一寸の虫にも五分の魂

植松文也

植松文也

テーマ:建築よもやま話

一寸の虫にも五分の魂


どんなに小さく弱い者でも、それ相当の思慮や意地を持っているものだ。小さくても、ばかにできないたとえ。


ことわざには日本古来の寸法がたくさん登場します。

一寸先は闇。
寸暇を惜しむ。
五里霧中。
などなど。

ことわざは、おおよその大きさや長さなどを基にした比喩なので、正確な寸法ではありませんが、ある程度のサイズ感があると言葉に深みが出ます。
一般的には使われなくなった寸法でも、おさえておいて損はありません。

さて、その寸法は、「尺貫法」に基づいています。





尺貫法(しゃっかんほう)


長さの単位を「尺」、体積の単位を「升」、質量の単位を「貫」とする、わが国古来の度量衡法です。現在はメートル法が使われています。

今回は、長さの単位である「尺」についてのお話しです。

尺に馴染みがない現代人は、尺をメートルに置き換えて、寸法を確認することになります。
厘:0.30303…ミリ
分:3.0303…ミリ
寸:3.0303…センチ
尺:30.303…センチ

換算値に割り切れない端数があるので、通常「3」もしくは「3.03」で換算されます。

ところで、今では使われなくなった「尺」も、建築業界では当たり前に使われています。


建築と尺


建築ではミリが標準単位ですが、いまだに尺の単位が飛び交っています。
理由は、大きく二つあります。

工法と建材が、引き継がれているからです。

工法の担い手での一番手は、大工さんです。
建材は、木材や新建材などの建築で使われる材料の総称です。



大工さんと尺


大工さんは尺を使います。
大工さんと打合せをする際に尺が分かっていないと、戸惑うことになります。
木造に携わる設計士が、いちいち尺をメートルに換算してるようでは、設計士失格と言われても仕方がありません。

失格と偉そうに断じる私も、駆け出しの頃は、尺と寸を取り違えてちんぷんかんぷんでした。





建材と尺


建材の多くが尺を基準にしています。

木材を例にすると。
3.5(サンゴ-)柱:105×105×3000-管柱など
尺梁(シャクバリ):105×300×4000ー2間飛ばしの梁など
1.5(イチゴ)の2寸:45×60×4000-根太など

新建材も同様です。
サントウ板:3尺×10尺×4分:910×3000×12-外装板など
キッチンパネル:3尺×8尺×1分:910×2400×3-910×1820×3規格あり
構造用合板:3尺×6尺×4分:910×1820×12-コンパネは900×1800×12

建材での「尺」は、あくまでも呼称です。
近似値のミリが実寸となります。
ホームセンターなどでは、ミリ表示が多いようです。

いずれにしても、尺を配慮しないで計画すると、材料のロスが生まれます。

さらに、尺の上位単位に「間」(ケン)があります。


1間(イッケン)は6尺です


1間:6尺×303.03…ミリ=1818.18…ミリ

尺までは10の倍数ですが、「間」(ケン)は6の倍数となるので、メートルになじんだ現代人には途端に難しくなります。
さらに、関東間や本間など同じ漢字で「間」(マ)という単位もあります。
こちらは、数値がバラバラで、混乱は増すばかりです。

今回は、1間(イッケン)に絞って、話をまとめます。





閑話休題


建築では、1間は1820ミリです


建材のロスもさることながら、従来の住まいからの違和感をなくすため、近似値の1820ミリが一般的です。
基準値のミリで統一することで、尺も世界標準となるのです。

このように、1820は標準の単位として、受け入れられています。
ただし、あくまでも近似値なので、そのままで尺貫法の換算値とすると間違いが起きます。


坪を換算する際に1820は使えません


坪:1間×1間=1.81818…×1.81818…=3.305782…㎡
小数点第4位を切り捨て、坪「3.305」㎡が一般的です。

1.82×1.82=3.3124㎡とするのは、誤りです。
と、どうでもいい話に帰結しました。
申し訳ありません。

と、言っても、自分の家について床面積や敷地面積を小さく換算されるのは、気分を害します。

床面積100㎡÷3.3124=30.19坪より、100÷3.305=30.26坪。
敷地面積150㎡÷3.3124=45.28坪より、150÷3.305=45.39坪。
ちょっとでも大きく見られたい、評価されたいのが、庶民感覚です。

まさに、「一寸の虫にも五分の魂」です。


閑話に最後までのお付き合い、ありがとうございました。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

植松文也
専門家

植松文也(一級建築士)

ハウジング植松

建築は、プランニングで成否が分かれます。設計だけ、施工だけでなく、両方のバランスが重要です。法学部出身で一級建築士と1級建築施工管理技士を取得。設計・施工そして行政手続きまで、お任せ下さい。

植松文也プロは長崎文化放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

お客様第一主義!キャリア豊富な頼れる建築のプロ

植松文也プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼