相続税を払わずに、税務署に黙ったまま時効を待つのは可能か
前回のコラムで「相続税とはなにか?」を綴りました。流れとして「相続」とあれば次は「贈与」。
ということで、今回は「贈与税とはどんな税金なの?」というテーマで綴っていきます。
財産を持っている人が亡くなると、その財産は次の世代の人(子や孫)に引き継がれます。
しかし、引き継ぐタイミングにより「贈与」と「相続」に分かれます。
被相続人(財産を持っている人)が生きている間に、子や孫に財産を渡す場合は「贈与」となります。被相続人が亡くなったあとに、子や孫が財産を引き継ぐ場合は「相続」となります。これらにかかる税金をそれぞれ「贈与税」、「相続税」と呼びます。
では、贈与税がかかる「贈与」とは、どのようなものなのでしょうか。
贈与とは、自分の財産を無償で相手方にあげるという意思表示をした後、相手方も同様にもらうという意思表示をすることによって成立する契約をいいます。つまり、贈与は「意思表示」なので、書面でも口頭でもお互いに意思表示をすれば成立します。
しかし、一方の意思表示だけでは贈与として成立しません。例えば、祖父が孫の名義で預金をし、その通帳と印鑑を孫が管理していない場合には、贈与は成立しません。そのため、第三者が見ても明らかに「あげたこと」と「もらったこと」がわかるように裏づけをしておく必要があります。
そして、贈与をすることによって贈与税がかかります。
贈与税とは、個人から贈与により財産を取得した人に課される税金です。法人から受け取る財産については、贈与税の対象にはなりません。法人から受け取る場合は一時所得となり、所得税の対象となります。
また、贈与税には年間110万円という基礎控除額(税金がかからない財産の額)があります。つまり、その年の1月1日~12月31日の1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下である場合には、贈与税はかかりません。
逆に、その年に贈与を受けた財産の合計額が110万円を超える場合には、翌年の2月1日~3月15日までに、住所地の所轄税務署に対して、申告し納税しなければなりません。
では、そもそもなぜ贈与税を払わないといけないのでしょうか。
人が亡くなったことにより財産を取得した場合には、その財産について相続税が課税されます。人が亡くなった時にだけ相続税を課税し、贈与税が課税されないのであれば、亡くなる前に配偶者や子供などにすべての財産を贈与すれば良いことになります。
そうなると相続税が課税されず、相続税の意味がなくなってしまいますね。
そこで、相続税で課税されない部分を補完するために設けられたのが、贈与税なのです。
最後に、贈与税の税率についてです。
贈与税の税率は相続税の税率に比べて高い税率になっています。それは、相続の場合には財産を持っていた人が亡くなった時点での財産、債務の額について課税されるので、税務署も把握しやすいからです。
しかし、現金などを生前に贈与されると税務署は把握することが難しくなります。そのため、税率を高くし、生前に財産が分散されることを阻止しようとしているのです。
ただし、それでは国民の資産が流動しないことが、景気の減退に影響を与えてしまうので、制限付きではあるものの、祖父や親が生前に「孫や子に資産を移すこと」を推奨してきています。
相続・贈与の違いは、人が「亡くなったとき」なのか「亡くなる前」なのかということですが、相続のとき、つまり人が亡くなったときでは、その人がどのくらい財産を持っていたのかは、いちから調べないといけません。
しかし、贈与の場合は亡くなる前なので、財産を把握しやすく相続税・贈与税の両方の対策ができます。
このように「相続・贈与」の意味を理解して、「財産をあげる人」と「財産をもらう人」がお互いに理解し合い、争いのない財産の承継をしていきたいものですね。