ツールに使われる人、ツールを使いこなす人

補助金を申請しようと思って、書類を作るために参考書類を商工会に請求したんです。
その参考書類の、事業計画が美容室を例にしたものだったんですが……これが、すごかった。
「プロのコンサルタントが書いた?」と思うレベル。
AIを駆使して作ったんだろうか。
でも「参考にしてください」って出されたら、このレベルで作らないといけないのか……って、なりますよね。
それから私は割と途方に暮れ思考停止。
そっとファイルを閉じ、盛大に現実逃避。
楽になると思っていた時期が、私にもありました。
AIが世の中に広まってきたとき、「これで作業が楽になる!」と期待した人は多かったと思います。もちろん私もそのひとり。
実際、AIはすごい。文章を書くのも、情報を整理するのも、たたき台を作るのも、以前に比べたら格段に速くなりました。そういう恩恵はずっと感じてきました。
でも今回、ちょっと違う側面を肌で感じたんです。
「AIが普及することで、求められる水準そのものが上がっていく」という現実をリアルに実感した気がして。
たとえば今回のような補助金申請書類のクオリティー。
数年前に採択された時の補助金の参考例はもっとシンプルだった。
「がんばれば個人でも書けるよね」という水準だった。
でも今は参考例そのものが高度になってしまって、それが「普通のレベル」になっている。
道具が良くなったのに、ゴールが遠くなった。
なんかずるくないですか。
でも、これって今にはじまったことじゃない。
よく考えたら、これって別に新しい話じゃないんですよね。
ワープロが普及したら「きれいな文書が当たり前」になって、手書き時代より求められる水準が上がった。
車が普及したら「遠くまで行けて当たり前」になって、移動の前提そのものが変わった。
インターネットが広まったら「すぐ調べられて当たり前」になって、「知らなかった」が言い訳にならなくなった。
技術が進化するたびに、世の中は便利になってきた。
でも同時に、「それを使えること」が当たり前の前提になっていった。
その繰り返しなんですよね。
AIもきっと、同じ流れの中にある。
それ自体は、ごく自然なことなんだと思います。
「これまでと同じやり方」だと、大変なことになる。
ただ、ひとつ気をつけたいことがあって。
過去の技術革新と比べても、AIの普及と進化スピードはとにかく速い。
ワープロや車は、社会に浸透するまでに何十年もかかっています。
でもAIは、ここ数年で別次元の話になってきた。
つまり、「なんとなく様子を見てから対応しよう」という猶予が、あまりない。
昔ながらのやり方にこだわって、「AIなんて自分には関係ない」なんて距離を置いていると、気づいたときには周りとの差がずいぶん開いていた……ということになりかねません。
「AI使えばすぐできるよね?」という前提で話が進む場面は、これからどんどん増えていくと思います。
そのとき、「私はAI使わない派なので……」は、なかなか通りにくい時代になってくる。
じゃあ、どうすればいいの?
難しく考えなくていいと思っていて。
AIを完璧に使いこなす必要はないし、全部の機能を覚える必要もない。
ただ、「どんなことができるのか」を知っておくこと、そして「試してみる」という習慣を持つことが、まず大事なんじゃないかと思っています。
道具は、使い続けるうちに上手くなっていくものです。
肝心なのは、道具に使われるんじゃなくて、道具を使う側でいること。そのためにも、まず触れてみることが、一番の近道だと思っています。
補助金の書類と格闘しながら……いや、格闘する前に逃げながら、そんなことをしみじみ考えた出来事でした。
ちなみにこの記事、その現実逃避中に書きました。
さて。逃げ続けるわけにもいかないので、そろそろ書類の続きをやります。



