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主は暗やみの中に住む

菊地茂

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 今日は、前島誠先生のことばのご紹介です。

 主は自ら濃き雲の中に住まおうと言われた。  [列王記上・8章12]
 
 今を去る三千年前の昔、ソロモン王はエルサレムに壮麗な神殿を完成させます。王は契約の箱に十戒の二枚の板を収め、これを至聖所の中に安置します。この落成式に、主の述べた祝辞が右の引用です。
 「濃き雲」とあるのは、「暗やみ」を意味し、ほかの箇所(申命記・4章11、詩編・18編10など)にもしなしば出る表現です。主は光の中ではなく、「暗やみの中に住む」というのです。
 至聖所には明かりと窓はなく、中は本当の真っ暗やみでした。ユダヤの大祭司はこの暗やみの中で神に呼びかけ、やみの中に神の臨在を感じたのでした。
 活きているということは、やみに触れることかもしれません。ある日突如として、やみの中に放置された自分を感じることもあるでしょう。どこにも出口が見つからない、そう思って押しつぶされそうになるときもあるでしょう。しかしその時こそ、人は神に触れているのです。
 「やみに住む神」、それはやみの中にだけ語りかけてくる神なのです。やみに立たされたとき、人は初めて神の声を聞くのです。そしてやみの中に一条の光りを見ることができるのです。

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