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随所に伝統工法の知恵や工夫を取り入れた、住みやすい家づくり

先人の知恵を生かした伝統工法による木造建築のプロ

櫻井利雄

先人の知恵や工夫が詰まった伝統工法の家を建てています
雪の重さに耐え、省エネ効果のある屋根材を使用した住宅

#chapter1

木の質と味わいにこだわり、国産木材を自社で製材・自然乾燥

 歴史ある神社や寺、数寄屋造りの家など、美しいたたずまいの木造建築物。これらは、クギやボルトなどの金物を使わず、木と木を組み合わせた伝統工法で造られています。そこには、先人たちが培ってきた技術が凝縮されています。

 「桜井木材建築」は、江戸時代の創業時から伝わる工法で、製材から建築まで一貫して自社で行っています。天井や床、内装などに使用されるのは無垢材。戸建て住宅をはじめ、商業施設や社寺も手掛けています。

 「当方は宮大工の家系で、江戸中期に新潟で大工業を営んでいた記録が残されています。家づくりの技術は、代々口伝で受け継いできました」と話すのは、代表の桜井利雄さん。

 取り組む工程の一つが木材の選別です。質と風合いを追求し、スギやヒバ、ケヤキ、ヒノキなど、年輪と年輪の間の木の肉がしっかりとした18種類の材木を全国の産地から仕入れています。製材後は、木材本来の強度と柔軟性が保てるよう、じっくり自然乾燥させます。人工乾燥では、熱が原因で樹脂が変質したり、細胞が破壊されたりして木を劣化させる恐れがあるからです。

 「古民家のすすけた柱や梁、黒光りする床板のように、木は年月を経るごとに色合いや風合いが増します。人工乾燥材や集成材、合板は同様の経年変化は望めないでしょう。スギにはスギの、ヒバにはヒバの味わいがあるので、木それぞれの味わいを大切にしたいですね」。国の重要文化財の改修工事に木材を提供するなど、桜井さんの目利きには定評があります。

#chapter2

材料の使い方や意匠にも宮大工の技術が光る

 「建て主さんが人生をかけて家を建てる以上、私たちも持てる技術を最大限発揮しなければ。ただし、それをひけらかすようなことがあってはならない」と桜井さん。オリジナリティーがありながらも、個性を際立たせず、その土地の気候風土や風景に溶け込むような家づくりを目指しています。

 材料の使い方にも、先祖から継承した手法が生かされています。例えば、住宅の屋根の下地構造には垂木(たるき)を渡すのが一般的ですが、桜井さんのもとでは使用しません。使うのは厚さ60ミリメートルの屋根板。鉄骨などに比べて軽い上に、強度も備えているので雪の重さにも耐えるほか、木材は熱を伝えにくい性質があるため、断熱材を敷かなくても省エネ効果を期待できます。また、雨が激しく屋根を打ち付けても音を吸収するメリットも。

 内装では、さりげなく意匠を施します。空間になじみ建て主でさえ気づかないこともあるとか。ある家で、欄間に水鳥とハスの花の透かし彫りをした時のこと。家を訪れた人が欄間に向かって参拝し、主にこう言ったそうです。「仏さまがいらっしゃるのでお参りさせてもらいました」

 「水鳥は仏さまの化身。併せて仏教世界を象徴する蓮華を描くことで、仏さまが家をお守りしているイメージにしました。ほかの建て主宅では、柱に埋め木をして将棋の駒や雲の形をあしらったり。何か一つでもその家独自のものがあれば、愛着が生まれます。わが家を愛情深く慈しみ末永く住みつないでほしい。意匠にはそんな思いも込めています」

部屋ごとに使用する木材を吟味して、住み心地を追求します

#chapter3

心豊かに、穏やかに暮らしてほしいという思いを込めて

 これまで、広告を出したことがないという桜井さん。自分たちの手で生み出した建物や施主が宣伝してくれたといいます。木の良さや価値を再発見する取り組みに対し表彰するウッドデザイン賞(林野庁補助事業)で、2016年に入賞したのも、施主である農家レストランのオーナーがコンテストに応募したからでした。新潟産のスギをふんだ んに使用し、木組みで仕上げた天井と高い吹き抜けが印象的で、「自然にやさしく包まれているような感覚が得られる」と高く評価されました。

 桜井さんの代になって約50年。日本人の英知が詰まった木造建築のノウハウを、後世に伝えていきたいと考えています。

 「伝統工法の本質は、玄関や水回りなどの方角や部屋の間取りといった家相をよくし、そこに住む人が心豊かに、そして穏やかに暮らせるようにすることにあります。昔ながらの風習だと感じるかもしれませんが、現在の生活にも十分に役立つ知恵です。時代の変化にうまく対応しながら、残すべきものは残していきたいですね」と、300年あまりの流れをくむ宮大工としての矜持も見せます。

 桜井さんを筆頭に、熟練職人たちの丁寧で確かな技術が造り上げた建築物は、新潟に限らず、東京や富山、長野などにもあります。「どんな小さな仕事でも全力を尽くせと教えられてきました。要望があればどこにでも行きます。予算以上のことを常にさせてもらっている自負はありますので、気軽にご相談ください」

(取材年月:2021年11月)

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櫻井利雄

先人の知恵を生かした伝統工法による木造建築のプロ

櫻井利雄プロ

建築施工

桜井木材建築株式会社

宮大工の流れを組み、江戸時代から伝わる工法で、国産の木の味わいを生かした家づくりを行う。一般住宅のほか、商業施設や寺社の建築まで対応。木材の仕入れや製材から、建築まで心を込めて取り組んでいます

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