「遺言執行者を指定したい方」のための遺言書の書き方
「遺留分侵害がある方」のための遺言書の書き方
こんにちは、「遺言書作成・相続手続きサポート」宮城県名取市まさる行政書士事務所 代表の菅野勝(かんのまさる)です。
今回は、【遺言書の書き方講座 遺産分割編 vol.5】として、『「遺留分侵害がある方」のための遺言書の書き方』をご案内します。
遺言書を作成する皆様共通のメリット・理由は、相続開始時に面倒な遺産分割協議書が不要となり、相続手続きを円滑に進められることです。
遺言を作成しようと思った時に知っておきたいチェックポイントを解説します。
遺留分を侵害した遺言書は無効か?
「遺留分」と聞くと、必ず犯してはならない相続人の権利であり遺言者は遺留分を無視した遺言書は無効ではないか?と思われがちです。
しかし、遺言者による遺留分侵害行為は当然に無効となるのではなく、単に遺留分侵害額請求をなし得るにすぎません。
遺留分権利者が遺留分侵害額請求を、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しなかったときは、遺留分侵害額請求権は時効によって消滅します。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様です(民法1048)。
したがって、遺留分侵害額請求がなければの遺留分を侵害した遺言書通りのになります。
とは言っても、遺留分権利者による遺留分侵害額請求の行使を想定した遺言を作成しておかないと、実際に遺留分侵害額請求を受けると遺言の執行が滞ってしますおそれがあります。
遺留分権利者
ここで遺留分権利者とは、相続人のうちどこまでの範囲の者であるかについてご説明します。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、以下の額を受けることができます。
① 父母(直系尊属)のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
② 配偶者の場合には、被相続人の財産の2分の1
つまり、父母(直系尊属)、父母及び配偶者が遺留分権利者となります。
遺留分の算定の基礎となる財産の範囲
遺留分の基礎となる財産の範囲はどのように算定するかを見ていきます。
遺留分は、相続人が相続開始の時において有していた財産の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定します。
また、遺留分の算定の基礎となる贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、その価額を算入することが原則ですが、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年以上前の贈与も算入されます(民法1044)。
生命保険金及び死亡退職金については、相続税法上は「みなし相続財産」として取り扱われるものの、法的には保険金受取人あるいは受給権者の固有の権利と解されます。
したがって、原則として生命保険金及び死亡退職金は、遺留分の基礎となる財産の範囲には含まれません。
遺留分の放棄
遺留分権利者は、相続開始前において、家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄することが出来ます(民法1049)。
したがって、遺留分権利者の協力が得られる場合は、遺言書の作成時に遺留分権利者に遺留分放棄の審判を家庭裁判所に申し立ててもらうことも方法としてはあり得ます。
家庭裁判所が許可をする場合の許可基準としては、遺留分権利者の自由意思に基づくものであること、放棄理由の合理性、必要性、代償性が唱えられており、申立てにより当然に遺留分の放棄ができるわけではありません。
今回は、以上となります。