遺言のルールについて
相続のご相談のなかには「認知症の人は相続人になれますか?」というものがたまにあります。
今回はその場合についての相続をご説明していきます。
遺産分割協議は法律行為であるため、判断能力に欠く人、例えば認知症の人などが単独でした遺産分割協議は無効になります。それは、他の相続人のいいように決められてしまう可能性があるからです。判断能力を欠く状態かどうかの判断基準は、自分の行為が法的にどのような結果を生じさせるのかを理解できるかどうかをいいます。
すなわち、未成年者の場合と同様に、遺産の理解やその評価、取得した場合、どのようなことになるか理解できているかどうかです。意思能力が疑われる人がいる場合は、その人の意思能力の程度に応じて下記のような制度が設けられています。
成年後見制度
成年後見制度のなかでも、本人の判断能力のレベルによって支援する人の権限を「後見」「保佐」「補助」という3つのレベルに分けています。この制度は日常生活においても有効な制度ですが、遺産分割協議を行う際は不可欠となります。
後見 : 本人の判断能力がほとんどない状態
本人の精神の障害の程度が著しく、判断能力を欠く状況にある場合の制度
保佐 : 判断能力が著しく不十分な状態
精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な場合の制度
補助 : 判断能力は乏しいが、後見・補佐より軽い状態
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な場合の制度
[成年後見制度による遺産分割協議の場合]
後見の場合は、成年後見人が代理人として遺産分割に参加します。保佐、補助の場合は、本人が遺産分割に参加するものの、代理人を設け遺産分割の内容について同意をもらう必要があります。また、成年後見人等は被後見人等の財産保護をするために選ばれていますので、不利な分割には合意できません。よって遺産分割協議では、法定相続分以上を確保する必要があります。
成年後見人、保佐人、補助人は、本人・親族や利害関係人等の申立てにより、家庭裁判所が選任します。多くの場合、弁護士などの専門家や同居の家族が後見人となっています。同じ相続で、相続人の立場と後見人の立場の両方を有する人がいる場合があります。そのような場合は、中立な立場とならないため、さらに相続人ではない第三者である特別代理人を家庭裁判所で選任してもらわなければなりません。
推定相続人の中に判断能力に欠く人がいる場合は、できるだけ遺産分割協議をしなくてもいいように、細かく所得を指定した遺言書を作成しておくなど、生前に準備しておくとよいでしょう。