人口動態と移住ニーズが持ち家に与える影響【2/5】

多田進吾

多田進吾

テーマ:資産活用


【人口動態と持ち家の価値】
沖縄における持ち家の活用を考えるうえで、人口動態と移住ニーズは極めて重要な要素です。単純に「人口が減れば住宅が余る」という構図ではなく、沖縄特有の出生率の高さや移住者の多さ、地域ごとの人口分布の偏り、そして新しい働き方の広がりといった複雑な背景が絡み合っています。特に、日本屈指のリゾート地である沖縄は観光客だけでなく、ワーケーションやリモートワークといった柔軟な働き方を選ぶ人々にとっても魅力的な滞在先となっています。私はこれまで多くのオーナー様から持ち家活用に関する相談を受けてきましたが、そこには常に「人口の動き」と「住まいに対する意識の変化」が関わっています。今回のコラムでは、全国比較も交えながら、人口動態と移住ニーズが沖縄の持ち家活用にどのような影響を及ぼしているのかを掘り下げていきます。

【全国と比較した沖縄の人口動向】
全国的には少子高齢化と人口減少が進み、総務省のデータによれば2020年から2023年にかけて毎年数十万人規模で人口が減少しています。これに対し、沖縄は出生率が全国平均を大きく上回っており、人口減少のスピードは比較的緩やかです。2023年の合計特殊出生率は全国平均1.20前後に対して、沖縄は約1.70と高い水準を維持しています。しかし、「沖縄は人口が減りにくい」という印象とは裏腹に、地域間の格差は大きく、都市部と郡部では状況が大きく異なります。

【地域による人口偏在と持ち家の使われ方】
那覇市や中部エリアでは人口集中が続き、マンションやアパートの需要が高止まりしています。特に若い世代や県外からの転入者が生活基盤を求めて集まるため、持ち家を賃貸に出せば高い稼働が期待できます。一方、北部の農村地域や離島では若年層の流出が進み、高齢者のみが残る世帯も増えています。こうした地域では持ち家が使われないまま残されるケースが目立ち、活用方法の模索が課題となっています。北部地域や離島の町村では高齢化率が30%を超える地域も見られ、名護市では住宅全体の中で空き住戸が14.9%に達していると報告されています。
出典:沖縄県「令和5年版 沖縄の高齢者の姿(資料編)」、全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部

【移住ニーズの高まりと持ち家需要】
沖縄は長年、移住希望地ランキングの上位に名を連ねてきました。観光で訪れた人が「いつかは住んでみたい」と思うケースも多く、リタイア後のセカンドライフを求めるシニア層から、リモートワークを活用して一定期間滞在する若い世代まで、その層は幅広いのが特徴です。特にコロナ禍以降は「仕事をしながら沖縄で暮らす」というライフスタイルを選ぶ人が着実に増加しました。私自身も2019年に沖縄へ移住しましたが、実際に暮らしてみると、首都圏にはない自然やゆったりとした時間の流れを求めて来る人の気持ちを強く実感します。周囲でも、東京や大阪の企業に勤めながら北谷や恩納で賃貸住宅や民泊物件を借り、中長期で滞在する人が確実に増えています。

【移住者にとっての持ち家活用】
移住者の増加は、オーナー様の持ち家(=資産)を活用する新たな可能性を広げています。特に、家具や家電を備えた持ち家は、中長期で滞在したい人にとって「すぐに生活を始められる拠点」となります。また、地域の暮らしを体験しながら将来の住まいを検討したい層にとっても、短期や中期で利用できる点は大きな魅力です。こうした移住希望者の需要を取り込むことで、持ち家はこれまで以上に収益を生み出す資産へと変わる可能性があります。

【都市部は“貸し手市場”】
那覇市中心部や北谷町(特に海側)では賃貸需要が旺盛で、持ち家を賃貸に出せばすぐに借り手が見つかります。需要が供給を大きく上回っているため、相場を上回る家賃設定でも契約に至ることは珍しくありません。オーナー様にとっては持ち家を活用する大きなチャンスであり、賃料条件や契約形態に工夫を加えることで、さらに収益を伸ばせる余地があります。都市部では「借り手が見つかるか」という不安よりも、「どう収益を最大化するか」という視点が重要になります。

【新しい需要:ワーケーションと長期滞在】
さらに注目されるのが、ワーケーションやリモートワークといった中長期滞在型の需要です。Zoomなどオンライン会議の普及により、特にITやクリエイティブ業界で働く人々が「数週間から数か月だけ沖縄に暮らしてみたい」と物件を借りるケースが増えています。こうした層はホテルではなく「暮らすように滞在できる空間」を手頃な価格で求める傾向があるため、家具・家電付きの物件とは非常に相性が良いのです。私自身、Airbnbホストとして1,000件以上の予約を受け入れてきた経験からも、近年は「仕事をしながら自然に囲まれて過ごしたい」という声が確実に増えていると実感します。これは従来の賃貸や観光利用とは異なる新しい市場であり、オーナー様にとって大きな収益機会となります。

【移住定住の限界と持ち家の活用戦略】
ただし、移住者やワーケーション利用者がすべて長期的に沖縄に定住するわけではありません。最初は憧れで移住しても、教育や医療、仕事の制約、さらには人間関係の築きにくさなどを理由に、数年で本土に戻るケースも少なくないのが実情です。したがって、オーナー様が「一生住んでくれる入居者」を求めるのは非現実的です。むしろ、「一定期間の滞在者」をどう受け入れるかという視点が欠かせません。その有効な手段の一つが、持ち家を民泊運営希望者に貸し出す方法です。持ち家を活用することで、中期滞在需要を取り込みながら、安定した収益と地域貢献を両立させることができます。これこそが、沖縄の持ち家をリスクから資産へと転換する現実的な戦略といえます。

【まとめ:人口動態と移住ニーズが示す持ち家活用の方向性】
人口動態と移住ニーズを踏まえると、沖縄は「人口減少」と「人口集中」が同時進行し、そこに移住者の流入が加わって独自の市場が形成されています。そのうえ、日本屈指のリゾート地である沖縄には観光需要が絶えず、新規事業者の参入も続いています。だからこそオーナー様が取り組むべきは、この複雑な動きを正しく見極め、持ち家を安定的に収益化することです。
そのためには市場を正しく読み解くことが大切です。人口や移住の動きは統計やニュースで把握できますが、それを自分の持ち家の活用方法に落とし込むのは容易ではありません。そして、民泊運営者への賃貸は、持ち家を有効に活用し、安定収益を確保するための有力な選択肢です。私は専門家として、オーナー様の所有不動産の価値を見直し、収益を最大化するお手伝いをしています。地域の実情に即した戦略を立てることで、持ち家は確かな資産へと変えることができるのです。

次回は、那覇・中部・北部といった地域ごとの不動産市場の特徴を取り上げ、それぞれのエリアで持ち家をどのように活用すべきかを詳しく解説します。

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多田進吾
専門家

多田進吾(不動産仲介)

沖縄リアルエステート株式会社

東京で富裕層向け不動産仲介に従事し交渉力や提案力を磨く。沖縄移住後は宿泊施設を開業し運営ノウハウも取得。迅速かつ丁寧な対応を強みに、空き家活用から収益化の提案までオーナー様に寄り添った不動産取引を支援

多田進吾プロは琉球放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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