いざなみ(小泉)景気とアベノミクス、実社会への影響は??(1)
前回のコラムでいざなみ(小泉)景気とアベノミクスの共通点から実社会への影響を見てきました。今回は、いざなみ景気とアベノミクスで異なる点から実社会の影響を考察したいと思います。
いざなみ景気は国内のデフレを誘導した??
いざなみ景気は、円安を誘導して消費が活発な欧州向けの輸出により景気を向上させた(組立工場としての中国を経由して欧州への輸出も含めて)。通常、輸出で儲けはユーロやドルで受け取る。この儲けを日本国内での給与支払いや経費支払、設備投資には、「ドル・ユーロ」を「円」に変える必要があり、そのため、銀行で「ユーロ・ドル」から「円」に換金する。(「ユーロ・ドル」を売って「円」を買う)
そうすると、国内に「円」が多くなるのでインフレの圧力になります。しかし当時の日銀は、不胎化と言って、国内の「円」を回収して(買って)、国内の「円」の量を一定にしてインフレ圧力をなくしました。
当時、「円キャリートレードを促進して海外向けにはお金の蛇口を開いていながら、国内には不胎化させてお金の蛇口を閉めるのは、金融政策として一貫性がない」との議論もありました。今振り返るとその当時の政府・日銀は、お金を貸してでも需要地としての欧州が必要であるが、国内の需要の促進はバブルの経験もあり、望んでいなかった。そのため、日本国内は景気が良いにも関わらず、デフレになっていました。
いざなみ景気とアベノミクスの異なる点:国内のお金の量
先の見たとおり、いざなみ景気は国内の通貨量を一定してデフレ下に置かれたままにしました。今回のアベノミクスでは、マネタリーベース(供給する通貨量=現金通貨+日銀当座預金)を2年で2倍にし2%のインフレの実現を公言しており、そこが大きく異なる点です。
実社会の影響:格差社会が解消し、実力主義の社会
デフレ化では既得権益者の利益が増加していく効果があることを、そして、インフレは既得権益を薄める効果があることを先のコラムで書きました。
デフレとインフレどちらが良いの?(1)
デフレとインフレどちらが良いの?(2)
デフレとインフレどちらが良いの?(3)
デフレの効果により、日本がデフレに陥った15年の間に世代間格差や正社員・非正規社員間格差、大企業・中小企業格差といった格差が生まれてきました。これがインフレになると、その逆の効果が生まれるので、インフレが長期間実現した場合、格差の解消が進んでいきます。
つまり、アベノミクスによって、過去の功績や地位より、現在の能力・努力による富の取得が大事になってきますので、実力主義的な側面が強くなると思います。
現在、いびつな形で不利益が弱者に向かっておりますが、それが2%のインフレ実現により、不利益は社会全体で受け止め、能力・努力という面で富の配分が行われるいうある種の「公平な社会」に進んでいくと思います。
注)社会的弱者のセーフティーネットの必要性を否定しているのでありません。それは、税金による「富の再配分」の範囲であり、今回の話は「富の一次取得」の範囲の話です。この「富の一次取得」は能力や努力といった面で配分される方が「公平な社会」と私は思い、表現しております。
余談
このほか、金利、資産価格について書こうと思いましたが、コラムのボリュームが多くなりましたので、今回はここで終了です。金利や資産価値のお話は他の方も書かれると思いますので、今回は省略します。他の方が書かないようであれば、言わないようであれば、金利や資産価格について、改めて書こうと思います。
(おわり)
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