がけてきました。さらに、うるま市や恩納村では運営代行の実績もあります。こうした実務経験に加え、宅地建物取引士や住宅宿泊管理業者の資格を持つことで、不動産と民泊運営の両面からサポートできる体制を築いています。
その経験から見えてきたのは、「派手な投資や値下げではなく、基本を徹底することが最大の改善策になる」というシンプルな事実です。本コラムは、沖縄本島で民泊を運営する初心者オーナー様に向けた「全5回シリーズ」です。運営に行き詰まりを感じている方に、改善の具体策や賢い選択肢を順を追って解説していきます。第1回目の今回は「稼働率改善の基本戦略」についてお伝えします。

【なぜ稼働率が30%で止まるのか】
稼働率が伸びない背景には、次のような共通点があります。

1. 「清掃品質の不安定さ」
Airbnbレビューで低評価につながる一番の理由は清掃です。床に髪の毛が残っている、シーツにシミがある、キッチンの油汚れが落ちていない――こうした指摘が一度でもあればゲストの信頼を損ね、次の予約につながりません。
2. 「ゲスト対応の遅さ・形式的な返答」
運営代行会社に任せきりにすると、ゲスト対応が事務的になりがちです。「返事が遅い」「質問に的確に答えてくれない」という印象は、レビューにそのまま反映されます。平均評価が4.6程度にとどまる背景には、対応品質の問題が大きく影響しています。
3. 「情報の正確性不足」
「写真と実物が違う」「Wi-Fiが遅い」「駐車場が狭い」など、事前の情報と実際の体験にギャップがあると、ゲストは強い不満を抱きます。誤解を生む表現は避け、弱点も含めて正直に伝えることが信頼につながります。

【改善の基本戦略】
稼働率30%から50%に改善するためには、次の3つの基本を徹底することが出発点です。これまで1,200件以上の運営に携わる中で確信した「再現性の高い改善策」でもあります。

1. 「清掃のマニュアル化とチェック体制」
・細部まで記載した清掃チェックリストを用意する
・「排水溝」「エアコンフィルター」「ベッド下」など、見落としがちな箇所を必ず確認
・代行会社任せにせず、オーナー様自身が定期的に現場確認を行う
2. 「ゲスト対応のスピードと親切さ」
・問い合わせには可能であれば1時間以内に返信
・自動返信に「人の言葉」を添える(例:「お気をつけてお越しください。お会いできるのを楽しみにしています」)
・定期的にテスト予約を行い、代行業者の対応を監査
3. 「情報開示の透明性」
・立地が不便なら「バス停から徒歩10分」「タクシーで◯円」など具体的に書く
・古さがあるなら「築年数は古いが、2022年に浴室をリフォーム済み」と説明する
・Wi-Fi速度や寝具の種類など、ゲストが重視する項目を数値で提示

【数字で見る改善効果】
清掃や対応を改善し、レビュー評価が4.6から4.8に上がれば「スーパーホスト」の条件を満たすことができます。私自身、Airbnbでスーパーホスト・ゲストチョイスを継続している経験からも、レビュー改善が予約数や単価に直結することを強く実感しています。
複数の調査では、スーパーホスト状態のホストの収益や稼働率が、一般的なホストに比べて20〜25%程度高くなる傾向があると報告されています。ただし、実際の効果は物件タイプや立地、レビュー数によって異なります。
さらに、稼働率を30%から50%へ改善するだけで収益は大きく変わります。
- 条件:1泊あたり25,000円 × 365日
- 稼働率30%=「約110泊 → 年間売上275万円」
- 稼働率50%=「約183泊 → 年間売上457万円」
差額は「182万円」。この差は、清掃や対応を改善するだけで十分に得られる可能性があるのです。

【チェックリスト:今日からできる改善行動】
□ 清掃チェックリストを作成したか?
□ ゲスト対応の返信時間は平均1時間以内か?
□ 物件情報に弱点も含めて正直に書いているか?
□ レビューの返信で「改善意識」を示しているか?
□ 代行業者の対応品質を定期的に確認しているか?

【まとめ】
沖縄の民泊市場は依然としてチャンスがあります。しかし、稼働率30%のままでは収益は限定的で、運営疲れから撤退を考えるオーナー様も少なくありません。大切なのは、「派手な投資」より「基本の徹底」です。清掃、メッセージ対応、情報開示――この3つを改善するだけでレビューは改善し、稼働率は上がり、収益も伸びます。私は宅地建物取引士、住宅宿泊管理業者としての資格を持ち、不動産と民泊運営の双方から資産価値を最大化する提案を行っています。民泊経営を諦める前に、まずは基本戦略を実行してください。資産を守り、育てるための第一歩は「シンプルな改善」から始まります。

次回は「レビュー評価を高める方法」に焦点を当てます。ゲストが滞在を評価する仕組みを整理し、評価4.6から4.8に引き上げるための実践的な工夫など解説していきます。

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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