オーナー必見!民泊契約の注意点【3/5】

沖縄本島は南北におよそ120キロの長さを持ち、車で走れば2時間余りで端から端まで移動できる距離です。しかし、その限られたエリアの中にも都市部・リゾート地・農村地域が混在し、不動産市場の特性は大きく異なります。那覇市中心部では人口集中と観光需要が重なり、都市型の安定した賃貸需要があります。一方、中部の北谷町・うるま市・読谷村は観光と居住需要が交錯し、国際色豊かな独自の市場を形成しています。そして、恩納村・名護市・本部町・今帰仁村といった北部では自然を活かした中長期滞在需要が顕著であり、古民家や戸建ての活用に大きな可能性が広がっています。さらに、2025年7月には大型リゾート施設「ジャングリア沖縄」が開業し、観光需要の拡大が見込まれています。これにより、北部エリアは従来の「自然を楽しむ滞在」に加え、テーマ型観光を目的とした新たな宿泊ニーズが加わり、持ち家や空き家(以下、持ち家などと表記します)の活用戦略が一層重要になると考えられます。このコラムでは、それぞれの地域ごとの特性を踏まえ、持ち家などをどう活かせば資産価値を最大限に高められるのかを、最新データを交えながら考えていきます。
【那覇エリア:都市部需要と利便性】
那覇市は県内最大の都市であり、行政・商業・観光の拠点として機能しています。2025年の沖縄県人口統計によれば、那覇市は依然として人口集中が続くエリアで、県内人口の約21%を抱えています。さらに、令和6年宿泊施設実態調査によると、那覇市の宿泊施設数は500軒、客室数は22,588室、収容人数は53,633人と県内最多を誇ります。これは単なる観光需要だけでなく、ビジネス需要の強さも物語っています。このエリアでの持ち家などの活用は「立地の強み」をどう活かすかが最大のポイントです。モノレール駅や那覇空港に近い物件、国際通りや県庁周辺にある物件は、短期・中期滞在者にとって極めて高い利便性を持ちます。こうした立地条件はホテルでは得られない「生活拠点としての利便性」を備えており、家具や家電を整えて民泊運営者に貸し出すことで収益性を大きく高めることができます。特に「自炊可能なキッチン」「洗濯設備」「ファミリー向けの間取り」といった条件は、子連れ観光客や長期滞在するビジネス利用者から高く評価されます。競争の激しい市場ではありますが、立地そのものが強みとなる那覇市中心部は、安定した収益を見込める地域といえるでしょう。
【中部エリア:観光と居住のクロスオーバー】
北谷町・うるま市・読谷村を中心とする中部エリアは、観光と居住需要が交差する独特の市場です。北谷町はアメリカンビレッジを中心に外国人観光客や在住者が多く、街全体が国際的な雰囲気に包まれています。近隣には嘉手納基地やキャンプ・フォスターといった米軍施設が位置しており、米軍関係者やその家族による居住需要も一定規模で存在します。そのため英語表記や多文化的なライフスタイルが日常に溶け込み、他地域にはない独自の不動産需要を形成しています。一方、うるま市や読谷村は比較的落ち着いた生活環境を持ちながらも、海に近い自然環境に恵まれています。教育や医療といった生活基盤も整っていることから、観光客だけでなく移住希望者や長期滞在者からも選ばれやすい地域です。観光需要、移住需要、そして米軍関係者による安定需要が交差する中部エリアは、まさに「クロスオーバー市場」といえるでしょう。沖縄県の人口動態をみると、2024年時点で県全体の人口は146万7,065人と2年連続で減少傾向にありますが、転入者は約8.1万人、転出者は約7.9万人と社会増加はプラス1,975人となっています。特に中部エリアは転入者の受け皿となっており、移住希望者や長期滞在者に選ばれる傾向が顕著です。この地域での持ち家などの活用は「多様な利用者層に対応できる柔軟性」がポイントです。観光客の短期滞在、移住検討者の中期滞在、そして長期で生活基盤を築きたい移住者まで幅広く対応できます。持ち家などを民泊運営者に貸すことで、オーナー様自身がすべての運営を担う負担を避けながら、多様な需要を効率的に取り込むことが可能です。実際、令和6年の調査では県内のペンション・貸別荘が2,446軒と宿泊施設全体で最も多く、こうした運営形態は中部エリアの特性と非常に相性が良いといえます。
【北部エリア:自然と中長期滞在需要】
恩納村・名護市・本部町・今帰仁村を含む北部エリアは、沖縄を代表する観光資源を数多く抱えています。美ら海水族館ややんばるの森、古宇利島などは全国的に知名度が高く、恩納村には大型リゾートホテルが集積。令和6年調査では、恩納村の収容人数は21,916人と那覇市に次ぐ規模を誇ります。
しかし、那覇市中心部からの距離があるため、短期旅行者よりも「自然を楽しみながら長く滞在したい」という層に適したエリアです。特に韓国、中国、台湾、香港など東アジアを中心とした観光客や国内のリモートワーカーによるワーケーション需要は年々高まっており、1週間以上の長期滞在も珍しくありません。これらは北部エリアにおける潜在需要の高さと、民泊運営者への賃貸が収益最大化に直結することを示す具体的な事例です。特に古民家や戸建てといった物件は、ホテル利用者と異なり、より家庭的な環境や現地の暮らしの体験を重視する傾向があり、都市部とは異なる価値を生み出します。
【まとめ】
沖縄本島における持ち家などの活用は、エリアごとの特性を見極めることが欠かせません。
- 那覇市中心部は立地を活かし、短期・中期滞在需要を取り込む市場。
- 中部(北谷・うるま市・読谷村)は観光と居住の多様性が共存し、民泊運営者への賃貸で幅広い利用ニーズに対応できる市場。中部の立地を活かすことで、南北の観光スポットへのアクセスも良好です。
- 北部(恩納村・名護市・本部町・今帰仁村)はリゾート感あふれる自然や静けさを求める中長期滞在型市場であり、古民家や戸建ての活用が差別化につながる市場。
人口減少と観光増加が同時進行する沖縄では、エリアの特性を無視した一律の戦略は通用しません。オーナー様が持つ持ち家などの条件と地域特性を掛け合わせることで、資産価値を最大限に引き出すことが可能です。データを根拠にした戦略と、現場の声に基づく柔軟な対応が、沖縄の持ち家などを「負担」から「確かな資産」へと変える道筋となります。
次回は、競争が激化する宿泊市場の中で、ホテルにはない価値をどう持ち家に見いだすか─差別化戦略の具体的なヒントをお伝えします。



