「生命保険を掛けている方」のための遺言書の書き方

菅野勝

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テーマ:遺言書作成

「生命保険を掛けている方」のための遺言書の書き方



 今回は、【遺言書の書き方講座 財産編 vol.9】として、『「生命保険を掛けている方」のための遺言書の書き方』についてお伝えしたいと思います。

遺言書を作成する皆様共通のメリット・理由は、相続開始時に面倒な遺産分割協議書が不要となり、相続手続きを円滑に進められることです。遺言を作成しようと思った時に知っておきたいチェックポイントを解説します。

生命保険金請求権の相続財産性

 生命保健契約者が自己を被保険者とし、相続人中、特定の者を保険金受取人と指定した場合、その相続人の生命保険金請求権は固有の権利として生命保険金を請求することができます。

 つまり、このような場合、生命保険金請求権は被相続人の相続財産ではなくなることになります。

 生命保険契約において、生命保険金の受取人を特定の相続人と指定をしておけば、遺言において何らの記載をしておかなくとも、当該生命保険契約における生命保険請求権については、特段の問題を生じることはありません。

保険金受取人を指定しなかった場合

 それでは、保険金受取人を指定しなかった場合はどうなるのでしょうか?

 その点、保険約款に「保険金受取人の指定のないときは被保険者の相続人に支払います」と記載されていたことを根拠に、保険金受取人を指定した場合と同様「本件保険契約についても、保険金請求権は、被保険者の相続人の固有財産に属するものといわなければならない」(最判昭48・6・29判時708・85)とされました。

 この場合、相続人が複数いるときは、各相続人の受取りの割合には、注意が必要です。

遺言による生命保険金の受取人の変更と注意点

 生命保険に関連する遺言作成を検討する上で、遺言によって「生命保険金の受取人の変更」ができるか?とういう問題点があります。

 この問題点に対して、平成22年4月1日から施行された「保険法」によって、保険金受取人の変更に関して明確化されました。

 保険法よりますと、「保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる」(保険法44①)とされました。

 もっともこの場合、遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができません(保険法44②)。

 また、死亡保険契約の保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じないことになっています(保険法45)。

 注意点としましては、保険法の施行日前(平成22年4月1日以前)に締結された保険契約については、上記の保険金受取人に関する遺言による変更の規定が適用されませんので注意が必要です。

 その場合は、個別に生命保険会社に相談することになります。

条項例

第○条 遺言者は、次の生命保険契約に基づく生命保険金の受取人を、
    妻A(昭和○年○月○日生)に変更する。
    保険証券番号     ○○
    契約日        平成○年○月○日
    種類         ○○生命保険
    保険金額       ○万円
    保険者        ○○○○
    契約者        ○○○○
    被保険者       ○○○○


遺言による生命保険金の受取人の変更の問題点と解決策

 遺言によって、保険金受取人が変更できるようになりましたが、ここで更なる問題点が起きる可能性があります。

 それは、遺言による保険金受取人の変更は、生命保険会社に通知をする前に、従前の保険受取人が保険金の請求をして、保険金が支払われてしまった場合には、変更後の保険金受取人は保険金の請求をすることができなくなると、いう問題点です。

 そのため、トラブル回避方法としては、遺言において「遺言執行者を指定」し、遺言執行者に生命保険会社に通知をしてもらうようにすることが有効であると考えられます。

受取人が既に死亡している場合

 受取人が給付事由の発生前(生命保険なら被保険者の死亡前)に死亡したときは、その相続人全員が保険金受取人となるとされます(保険法74①)。

 この場合の受取割合は、頭割りというのが判例です。

 受取人の特定又は遺言による受取人の特定を適切に行います。


 今回は、以上となります。

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菅野勝
専門家

菅野勝(行政書士)

まさる行政書士事務所

注文住宅の営業担当として31年間170棟の住まいづくりに携わって来ました。その豊富な経験、顧客対応力を生かし遺言相続、成年後見、外国人サポートを中心に相談者の暮らしに寄り添ったサポートを行います。

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