PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

家はただの空間に非ず、命を育む場所である!

命を育む健康住宅だけをつくり続ける建築のプロ

高橋龍次

高橋龍次 たかはしりゅうじ
高橋龍次 たかはしりゅうじ

#chapter1

命を軽視した家づくりはしたくないから――

 「うわぁ!なんでこんなにいい空気なの?」思わず深呼吸をしてしまうほど気持ちのよい空間が、バリア・フリー工房の事務所です。取材の日は雨だったにもかかわらずジメジメ感なし、暑すぎず寒すぎず“快適”とはまさにこのこと。それもそのはず、バリア・フリー工房を主宰する建築士・高橋龍次さんは“子どもたちのため”を心の底から考え、家づくりをしている方です。だから住空間に新建材は使いません。自然の摂理にかなった本当の無垢材を選びます。素材も地産地消を心がけています。設計するのは住めば住むほど体と心がよろこぶ家です。世の中の主流とは違う家づくりを、強い志と使命感で進めているのです。

 もともと住宅メーカに勤めていた高橋さんは、ご自身の近しい人の体調の異変は、もしかして新建材をふんだんに使った新築の家に住んでいたことが理由かもしれないとある日気づいたそうです。それから現代の建築について、リサーチを重ねるとさまざまなことがわかってきたといいます。「昭和50年から5年間の国の政策(ハウス55計画)で“工業化住宅(プレハブ住宅)”ができてきました。そこでは住宅の工業化にあたり、化学物質、保存料、接着剤、シンナーが使われていました。しばらくして今までなかった新しい病気、アレルギー性鼻炎、花粉症、化学物質過敏症などがうまれてきたのです」

 知ってしまった以上、もうこれ以上ここで働くことはできないと考えて退社し、バリア・フリー工房を立ち上げて今年で13年。「こんな家が欲しい、ではなくて、こんな暮らしがしたいと考えている方と、一緒に家づくりをしています。こんな家が欲しい、ですと家を手に入れてそこで終わりなんです。でもどんな暮らしをしたいか、その暮らしをするための家はどんなものなのか、と考えた家づくりはそこからがスタートになるんですよね」

#chapter2

呼吸をする家を叶える地産地消の素材たち

 高橋さんがこだわるのは、考え方はもちろん、素材選びに大きな特徴が。「最初は無垢材ならなんでもいいと思っていました。でも普通の木材は80~120度の高温で蒸気乾燥させたもの。つまり木の細胞は死んでしまっているわけです」。バリア・フリー工房で使う木材は、日南市に生えている飫肥杉を38度の低温で3週間熟成乾燥させた“音響熟成木材”。音響と名前のごとく、なんとバッハの曲を聴きながら乾燥された木材だそうです。

 「低温で乾燥させているから、細胞は壊れずに生きています。そうすると家のなかで木の命、人の命が育みあって暮らしていけます」と高橋さん。さらに「杉の木には、発酵を促すために麹菌を助ける物質が多く含まれていることが、九州大学の研究で明らかになっています」と高橋さん。つまり生きた杉の木の家で暮らすことは、免疫力をあげていってくれることになります。

 「ここの壁はもともと珪藻土が塗ってあったんです。そこにあとからこの漆喰を重ねて塗ったら、びっくりするくらい白から真っ黄色の壁になって、しばらくしたら白く戻りました」と話してくれたのは、事務所の壁に塗られた“幻の漆喰”について。普通の漆喰や珪藻土だと吸湿性能はあるものの、分解まではできないのだそうです。ところが幻の漆喰は光熱触媒機能を備えた素材ゆえに、光が当たると空気中のゴミや有害物質を吸着・分解してくれます。珪藻土が吸着したままだった成分を、重ねた漆喰が吸着して黄色くなり、それを分解できたから再び白くなったわけです。

高橋龍次 たかはしりゅうじ

#chapter3

誰のための家なのか?を考えたい

 「家は家族の安心安全を守るもの。命を守るもの」。だから安心で安全なものしか使わないのが高橋さんの揺るぎない考え方です。ほかにも浮造り(ルビ:うづく)の床、清活畳などこだわりの素材のみを厳選しています。「一軒の木造住宅に使われる木材は80~100本。私たちと家を建てていくことは街に森が増えていくのと同じなんですよね。家自体が生きた木でできているわけですから」とにっこり。木材があった森では苗木が植えられ、新しい命が育まれていきます。

 例えば、庭は家の中から見たときに美しいように作る。花を愛でる木、実なる木を植える。庭づくりは完成させずに引き渡しする。子ども部屋はつくらず、ファミリールームをつくる。いずれも“どんな暮らしをしたいか”を大切にする高橋さんらしい思いやり。どんな子育てをしていきたいか、子どもが巣立ったあとはどんな生活をしたいかなど暮らし方がベースになると、大切なことが見えてくるようです。

 高橋さんの名刺に書かれた“健体康心”の文字。「家というのはただの空間ではなく、暮らしをする場であり命を育んでいく場なんですよね」。今日も事務所では、美しく変化した音響熟成木材のテーブルを挟んで(写真は新しい木材と10年ものの木材)、心身ともに健康で、次世代の子どもたちに堂々と残していける家を笑顔で考える家族と高橋さんの姿があります。

(取材年月:2015年5月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

高橋龍次

命を育む健康住宅だけをつくり続ける建築のプロ

高橋龍次プロ

建築家

有限会社 バリア・フリー工房

どう暮らしていきたいか?をともに考え、家族がそこで命を育んでいくことを重視した家づくりです。安心安全で命を守るために、内装に新建材は一切使用しません。自然の摂理に適った無垢材などを厳選して使用します。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ宮崎に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、またはテレビ宮崎が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO