森永卓郎さんの講演から考える。(2)

三浦孝広

三浦孝広

テーマ:時事の経済コラム

経済アナリストの森永卓郎さんの講演を聞きに行き、そこでの要点や私が感じたことや考えの続き。

歴史の教訓が示すもの

過去の日本の歴史を振り返ると、大きな地震の後、復興需要により数年間は景気は持ちこたえる、その後急速に経済は失速し、デフレや恐慌なる。
・1923年の関東大震災のときは、低迷ながら4年間は復興需要で支えるが、復興需要が切れる1927年に経済は失速し、体力のない銀行がバタバタと潰れ、緩やかなデフレになる。この重い閉塞感の中、政権交代した民政党の浜口内閣は、徹底した財政引き締めを実施し、激烈なデフレになり1929年に昭和恐慌になる。
・1995年の阪神大震災、2年間の集中復興により国土(インフラや街)は戻るが、その復興需要が切れる1997年に景気は失速する。しかし、当時の自民党の橋本総理は、消費税を5%に引き上げ、医療費の個人負担を引き上げ、特別減税の廃止、総額9兆円の国民負担を断行する。その結果その後の15年間のデフレが続く。
「復興需要が切れたとき、財政の引き締めは行ってはいけない」それが歴史の教訓なのです。

最悪の増税時期

東日本大震災から2年半が経ちました。復興予算が本年は5兆円ついていますが、来年は減少、再来年は激減します。そこにちょうどタイミングを併せるかのように消費税率の引き上げ(来年に8%に、再来年に10%)。一番最悪のタイミングでの引き上げ時期なのです。

アベノミクスで恐慌の危機は去った

民主党の野田(前)総理が消費税率引き上げを示したとき、安倍総理はこの時期がいかに悪いか解っていた。その証拠に、去年2月の衆議院総選挙の時、自民党の政策資料集には、「このタイミングで消費税率の引き上げを行ったら日本経済は失速する。だから、だからそれを防ぐために思い切った財政出動と大胆な金融緩和(後にアベノミクス)をやる。」と明記している。そして去年の12月にそれを行った。これにより恐慌の可能性はなくなったと思います。

増税により経済は、失速?バブル?

安倍総理は、消費税増税は行うようである。その保険として5兆円くらいの財政出動をおこなうようである。日銀の黒田総裁は、「消費税率を上げると景気は失速するので、それを防ぐために思い切った金融緩和を行う」と言っている。
つまり、来年の4月以降の経済状況は、急アクセルと急ブレーキの両方を思いっきり踏み込んだ状態。過去に経験のない経済政策なのでどちらが勝つか解らない。踏み方によっては、経済の失速の可能性やバブルの可能性もある。

私が感じたこと: なぜ過去の教訓を生かせないの?

この話を聞いて一番に感じたのが、「この国は過去の教訓を生かすことが出来ない」ということでした。もっと正しい言い方をすると「過去のことを総括することが出来ないから、過去の教訓を得られない」と感じました。近年のバブル発生・崩壊、消費税導入・引き上げ、15年間のデフレ、ゼロ金利政策、量的金融緩和と停止、でさえ総括できているとは思えない。官僚・行政はすべてが正しいと言うし、マスコミはすべて間違っていると言う。これでは、過去の総括が出来ない。それとも近年の事柄は、現時点で利害関係者が多くおり、その影響で総括が出来ないのだろうか?だとしたら歴史家の人が客観的に総括するのを待つしかないのかもしれない。だとしたら、過去から教訓に至れないし、教訓を生かせないのだろう。

私が感じたこと: 今、消費税を上げる必要あるの?

現時点で、アベノミクスで緩やかに景気は回復しているのに、急アクセルと急ブレーキを踏んでどうするの?政策に一貫性がないですよ。安倍首相はリフレ派でしょ。経済を良くしてから増税を行ってください。景気のマインドが変化してからまだ半年くらいしか経ってませんよ。全然、経済のパイが大きくなってませんよ。今ではなく、5年後くらいがちょうどいいのではないですか?
でも、民主党が無策のまま消費税率の引き上げをされるよりは、全然いいですけど。

(つづく)
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三浦孝広
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三浦孝広(宅地建物取引士)

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