法律相談ちょっとした工夫~時間配分
法律相談ちょっとした工夫~「聞くこと」と「聴くこと」
法律相談には時間の制約があります。長くても1時間程度の中で、聞いて回答することが必要です。
法律相談は人生相談ではないとよく言われます。
人生相談や悩みごと相談の場合は、時間の制約なく「気持ち」を聴くことが多いです。
昔々、東京で公務員をしていた当時、深夜の電話相談ボランティアを週末にしていた時期がありました。
ただ、ひたすら相談者の気持ちに沿って耳を傾けるのです。耳で「聞く」のではなく、耳と心で「聴く」ことの大切さを研修で教えられました。夜遅くに教会の階段を昇って屋根裏部屋の当番ブースに入っていく際は、気持ちが暗い洞窟をとおって地下に降りて行くような不思議な感覚があり、電話の向こう側の声だけに耳を澄ませることができます。降りていくと地下の水脈に触れることがあり、明け方まで1~2時間お話を聴くことも多く、それは苦にならなかった記憶が今でもあります。
気持ちを聴くことはとても大切なことですが、時間の制約がある法律相談の場合、これをやっていると、確認しなくてはいけない事実関係を確認整理できないまま、時間が過ぎてしまい、相談者は回答が得られず不満を抱いて、また次の相談を重ねたり、各相談機関を訪ね歩くことになってしまいかねません。
悩みごと相談の場合は、語られる「ことがら」に気を取られることなく、その背後にある「気持ち」に焦点をあてるよう教わりました。「ことがら」に対する回答や指示を受け手が行うのではなく、「気持ち」を明確化していく過程で、相談者自らが一歩踏み出すのを待つ姿勢でした。
法律相談の場合は、こうした非指示的な手法は必ずしもマッチしないのですが、局面ごとワンポイントでの工夫はできます。「ことがら」を正確に聞き取るためには、場面場面で「気持ち」をうまく整理していくことは大切です。それができれば、さらに踏み込んで大切な「ことがら」を聞き取ることができることもあります。
ごく普通に多くの方は実践されていると思うのですが、あいづち、うなずき、ねぎらい、など、言語・非言語を問わず相談場面におけるコミュニケーションの工夫や、質問形式の工夫など、日頃それとなく実践していることを振り返りつつ、整理していきたいと思います。
※ 本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や事件に関する記述はありません。