デフレとインフレどちらが良いの?(2)
『アベノミクスで株価が上がった、下がった』の話がニュースで流れるが・・・、実社会・実経済の影響が全く分かりません。そこで、小泉政権下での「いざなみ景気」に起きた社会現象を振り返り、これから起きる実経済・実社会の変化を探っていきたいと思います。
そもそも「いざなみ(小泉)景気」とは?
主に小泉政権下の2002年2月から2008年2月の73か月の長期にわたる記録的な好景気。しかし、好景気期間は長いものの実質GDP成長率は2%前後と伸び悩み、労働者の賃金は伸びず、好景気の実感は乏しかった。その後、リーマンショック(世界金融危機)が来て終焉した。
当時の経済の話題
非正規雇用、ワーキングプア、市場原理主義、低金利、円キャリートレード、証券化、レバレッジ、ヘッジファンド、格差社会・勝ち組・負け組、りそな銀行への公的資金注入、郵政民営化、規制緩和、行政改革、・・・。
このように並べてみると、マイナスのキーワードが多く本当に好景気なのかと思ってしまいます。当時の私も好景気期と政府が発表しているのが信じられませんでした。しかし、5年経った今当時を振り返ると「デフレ下」で本当の好景気期だったのだと思います。「デフレ下」での好景気とはこの様なモノで、貴重な体験をしたと思います。
いざなみ景気とアベノミクスの共通点:円安の演出
小泉政権下では金融緩和を積極的に実施し、2003年下期から2004年上期にかけて約35兆円の円売り介入をする。日銀の福井総裁(2003年-2008年)もそれに協力し、また、量的金融緩和の再開・低金利政策をする。この日銀の政策は、外国のヘッジファンドが金利の安い日本で借りて、その円を市場で売って、ドル・ユーロを買い・運用する「円キャリートレード」を促進する。この市場で円が売られる影響により、円安が実現し定着する。
では、アベノミクスは「大胆な金融政策」を受け、日銀は黒田総裁(2013年- )を迎え「量的・質的金融緩和」を発表し、マネタリーベース(供給する通貨量=現金通貨+日銀当座預金)の増加を行い、円安へ誘導を行っている。
このように、両方とも円安にして景気を良くしていきたいと願っています。
実社会への影響:輸出、生産が好調になる。
いざなみ景気では、円安の実現から輸出が好調となり、生産量が拡大しました。日本の経常収支(外貨獲得量)は2001年(1120億USドル)から2007年(2121億USドル)に伸びました。
これにより、やはり円安は日本経済にとってはプラスに働くことが判ります。例え輸入価格が上がって、家計に負担が増加しても、社会全体はその恩恵は受けているのです。今回も同様に円安の恩恵を社会が受けると思います。
実社会の影響:雇用が改善する
いざなみ景気の当時、シャープやキャノン等の工場が国内に戻ってきた。それにより非正規雇用ならが雇用が改善した。労働者数が2002年4940万人⇒2007年5173万人に増加した。(内約:2002年の正規3489万人・非正規1451万人、2007年の正規3441万人・非正規1732万人の非正規雇用のみ増加)
今回のアベノミクスでも円安による輸出と生産の拡大により、雇用は改善すると思います。輸出と生産の労働は、アジアの安い労働力との競争にさらされるので賃金の増加は見込めないが、多く雇用者を生むので薄く広く賃金が回ると思います。
実需に頼った経済成長を目指す限り、この状況が生まれると思います。
実社会の影響:日本の存在感生まれる。
安部総理が、「強い経済が日本を守る」といったのは賛成です。日本の発言力や影響力の原資はやはり経済力なのです。食料品などの生活必需品まで輸入に頼っている日本は、外貨獲得できないことが本当に恐ろしい事態です。経済力が棄損しては国民の生命と財産は守れないと思うのです。
今回は、いざなみ景気とアベノミクスと共通点を見ましたが、次回は、いざなみ景気とアベノミクスの違いを明らかにしていきたいと思います。
このほか、アベノミクスの「機動的な財政政策」と「民間投資を喚起する成長戦略」には政治的に実現ができるか懐疑的で、現実社会にどのような経済効果が生まれるかわからないので今回は取り上げません。
(つづく)
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