「過去に作成した遺言等がある方」のための遺言書の書き方
「財産を残したくない子供がいる方」のための遺言書の書き方
今回は、【遺言書の書き方講座 家族編 vol.10】として、『「財産を残したくない子供がいる方」のための遺言書の書き方』についてお伝えしたいと思います。
遺言書を作成する皆様共通のメリット・理由は、相続開始時に面倒な遺産分割協議書が不要となり、相続手続きを円滑に進められることです。
特定の子だけに財産を残したくない理由
特定の子だけに対して、財産を残したくない場合どのうように遺言書に書き示せばようか考えていきたいと思います。
「特定の子だけに財産を残したくない」と希望する理由としては、その子には他の子と異なり、多額の学費や結婚式の費用を支出したとか、その子が遺言者に対して反抗的な態度をとり続けているなど様々な事情、理由があるかと思います。
遺留分侵害額請求されるリスク回避方法
遺言者が、特定の子に対してだけ財産を残さないという内容の遺言をした場合、その子の遺留分を侵害することになるため、その子から他の相続人に対し遺留分侵害額請求がされる可能性があります。
この場合のトラブル回避方法としては、遺言者がどうしてその子供にだけ財産を残さないかを「付言事項」として遺言に記載する方法があります。
「付言事項」は法的強制力はありませんが、遺言者の意思を伝えるメッセージとして、その子供から他の相続人への遺留分侵害額請求を行わないように説得する効果が期待できます。
「付言事項」文例
一郎の医者になりたい希望を叶えるために、多額の予備校費用を
支出し大学医学部に入学できました。私立大学の医学部でしたので、
その学費も非常に高額でした。そのおかげで、一郎は念願の医者に
なることができ、今では裕福な生活をしています。
それに対して、次郎は、私の援助を受けることなく国立大学に
入学しました。大学卒業後は、会社員として頑張っていますが、
必ずしも裕福な生活をしているといえません。
そこで、私は、兄弟間の公平を図るため、次郎には財産を残します
が、一郎には財産を残さないようにしました。一郎は、私の考えを
尊重し、次郎に対して遺留分を請求しないようにしてください。
推定相続人の廃除
特定の子が繰り返し暴力を振るうなどの事由がある場合には、その子供を廃除することにより、その子供から相続権そのものを剥奪するこができます(民法892)。
廃除された相続人は相続権がなくなりますので、遺留分も主張することができなくなります。
推定相続人の廃除は遺言によっても行うことができます(民法893)。
だだし、相続人を廃除するには、被相続人に対し「虐待しとこと」若しくは「重大な侮辱を加えたこと」又は「その他著しい非行があったこ」となど、その者を相続人から除外することを社会的、客観的に正当化できる理由があることが必要です(民法892)。
推定相続人を廃除する旨の遺言がある場合には、遺言執行者が、その遺言の効力が生じた後、遅滞なく、推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければなりません(民法893)。
そのため、推定相続人を廃除する旨の遺言をする場合には、信頼できる者を「遺言執行者」にさだめておくことが望ましいといえます。
推定相続人の廃除の取消し
遺言者が生前、推定相続人を廃除していた場合には、遺言により、その廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法894②・893)。
廃除の取消しには特に理由は必要ではありませんが、条件を付することはできると解されています。
推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求するのは「遺言執行者」であるため、推定相続人の廃除を取り消す旨の遺言をする場合にも、「遺言執行者」を定めておくことが望ましいといえます。
代襲相続の可能性
遺言者が特定の子に財産を残したくないと考え、その子を既に廃除していた場合において、その子に子(遺言者からみて孫)がいる場合、その孫が代襲相続することになります(民法887②)。
今回は、以上となります。