競争激化の中で光る差別化戦略と持ち家活用【4/5】

多田進吾

多田進吾

テーマ:資産活用


【競争が激化する沖縄の宿泊市場】
沖縄は日本屈指のリゾート地として、国内外から高い人気を誇っています。2023年には観光客数が1,000万人を超え、2025年にはさらなる増加が予想されています。その背景もあり、ここ数年でホテルや宿泊施設の新規開業が相次ぎ、宿泊市場は明らかに「供給過多」に傾きつつあります。那覇市中心部ではビジネスホテルが林立し、恩納村を中心とするリゾートエリアでは大型ホテルが次々と建設されています。こうした状況は、一見するとオーナー様が持ち家を活用する余地が減っているように見えるかもしれません。しかし実際には、競争の激化は「差別化の重要性」を高める結果を生み出しています。つまり、ホテルが提供できない価値を持ち家が提供できれば、むしろ競争優位に立てるのです。本稿では、オーナー様が持ち家を民泊運営者に貸す際に意識すべき差別化戦略について、具体的に考えていきます。

【ホテルと同質化してはいけない理由】
沖縄の宿泊市場で最も多いのはホテル型施設です。那覇では立地の良さと価格競争、恩納村ではプールやスパを備えた高級路線が主流です。もしオーナー様が持ち家を単に「宿泊できる場所」として提供するだけなら、ホテルと真正面から競合することになります。しかし、ホテルは運営規模や宣伝力で圧倒的な優位性を持っているため、同じ土俵で勝負するのは極めて難しいといえます。そこで大切なのは「ホテルができないことに焦点を当てる」という発想です。持ち家を活用するメリットは、柔軟性・個性・生活感といったホテルには欠ける要素にこそあります。

【差別化戦略①:家庭的な空間と暮らしの体験】
観光客や長期滞在者にとって、ホテルにはない大きな魅力のひとつが「暮らすように滞在できる」点です。キッチンで自炊ができる、洗濯機で衣類を洗える、広めのリビングで家族団らんができる──こうした環境はホテルにはほとんどありません。例えば、那覇市中心部の持ち家を民泊運営者に貸し出した場合、ビジネス利用者や子連れファミリー層にとっては「ホテルより快適に暮らせる滞在先」として選ばれやすくなります。これは単なる宿泊機能ではなく「生活を支える空間」を提供することで得られる差別化です。

【差別化戦略②:地域文化や歴史を感じられる空間】
沖縄には、琉球王国の歴史や独自の文化が色濃く残っています。赤瓦屋根の古民家、琉球畳の間取り、シーサーの装飾など、地域に根差した要素を持つ物件はそれ自体が魅力になります。観光客は「沖縄に来たからこそ体験できる暮らし」を求めています。築30年以上の古民家でも、丁寧に手を加えて保存しながら貸し出せば、ホテルでは決して提供できない「歴史ある空間での滞在体験」として高い評価を得られます。実際に、私が相談を受けたオーナー様が古民家を民泊運営者に貸し出したところ、収受賃料は従来の約2.5倍にまで増えた事例があります。ホテルには真似できない「物語性」こそが、持ち家活用の強みなのです。

【差別化戦略③:ワーケーションや長期滞在への対応】
コロナ禍以降、「働きながら滞在する」という新しいライフスタイルが定着しました。特にIT業界やクリエイティブ職の人々は、1週間〜数か月単位で沖縄に滞在するケースが増えています。この層に響くのは、安定したWi-Fi環境、作業デスクや照明、静かな周辺環境といった「仕事に適した条件」です。ホテルでは「観光客向け」の設備が中心で、仕事環境としての快適さは二の次になることが多いため、持ち家を活用した物件の方が高く評価されやすいのです。築浅の一軒家を民泊運営者に貸し出したオーナー様が、賃料を従来の2倍に伸ばせたケースもありました。

【差別化戦略④:滞在者ニーズに合わせた柔軟な活用】
ホテルはチェックイン・チェックアウトの時間や利用ルールが固定されがちですが、持ち家活用では運営者の工夫次第で柔軟に対応できます。ペット同伴可、バーベキュー設備の利用、地元市場との連携など、滞在スタイルに合わせたサービスが差別化要素になります。また、北谷町や読谷村のように米軍関係者や外国人居住者が多い地域では、英語対応や駐車スペースの確保など、地域特性に沿った対応が求められます。オーナー様が持ち家を民泊運営者に貸す際には、こうした「利用者に寄り添った柔軟性」を強調することが成功の鍵となります。

【差別化戦略⑤:新規開業施設との差別化】
2025年7月には北部に「ジャングリア沖縄」という大型テーマパークが開業予定です。これにより北部の観光需要はさらに増加すると見込まれますが、同時に宿泊施設の新規参入も加速します。ここでも差別化が欠かせません。ジャングリアに近い持ち家を活用する場合、「テーマパーク+自然体験」という二本立ての滞在価値を訴求することが効果的です。単なる宿泊施設としてではなく、旅行全体を「体験の拠点」として演出できることが強みになります。

【まとめ:差別化が持ち家活用の最大の武器】
沖縄の宿泊市場は競争が激しく、単なる宿泊場所としての持ち家活用はホテルに埋もれてしまうリスクがあります。しかし、家庭的な空間、文化体験、ワーケーション対応、柔軟性、テーマ型観光との組み合わせなど、ホテルにはない価値を提供することで強い差別化が可能になります。オーナー様が意識すべきは「どんな運営者に貸すか」です。物件の魅力を正しく引き出し、差別化戦略を実践できる民泊運営者に貸すことが、持ち家を確かな資産へと変える第一歩です。競争が激化する今だからこそ、「差別化」という視点で持ち家活用を見直すことが求められています。

次回は、最新の観光データや実際のオーナー様の声を交えながら、沖縄における持ち家活用の未来像を解説します。数字と実例の両面から、持ち家を「負担」から「資産」へと変えるための最終ステップをご紹介します。

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Mybestpro Members

多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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