僕がマイベストプロ沖縄への掲載オファーを受けた理由。
車を売りたい人の為の話#10
日産ショックとは?
利益よりも販売台数を重要視した結果、巨額の赤字を計上した事による日産の経営危機。
一部では「カネ」ではなくて「ヒト」の問題だと言われているみたいですが、その辺の内部事情は僕には分からないので割愛します。
一時はホンダとの協業(経営統合)に向けて話は進んでいましたが、ふたを開けると実際はホンダが日産を子会社化する事(ついでに三菱も食っちゃえ的な?)が目的だったらしく、最終的にこの話は破談となったようです。
数日前の報道によると、2024年度の日産の最終決算は6,700億円超えの大赤字。
経営再建を掲げる日産は、約2万人の人員削減(リストラ)と、これに伴う国内外の工場の統廃合を2年以内に実行する事をメディアの前で明言しました。
ここまでのストーリーを見るだけでもかなり深刻だけど、現実は更に厳しく、これ以上に悲惨な現実が目前に迫っていて、その辺りをひっくるめての「日産ショック」だと、僕は定義します。
サプライチェーンの崩壊は必至?
車を1台作るにも、実際にはたくさんの会社が関わっています。
分かりやすく例を挙げると、フロントガラスを作る会社とか、ヘッドライトの電球を作る会社とか、シートのスポンジや布を作る会社とか、フロアマットを作る会社とか、専門的なところだとスパークプラグを作る会社とか、イグニッションコイルを作る会社とか、バッテリーを作る会社とか、とにかくたくさんの会社が関わっているんですね。
自動車メーカーに上記のような製品または部品を供給(Supply)する事を生業とする会社をひと括りにして「サプライチェーン」と呼ぶのですが、今回の日産ショックはこのサプライチェーンへの影響がかなり大きくなる事が予想されます。
ここではサプライチェーンを「下請け企業の集合体(以下、下請け企業)」とします。
自動車メーカーと下請け企業の関係は現代の奴隷制度?
まず、自動車メーカーが車を作る事を計画します。
こんな形にしようとか、こんな仕様にするぞとか、企画会議で作る車の方向性を決めます。
企画会議で決まった車を作る上で必要となる製品または部品を、下請け企業に対し「作って下さい」と要求するらしく、ここめちゃめちゃ重要で「作れますか?」じゃないらしいんですね。
しかも驚くくらいの安価(※)で。
単価で考えるとお世辞にも受注したい案件じゃなくても、発注される数が膨大である事(究極の薄利多売)と、今後の関係性を考えて無茶な要求を飲まざるを得ないんですって。
ちなみに上記の話は僕が過去に、自動車メーカーの企画部に所属していた人、自動車メーカーの下請け企業を経営していた社長とその工場で働く従業員から実際に聞いた話で、まじで「リアル版半沢直樹」の世界でした。
多少誇張された話もあると思い話半分程度で聞いていましたが、半分でもこの内容なので下請け企業にとってはかなり危険な主従関係にあると言えるのではないでしょうか。
※下請け企業の社長は「仮に掘っても飲むしかなかった(=赤字でも要求に応えた)」と言っていましたが、真相はいかに…。
増産と減産は表裏一体
車の販売状況がいいと、自動車メーカーの幹部は「もっと作れ!」と現場に指令します。
作れば作るほど売れるわけですから、経営判断としては当然正しいわけで、これに伴い下請け企業に対しても、製品または部品の増産を要求します。
その要求に応える為にも金融機関から新たにウン千万円単位(場合によってはウン億円単位)の融資を受けて、製造ラインを増設する事になるのですが、これが命懸けの綱渡りのようなもの。
製造ラインを増設した結果、増産の要求に応える事は出来るようになり、必然的に増収増益にはなったけど、増産の要求がいつ止まるか分からないのです。
製造ラインが増えたのはいいけど、同時に借金も増えた。
もし増産が一転して減産、最悪のケース、生産にストップがかかったら?
売上と利益が減ったところで借金が減るわけじゃないし、月々の返済は待ったなし。
リーマンショックの時に実際これが起こり、資金繰りに行き詰った多くの下請け企業が倒産し、同時に行き場を失った大量の失業者が生まれました。
やっぱり日産ショックは対岸の火事じゃない!
今回は#1で、日産ショックのざっくりとした内容ついて書きました。
次回の#2では、今回の日産ショックが対岸の火事では済まない理由と、我々一般庶民の生活にどう関わってくるのか、そして中古の日産車の買取と販売について起こり得る最悪のシナリオについて書きたいと思います。
現在日産車を所有している人、日産車の購入を検討している人、そして現在所有している日産車の売却を今まさに検討している人にとって、かなり参考になるコラムになると思うので、次回の#2をお楽しみに(決して楽しい内容ではありませんが)。




