変動金利から固定金利への変更策で住宅ローンはリスクヘッジされる?
住宅ローンに対する不安の相談は住宅コンサルタントの私にとって、一番多く投げかけられるマイホーム計画の悩みといってよいでしょう。
返済やら何やらその不安から夜も眠れないほどに悩みを深くする方も珍しくは無いようです。
本来ならマイホーム計画は夢膨らむ楽しさも控えているのに、不安が先立ち夜も眠れないほどというのでは気の毒です。
なんとかして抱えている住宅ローンへの不安を解消したいですね。
また、資金計画はマイホーム計画の基礎となるテーマです。
その要ともなる住宅ローンに不安を抱えてしまっていてはマイホーム計画全体も不安定なものとなりかねませんし、そこが解消されず不安を残した状態で土地探しや間取りの事を考えても、いつも住宅ローンの存在が頭にチラついていては集中してハウスメーカーへの相談にも取り組めません。
悩みをキレイに解消して検討を進めるべきなのはいうまでもないでしょう。
今回は多くの方がマイホーム購入に不可欠な住宅ローンへの不安を感じている皆さんに、不安解消に向けた手掛かりとなるお話をしたいと思います。
1. 住宅ローンが眠れないほど不安なのはなぜ?どうすれば解消?
先にも触れた通り、私への住宅購入相談でも住宅ローン関連の相談は多く寄せられるのですが、これは何も私への相談に限らず、マイホーム計画を立てている方に共通した不安であり悩みと言えるでしょう。
しかしながら、時にその不安が解消されないまま増幅し、夜も眠れないほどの深い悩みとなったのでは大変です。
こうした住宅ローンへの不安を抱えている方に対し何に不安を感じているのかを尋ねると、たくさんの不安材料が吐露されるものです。
住宅ローン返済に関する不安は勿論ですが、返済以外にも将来に不測の事態が起きた場合の対処、金融機関ごとの融資条件の違い、そもそも住宅ローンの重荷を背負うその先の人生への不安といった様々な悩みが同時に積み重なっている様子からも、眠れないほどの状態というのは決して大袈裟ではなさそうです。
しかしながらそんな相談に冷静に話を伺えば、ひとつひとつの不安に対し策を講じても解決出来ず悩んでいるというよりは、住宅ローンを借りる事で起きるかもしれないネガティブな出来事があれこれ同時に頭に浮かび整理がつかず、一団の状態で苦しんでいる印象を受ける事は少なくありません。
例えるなら「何が不安か?」との問いに「何もかも不安」という状態とでも言えるでしょうか。
本来別々のものである個々の住宅ローン不安要素の元がひと塊りのままでは不安解消の手も打てません。
まずは「住宅ローンの不安要素は何か」を整理し、そこで浮かび上がったものに「住宅ローン不安の解消策」を考える手順で話を進めていきたいと思います。
2. 住宅ローンの不安要素は何?
まずはゴチャゴチャになっているであろう個々の住宅ローンの不安要素を解きほぐさねばなりません。
そこから始めましょう。
とは言いながらも数々の不安や悩みを場当たり的に取り上げても途方もない話に収拾がつかなくなってしまいそうです。
マイホーム計画に取り組む皆さんが住宅ローンの不安事としてよくあげられるであろう事柄に絞って要因ごとに分類を試み、不安へと陥ったプロセスを振り返ってみましょう
① 返済に関わるものの不安
住宅ローン返済に関連する不安は最も悩みの中心を占める存在でしょう。
しかしその全てを「本当に返済出来るだろうか?」といった言葉で一括りには出来ない様に思えます。
抱える住宅ローン返済への不安はもう少し複雑なもので、そもそもの返済開始時点での返済額の妥当性と、将来的な返済への不安では端を発する経緯が異なるのではないでしょうか。
a. 返済開始時点の返済額への不安
毎月の返済額とその場合の借入れ可能額に妥当なラインの目処をつけ予算案を立てたはずなのに、その返済額自体に不安を感じる事もある様です。
通常、始めから重い負荷を掛けた返済額を想定する事は少なく、むしろ自制的な額に落ち着くものです。
にもかかわらず何に不安を感じているのか?そもそも立てた返済計画が不安なのであれば、悩む必要も無くもっと低く不安の無い額に抑えれば解決しそうにも思えます。
しかし、そうもいかない悩みの事情が背景としてある様です。
立てた予算額に対して検討対象の購入物件価格がオーバーしている状態です。
希望する物件価格が予算額オーバーな場合、尚も購入に前向きであれば予算を引き上げねばなりません。
当然ながら住宅ローン借入額を加算すれば、同時に返済額の負担も当初予定より増す事になります。
こうした希望物件に対して負担すべき返済額に不安を感じる構図が背景となっている方は多いのではないでしょうか。
b.将来的な返済に対する不安
「もし〜したらどうしよう」「〜が起きたら返済出来ないのではないか」
先のケースとは異なり、住宅ローン返済初頭からの負担に自信がないのでは無く、将来的に返済の負担に支障をきたす出来事への不安は「たら」「れば」という不確実さへの限定付きの不安と考えられます。
しかし、ここで想定する「何か」はそれが起きる可能性において全て同列ではないはずです。
ア. 予見される課題への不安
子供の将来的教育資金準備、老後に向けた貯蓄、固定資産税等維持費負担といった様に、住宅購入後から将来に向けて起きるであろう事が既に予見される家計上の課題に対し、その時点で住宅ローン返済と両立が可能かといった不安。
イ.予見不能な事態への不安
就業環境の悪化、健康上の問題といった様に予見不能な出来事(リスク)が起きた時に、家計環境が悪化し住宅ローンの返済計画に支障をきたすのではないかという不安。
② 借入条件に関わる課題
一方で直接的な返済額と家計収支に関わる不安だけでは無く住宅ローンの借入条件による変化が悩みを生じさせる事もあるでしょう。
どの金融機関を選ぶか、どの様な住宅ローン商品を選ぶか、果たしてそれらが計画にどの様に影響するかかといった借入条件に関わる不安や悩みがそれにあたり、以下の様なものがよく相談で上がります。
c.固定金利、変動金利選択と返済期間の迷い
固定金利と変動金利の選択において、変動金利の方が当初の返済額は低いが金利上昇時を考えると心配なものの、固定金利では当初から返済額が重くなるのが問題。
また、35年返済を勧められたが長期間すぎないかといった不安。
d.金融機関毎の融資条件の迷い
どの金融機関を利用するかにより金利、諸費用等の融資条件は一律では無い上に、昨今は生命保険機能が組み込まれた住宅ローン商品も存在し、複雑化した仕組みに整理のポイントがつかめない。
3. 住宅ローンの不安解消策
一団となり悶々としていた住宅ローンへの不安の姿が顕在化してきたでしょうか?
次はその解消に向かいましょう。
「住宅ローンが不安で眠れない」元となる個々の不安要素への対応策を考えます。
不安解消策の方向性と要点を簡潔にまとめていきたいと思います。
① 返済に関わる解消策
返済に対する不安も前項で分類した以下の2つに分けて解消策を整理いたします。
a. 返済開始時点の返済額設定
住宅ローン開始時点から既に返済額に不安を感じるのであれば成り行き任せや感覚任せの判断は避けるべきなのは言うまでもありません。
手掛かりとして過去の家計収支の履歴に着目しましょう。
例えば家計を現時点から1年前に遡って収入と支出を検証し、どの位の支出額迄であれば収入とバランスが保てるかは預金残高との兼ね合いで概ねの範囲は把握できるはずです。
何か特別な収支事情があればそれを差し引いた上で、新たな負担となる住宅ローン返済額を家計支出に加えた状態で収支バランスを確認します。
それでも尚危ういのであれば不安を抱えたまま悩んでいても事態は好転しません。
釣り合いの取れる妥当な返済額に合わせ予算案を再考し、検討対象の物件もその予算に合致するものに対象を切り替えて再度検討を始めた方が合理的と思えます。
b.将来的な返済に対する不安の解消
現状は顕在化していない将来の経済環境変化への不安解消策はどうでしょうか?
ア. 予見可能な見通しへの対処
多くの方々に共通する予見可能な課題への対処は、その先ライフプラン上で考えられる課題の発見から始めます。
その上で住宅購入を機にこれら課題への対策も以下の要領で実施します。
1. 可能性がある課題の想定、2.経済的影響と時期、3. 課題の解消策、4.解消策のコスト
つまり何が考えられ、いつ頃どんな影響を受けそうかを想定し、どんな対策をいくらの負担で備えるかを準備するという事です。
こうした手順で対策を施せば、将来に向けたライフプラン上の課題も解決されることは勿論、解消策のコストも含めて家計支出を計算すれば、住宅ローン返済可能額の精度はより増してくるでしょう。
イ.予見不能な事態
姿が見えない事柄への不安は考えても考えても結論に至らず、正に眠れないほどの悩める存在になり得ます。
「もし、何かあったら…」という言葉に置き換えられ立ちはだかるのですが、「何か」という抽象的な状態で放置してしまっては解決もままなりません。
「就業環境」「健康状態」「社会環境」といった様に不安視するものの属性は様々ですが、全て上記のア.と同じ手順で解決が計れるのではないでしょうか。
但し、1. 可能性のある課題の想定に関しては、不安を感じている事態のリスク度合いを公的な統計値を用いる等して選別し、必要な不安要素に絞って対策を講じれば効果的なはずです。
いたずらに姿の見えない不安に怯えたり目を背けるのでは無く、実態が不安に足らないものと対策を施すべきものを把握した上で、必要な課題にはア.同様に備え、解消策のコストを踏まえた家計支出から住宅ローン返済額を割り出せば安心が得られるのではないでしょうか。
② 借入条件に関わる課題の解消
次に借入条件に関する課題の解消策も考えましょう。
c.固定金利、変動金利選択と返済期間の迷い
固定金利と変動金利の選択は金利が上昇しない前提に立つならば変動金利で問題は無いのですがその推移が予測出来ない難しさが不安の本質です。
このリスクへの解決策が本来であれば固定金利であり、変動金利と固定金利を損得の尺度で比較する事は相応しくありません。
根拠を持って確実に将来の金利推移を予測することが不可能な上でこ不安が払拭出来無いのであれば、固定金利の選択が合理的と考えられます。
また、返済期間の設定は就業期間とのバランスが重要です。
定年退職後の老後期にまで住宅ローンの返済を継続する、もしくは退職金で完済というのはb.アで取り上げた将来の課題への対処にも反してしまいます。
定年退職予定年齢までの残余期間と住宅ローン返済期間を合致させればこの不安は解消されるはずです。
d.金融機関毎の融資条件の迷い
昨今は住宅ローン商品に生命保険機能が組み込まれたものを勧められても、① b. で触れた様な将来の不測事態発生への不安が未解消ではその必要性について、かえって悩みを深めるだけです。
先に挙げた予見不能な事態への対策と合わせ、リスクとして議論すべき対象か否かを見極め、住宅ローン商品に組み込む形での解決が合理的かを整理します。
次に金融機関ごとの金利、諸費用の条件差が返済額及ぼす影響ついては、頭の中だけで考えても答えが見えづらいはずです。
金融機関ごとの条件に合わせた返済額を試算し比較すると良いのではないでしょうか。
4. 住宅ローンの不安解消には相談先にも一工夫
時に眠れないほど不安を抱く事もある住宅ローンについての悩みの原因と解決策の導き方について考えて参りました。
頭の中でひと塊りの「住宅ローンの不安」としたままでは中々解消へは向かいません。
ひとつひとつの不安要素を解きほぐした上で個々の課題を解決していく道筋はここまで述べてきた通りです。
しかしながら独力でそれらの解決にあたるには知識面で不安を感じる方も多い事でしょう。
となれば、他者の知恵を借りた方が手堅いはずです。
誰か相談相手の力を借りるのです。
では誰に相談するのが最も相応しいのか?
友人、同僚、親類といった中で住宅購入経験のある身近な相談相手も思い付けば、ハウスメーカー営業マンや銀行相談窓口といった様に住宅ローンを扱い慣れている人達への相談というのも考えられます。
相談先の人選をするにあたって心得ておきたいのは「経験値に偏らない」「専門性を持つ」条件に適った相手であるか否かの見極めがポイントです。
いくら親身に相談に応じてくれても、経験談のみを元にした話に正確性、客観性は保障されません。
専門性を求めるべき点については申し上げる必要もないでしょう。
具体的な相談先としてはハウスメーカーや銀行といった属性では無く、ファイナンシャルプランニングの技能を持ち、且つ住宅ローン、住宅購入の実務知識に明るい人物が適切なのではないでしょうか。