「相続人になる兄弟姉妹の判断能力に不安がある方」のための遺言書の書き方
「子供の判断能力に不安がある方」のための遺言書の書き方
こんにちは、「遺言書作成・相続手続きサポート」宮城県名取市まさる行政書士事務所 菅野勝(かんのまさる)です。
今回は、【遺言書の書き方講座 家族編 vol.8】として、『「子供の判断能力に不安がある方」のための遺言書の書き方』についてお伝えしたいと思います。
遺言書を作成する皆様共通のメリット・理由は、相続開始時に面倒な遺産分割協議書が不要となり、相続手続きを円滑に進められることです。
遺言作成時に知っておきたいチェックポイントを解説します。
子供の判断能力の判定
子供に知的障がい又は精神障がい等により判断能力に不安がある場合には、専門医による検査を受け、子の判断能力を正確に判定することが必要になります。
子供の後見制度利用と後見人の確認
後見制度には成年後見制度と未成年後見制度があり、そのうち、成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度があります。
法定後見制度には、本人の判断能力の程度などに応じて、後見、保佐、補助の各制度があります。
子供が後見制度を利用している場合には、後見人、保佐人、補助人又は任意後見人が選任されています。
後見制度を利用している子供へ財産を残す場合には、事前に、後見人等に財産管理の状況や方針も確認しておくことが必要です。
後見制度を利用している子供へ財産を残す場合の注意点
後見制度のうち、子供が「保佐、補助や任意後見」を利用している場合には、子供自身が財産を自分で管理すること、又は子供の意思に従って財産を管理することがまだ可能かもしれません。
しかし、子供が「法定後見」を利用している場合には、仮に子供に財産を残したとしても、子供自身が財産を管理することはできないため、「後見人」が全財産を管理することになります。
後見人は、子供の財産管理において裁判所の監督の下、その使途に制限が加えられることがあります。
そのため、子供に兄弟姉妹がいる場合に、その兄弟姉妹にその子供分の財産を承継させた上で、その子供のために財産を活用するという考え方もあり得ます。
ただし、子供が法定後見を利用していたとしても、子供には「遺留分」があるため、仮に、子供の遺留分を侵害する内容の遺言を残した場合には、後見人から遺留分額請求をされることがあります。
財産管理が難しい子供に代わって子供の兄弟姉妹に財産を残す場合
子供自身による財産管理が難しい場合には、その子供に代わって、子供の兄弟姉妹に財産を承継させた上で、その兄弟姉妹が子供のために財産を活用するということも考えられます。
その場合には、遺言により子の兄弟姉妹に財産を承継させつつ、その兄弟姉妹に対し、財産管理に問題がある子の世話をするという負担を付する方法があります(民法1002)。
条項例
第○条 遺言者は、下記の財産を二男B(昭和○年○月○日生、住所:
○○県○○市○○町○○)に相続させる。
この財産を相続させる負担として、二男Bは長男A(昭和○年
○月○日生、住所:○○県○○市○○町○○)が死亡するまで
同人と同居し、生活費、医療費を負担し、身近の介護をする
こと。
記
1 土地の表示 (省略)
2 建物の教示 (省略)
遺言による未成年後見人の指定
子供に兄弟姉妹はいなく、自分の死後、判断能力に不安がある子供に、自分が希望する者を未成年者後見人にしたい場合は、遺言によって指定することができます。
民法では、未成年者に対して「最後に親権を行う者かつ管理権を有する者」は、遺言で、未成年後見人を指定することができるとされています(民法839)。
また、未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができます。
遺言で、ご自身が信頼できる者を、未成年者後見人に指定しておくことは子供にとっても将来有意義なことであると思います。
条項例
第○条 遺言者は、未成年者A(平成○年○月○日生)の未成年者後見人
として、次の者を指定する。
氏名 ○○○○
住所 ○○県○○市○○町○○
職業 ○○
生年月日 昭和○年○月○日