日本庭園や和モダン、坪庭など、知識・技術と創意工夫で癒やしの庭を提案（2/3）

広い世界で感性を育んだ少年時代を経て庭師の世界へ。左官や石工の修業も

　長野県内を中心に北陸、関東にも顧客を抱え、海外でも庭園の監修を行う北川さん。石や草木などを巧みに扱い、和や洋のテイストを描き出していく感性の原点は少年時代です。

　京都で生まれ、アメリカに住む叔母の元、カリフォルニア、ハワイ、京都、東京などを行き来して育ち、ヨーロッパを旅したことも。庭づくりに出会ったのは20歳の時、カリフォルニア州サンタモニカでした。
　「たまたま日本人の庭師さんに頼まれて造園を手伝ったんです。別れ際、『日本に来たら寄りなさい』とメモをくれた人が後の師匠です」

　北川さんは書かれていた京都の住所を訪ね、老舗造園屋で、住み込みで働くことに。
　「露地といって、茶室に付随する庭に土塀を作るため左官屋に、石を削って手水鉢を作るために石屋に修業に出されました。苦労もしましたが、幅広く勉強させてもらい有り難いですね」

　町屋の坪庭に見られるように、京都は住居の奥に庭があることが多く、小路を通って石や植木を運ぶための道具を制作。庭の形状に合わせ、数年かけて樹木を根回しすることもありました。また奈良・和歌山の神社仏閣では、永年の樹齢を刻んだ大木の手入れに携わりました。

　「どんな依頼でも、私たちがなすべきことは段取りを考え、創意工夫で実現すること。先人がそうして空間の形式美を築き上げてきたと思うと、オーダーに対して『できません』は言いたくないですよね」

　ある料亭では、昔ながらの庭師衣装で剪定する姿を、食事中の来客に披露したこともあるそうです。

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