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内部に潜む可能性を信じる

菊地茂

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 本日は午前中、行政書士会関係の打合せに出席して、午後は建設業許可申請のご相談と、「イタリア精神保健について学ぶ会」でお話をいたします。

 今日は、渡辺和子先生の言葉のご紹介です。

 アメリカでカウンセリングの講義を取っていた頃、非指示的と呼ばれるカウンセリングを考え出した、カール・ロジャース博士の姿に接する機会がありました。
 博士は、相談に訪れる人の内部に潜む可能性を信じた人でした。一人ひとりの内部には、目に見えなくても、その人が成熟に向かって前進する力と傾向性が、必ず存在するということ。その潜在する可能性は、適切な心理的風土を与えられる時、現実性へ一歩。踏み出すことができるのだと信じた人でした。
 この適切な心理的風土とは、「許容の風土」であり、したがってカウンセラーは、相談者の言葉に耳を傾けこそすれ、「あなたは間違っています」とか、「こうしなさい」といった批判、指示を一切しないのです。
 自分の存在そのものが受け入れられたと知る時、相談者は恐れ気なく語り始めます。熱心に聴くロジャース博士の態度に勇気づけられて話しているうちに、心の中は徐々に整理され始め、相談者は、抱えている問題を比較的冷静に見つめることができるようになり、自力で解決への道を歩み始めるのです。
 四十年以上、多くの学生と接する機会を持つことになる私に、ロジャース博士のカウンセリングの姿勢、相手の可能性への信頼と尊敬、聴く態度は、得難い教訓になりました。
 目には見えなくても、そして時には信じがたくても、一人ひとりの中に、その人の成熟に向かって前進する力と傾向性があることを信じることは、教育の根本といえるでしょう。人間の可能性を引きだすのに必要な許容の風土をかもし出し、相手をまず、ありのまま受け入れる時、その人が内に秘めている可能性が開花することを教えられた私は、幸せ者でした。

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