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変動金利から固定金利への変更策で住宅ローンはリスクヘッジされる?

栗山琢磨

栗山琢磨

テーマ:資金計画・住宅ローン

住宅ローンは住宅購入の際、多くの方に不可欠の資金調達方法です。
また、多くの方が頭を悩ませるテーマでもあります。
特に悩みのタネは毎月の返済額。
但し、その返済額は住宅ローン借入額だけでは無く、金利タイプよって差があることは皆さんご存知ですね。
変動金利と固定金利の選択による違いです。
ひとくちに住宅ローンといっても変動金利と固定金利では借り入れ後の適用金利の仕組みが異なり、その違いは返済額は勿論ですがリスクにも及びます。
皆さんはこの変動金利と固定金利の住宅ローン選びどうしてますか?
当座の返済額や営業マンの勧めだけで安易に選んではいませんか?
「変動金利、金利上昇したら固定に変更しよう」
こんな考えの方も居ることでしょう。
でも、その変更時の手順は大丈夫ですか?
リスクヘッジの備えは充分ですか?
今回はよく聞く「変動金利から固定金利に変更は可能か?」を含めて住宅ローン金利変動のリスクヘッジについて考えてみましょう。


・変動金利とは?

まず最初に、変動金利や固定金利といっても、その違いを充分に理解していない方も居るかもしれませんので、両者の違いについておさらいします。
まずは変動金利から始めましょう。
変動金利はその名称の通り、住宅ローン返済の適用金利が、その基準としている金利水準が変化した場合にそれに合わせて変動する金利タイプです。
変動金利が基準としている金利は、銀行が優良企業に対する融資の適用金利である短期プライムレートです。
更に短期プライムレートは日本銀行が定める政策金利の影響を受けます。
これらの金利水準が上昇した場合にはそれに連動され住宅ローンの適用金利は上がり、下落すれば適用金利も下がるという仕組みです。
したがって住宅購入時に目論んだ毎月の住宅ローン返済額はその後確定的なものでは無く、後々変わる可能性を含みます。
下がる分には問題無いのでしょうが、ゼロ金利の昨今では下がる余地は殆ど残されていません。
こうなると金利上昇時に返済額も上がる事がリスク要素とされるのです。
反面、固定金利と比較した場合に、変動金利の適用水準は概ね1%程度低利となっており、これが変動金利のメリットとして広く認知されております。
また、変動金利の中には当初の5年間、10年間など一定期間限定で、次に説明する固定金利の機能を設けた「固定期間付き変動金利」もラインナップに揃えられているケースが一般的です。
この固定期間付き変動金利に対し、前述の純粋な変動金利タイプを俗に「フル変動金利」という言い方をする場合もあります。

・固定金利とは?

次に固定金利です。
これは先程の変動金利とは反対に住宅ローン返済の適用金利は、借り入れ開始時に適用されたものが返済終了まで適用される仕組みの住宅ローンです。
その金利は基準となる日本国10年物国債(長期金利とも呼ばれる)の借り入れ開始時点の水準に従い、その後の適用金利が設定されます。
したがいまして、住宅ローンの返済期間中に市中の金利情勢が上昇したとしても、適用金利は当初設定された値から上がる事は無く、逆もまたしかりです。
すなわち、後々の返済額変動リスクはありませんので、将来的な家計支出が増加する可能性への懸念に対するリスクヘッジが成されているのはメリットと言えるでしょう。
しかしながら、適用される金利水準は変動金利の項で触れた通りに一般的には変動金利を上回りますので、住宅購入直後の毎月返済額は両者を比較した場合に固定金利の方が高額となります。

・住宅ローンは変動金利と固定金利どちらが選ばれている?


それではこの変動金利と固定金利の住宅ローン、住宅購入に合わせて多く選ばれているのはどちらの金利タイプでしょうか?
国土交通省が各金融機関に対するヒアリングを実施し調査発表をしている「民間住宅ローンの実態に関する調査」からこれの割合を知ることが出来ます。
最新の令和3年の実績値をみますと、なんと住宅ローン新規貸出額の約76%を、いわゆる「フル変動金利」の金利タイプで占めるという結果です。
圧倒的割合ですね。
この結果のみをもってすれば変動と固定どちらを選ぶべきか、世の中の答えは明らかな印象です。
でも、少々奇異にも思えませんか?
というのも、一般に多くの方は確かにお得なものに魅力を感じますが、反対にリスクを避けようという心理も働きます。
ましてや人生の一大事業ともいえる住宅購入です。
リスク回避には敏感になるからこそ、誰もが慎重に家づくりを進めるのではないでしょうか。
そうした背景を考えると、多くの方がリスクとして捉えるであろう返済額が上がる可能性のある変動金利を選択する人が、一方的であるということは釣り合いが取れていないようにも思えます。
もう少しその金利タイプ選択のプロセスを探ってみても良いのではないでしょうか?
次はその背景にスポットを当ててみたいと思います。

・変動金利を選ぶプロセスは?


住宅購入計画で一番の関心事といえば資金的な課題を上げる方は少なく無いはずです。
寧ろ大勢でしょう。

  • 果たして自分の経済力で家を買う事が出来るのか?
  • 買えるのならば一体予算はどの位まで可能なのか?
  • その時の住宅ローン返済額はいくらになるのか?
  • そもそも住宅購入に掛かる総額はいくらなのか?

こうした事柄は、住宅購入の検討過程で誰もが知りたい情報なのではないでしょうか。
では、これら情報はどこで入手出来ますか?
一方通行のネット情報では個々の事情に合わせた局所的答えは見当たらないでしょう。
周囲の住宅購入経験者から情報収集といっても専門的話題など期待出来ません。
そんな時、多くの方がより所とするのは不動産会社やハウスメーカーの営業マンの存在ではないでしょうか。
住宅販売を専門としている彼らへの相談であれば、それらの事項にも精通しているはず。
そこには住宅ローン返済額と借入額に関する試算も当然含まれます。
例えば住宅ローン返済額が毎月10万円としたならば、どのくらいの借り入れが可能であるかの相談です。
こうした自ら固有の情報を知る中で、予算のイメージもリアルになっていく事でしょう。
計画に具体性を持たせるには欠かせない手順として位置付けられているのではないでしょうか。
しかしながら、実はその一連のやり取りに変動金利の選択が大勢を占める要因が伺えます。
そのロジックについて説明しましょう。

・営業マンが変動金利を勧めるのは何故?

住宅ローンの返済額に対する借入可能額を試算するには3つの要素が必要です。

  • 返済額
  • 返済期間
  • 金利

この3つが揃ってはじめて住宅ローンのシミュレーションが成り立ちます。
つまり、返済額のみを設定しても他の2つの値次第では全く違う試算結果となってしまいます。
それでは実際の相談実務ではどの様に扱われているのでしょうか?
実は、そこで算出に使われる金利条件は、殆どのケースで変動金利が使われているのが現状です。
更に付け加えると、変動金利を前提とした試算は営業マン単独で任意に運用され、相談者との間で変動金利、固定金利に対する議論や説明はそもそも殆ど取り上げられる事は無いようです。
このあたりは思い当たりのある方もいるのではないでしょうか?
つまり彼らのオススメは、ほぼ異口同音に変動金利なのです。
では何故営業マン達は変動金利を勧めるのか?
理由は明らか、変動金利の住宅ローンを前提にした方が家を売り易いからです。
なぜか?
同じ借入額であれば固定金利よりも変動金利の方が低利な分毎月の返済額を低く示せ、皆さんから予算案についての同意を得やすいと考えます。
同じ返済額であれば固定金利よりも変動金利の方が借入額は大きくなり、つまりは予算額アップにつながるので、これも営業的には都合が良い話です。
こうしてどのハウスメーカー、どの営業マンへの相談でも同じ様な手順で、低利の変動金利を前提とした試算で住宅購入計画が始まり予算案が組まれていきます。
仮に事後のタイミングで金利上昇のリスクが頭をよぎる瞬間があったとしても、計画中途での固定金利への試算変更は簡単ではありません。
なぜならそうした変更を加えれば、当初の予算案よりも返済額は増、もしくは借入可能額の減と表面的には厳しく変容し、高いハードルとなるからです。

・金利上昇で返済額はどうなる?


ところで金利が上昇すれば住宅ローン返済額は当然上がる事になりますが、実際に増える額はどのくらいなのでしょうか?
借入額4000万円/35年返済/金利0.8%の場合で計算してみます。
月々返済額109.224円
これが当初の返済額です。
仮に5年後に1%上昇し金利が1.8%になったとすると
月々返済額125.706円
毎月16.482円の増額です。
更にここから5年後同様に1%上がり金利2.8%になったとすると
月々返済額140.787円
毎月31.563円が当初返済額よりも増加します。
もし、金利上昇の可能性があるならば、あなたの想定する上がり幅はどの位でしょうか?
上記の様にその想定値をシミュレーションした返済額でも、尚も自らの返済負担能力に余力があるならば、金利上昇リスクへの対応は可能で有ると考えられます。
また、そもそも金利が上がる事自体に懐疑的な方もいる事でしょう。

・変動金利の金利は上がる?

はたして金利が上がる可能性は有るのでしょうか?
金利が上がりさえしなければ、このリスク心配無しに低利の変動金利一択で進められます。
これを後押しする見解が、変動金利を勧める立場の営業マンから投げ掛けられる事は珍しくありません。
金利上昇の可能性に否定的意見です。

  • もう20年以上もゼロ金利が続いているのだから今後も続く
  • もし金利が上がれば返済不能者が続出するから上げられない
  • 日銀が金融緩和策を今後も続けると言っている
  • 皆が変動金利を借りているのだから大丈夫だ

長期展望のメカニカルな論理よりは、希望的観測を根拠とした見解が主流の様に思えます。
一方で反対の向きを示す見方も世の中には当然あります。
金利上昇の可能性に肯定的意見です。

  • 金融緩和策は永続的には続かず、終了時に金利は上がる
  • 金利は金融経済環境に連れて変化するもの。上昇の可能性はある
  • デフレがインフレ経済になれば金利は上がる。昨今の欧米が証拠

こうなるとどちらの「読み」が正しいかの議論に向かいがちですが、専門書を読み漁るなどしてその考察をいくら深めても金利上昇可能性についての有無を客観的に結論づける事は恐らく不可能でしょう、
だって専門家筋ですら決着をみていないのですから‥‥
であるならば、「変動金利採用の可否判断」を「金利上昇の可能性」とリンクさせても的確な答えなど導きようがありません。
金利上昇の可能性が完全に否定できないのであれば、そうした事態が起きた際に無防備なのは余りに不安。
変動金利採用時のリスクヘッジ策を十分に考案する事が合理的なのではないでしょうか。

・金利が上がったら固定金利に変更すれば安心?


営業マンが変動金利を勧める際、金利上昇に対するリスクヘッジ策の代表的なものとして、
「金利が上がったら固定金利に変更する」
という話法がよく登場します。
つまり、万が一金利が上がる局面になったとしても、その時点で変動金利から固定金利に変更すれば、金利上昇までの低金利のメリット享受と、上昇後のブレーキ機能が果たせるのでリスクヘッジ策になるという論法です。
なるほど説得力があるロジックにも聞こえます。
実際にこれを変動金利のリスクヘッジ策として当て込んでいる方も大勢いる事でしょう。
でも・・・・・
本当にそう上手くいくのでしょうか?
金利上昇局面を想定してシミュレーションしてみましょう。
前の項で例示した借入額4000万円/35年返済/変動金利0.8%で開始した住宅ローンが5年後に1%金利上昇したと仮定したケースを使います。
当初返済額と、金利1%上昇時の返済額は以下の通りでした。
月々返済額109.224円 → 月々返済額125.706円
これは大変と、1%上昇を機に変動金利から固定金利に借り替えようという事です。
それでは借り換え後の返済額が気になりますので計算してみましょう。
まずは変更時点での固定金利の水準はどの位になっているでしょうか?
この際、変動金利と固定金利の金利差は冒頭にも触れた通り、概ね1%程度は見込まねばなりません。
この1%の金利差が変動金利のメリットにあたる値でしたね。
すなわち借り換えに動く時点での金利が当初よりも1%上がっているならば、借り換え時点での固定金利の水準は2.8%程度になっていると想定されます。
それでは5年後、固定金利2.8%に変更後の返済額はどうなるでしょう?
月々返済額143.598円
なんと34.374円のアップです。
それだけではありません。
この場合の総返済額を当初から固定金利でスタートした場合と比較してみると

・当初から固定金利利用 :5394万円
・変動から固定金利に変更:5824万円

この様に総返済額も大幅に増額です。
こうなると果たして想定したリスクを
「回避した」と言えるのか?
「巻き込まれた」と見るべきか?
リスクヘッジの機能として賛否が分かれる結果ともいえそうです。

・変動金利をリスクヘッジする方法は?


「金利が上がったら固定に切り替え」論、への皆さんの評価はいかがでしょうか?
また、これとは別に変動金利のリスクヘッジ機能として俗に「5年ルール」「125%ルール」と言われるものがありますのでこれにも触れておきます。
先程、金利上昇時の返済額の変化について例示しましたが、こうした場合に返済額の急激な増加を緩和する機能として多くの金融機関が制度化しているものです。
具体的には金利上昇時から5年間、もしくは125%返済額が増加した場合に、該当する範囲で返済を「猶予」する制度です。
この制度がある金融機関からの借入であれば、これもリスクヘッジとして機能するから安心であるとのアナウンスを耳にした方もいるでしょう。
しかし、この制度を誤って解釈しているケースが散見されるようです。
誤りとは、これは返済増加部分の返済「猶予」する制度であって「免除」するものでは無い点にあります。
実際にはその部分を払わなくて良いのではなく、一定期間(一般的には支払い終了時迄)猶予するという仕組みにすぎません。
本来負担すべきだった「猶予」部分は元本の未消化となり、返済終了時に積み残されるのです。
つまり、実質的にはリスクの先送りとも言える点には注意しなければいけません。

さて、ここまで変動金利の金利上昇に伴う返済額増加のリスクについて論じてまいりました。
とかく実際のマイホーム計画の過程で余り深い検討がなされる事なく、いくつかのおなじみな見解に添って決着しがちなこのテーマですが、その可能性、影響、対策と順を追って整理してみるとどうでしょう。
もし安全性の確証がないのであれば、少なからずリスクヘッジについての方策を真剣に備えておく事が合理的ではないでしょうか。
それではどんな方法があるか?
実は最も単純な方法、これが固定金利の住宅ローンです。
変動金利と固定金利の比較をする場合、視点が損得部分に向けられがちですが、固定金利の意義は今回のテーマのリスクヘッジにあります。
日常の生活の中で聞こえてくる「お得な話」でもリスクとリターンを見比べ可否判断を下すでしょう。
住宅ローンとて同じです。
低金利のリターンを優先させれば変動金利。
返済増加のリスク回避を優先させれば固定金利。
両者の特性と皆さんの志向に合う金利タイプはどちらでしょうか。


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栗山琢磨
専門家

栗山琢磨(住宅購入・家計設計コンサルタント)

パートナーズライフプランニング

ハウスメーカーでの経験とファイナンシャル・プランナーの知見から、住宅購入をサポート。将来を見通した資金計画から、土地探し、間取り図作成、住宅会社選びまでトータルで相談に応じ家づくりの満足度を高めます。

栗山琢磨プロは河北新報社が厳正なる審査をした登録専門家です

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