PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

心不全専門医の立場で、健康について一緒に考える

健康について一緒に考える心不全治療のプロ

大西勝也

大西内科ハートクリニック院長 大西 勝也
大西内科ハートクリニック 待合室

#chapter1

医師としての人生を変えた悲しい出来事

 ピンク色と水色のハートマークが目印の大西内科ハートクリニックは、近鉄南が丘駅から徒歩5分のところにあります。待合室は天井が高く、開放的な雰囲気です。「ホテルのロビーがコンセプトなんですよ。」院長をつとめる大西勝也さんの柔らかな物腰に、「病院へ来た」という緊張感が一瞬で解けました。
 医師である父の背中を追うように医学の道を志したという大西さん。何科に進むべきか悩んでいた学生時代、循環器内科での体験が将来を決定づけたそうです。
「ある日、まだ高校生の少年が難病である『拡張型心筋症』で入院してきました。その後、治療のかいなく、お亡くなりになり、半年後、少年の弟さんも同じ病で命を落としてしまいました。その時のお母さんの人目をはばからずに取り乱す姿、泣き叫ぶ声は、今でも脳裏に焼き付いています。」
 その出来事を発端に、循環器内科で心不全の研究を始めたものの、当時の治療法は、あまりにも「さじ加減」だったと大西さんは言います。
「循環器内科の中でも、心不全を専門にする医師は少なく、治療方法も、医師によってバラバラ。科学的根拠に基づいた治療の必要性を感じ、アメリカへ行くことを決心しました。」
 2年間、アメリカで心不全の研究に取り組み、帰国後十年間、三重大で心不全治療の責任者として、第一線で治療にあたった大西さん。開業のきっかけは何だったのでしょう。
「心不全の原因は、生活習慣が大きく関係しています。しかし、大学病院では、患者さんの生活習慣を把握する時間が無いのが現状です。そこで、大学病院での治療をより身近に提供し、もっと患者さん一人一人と向き合う心不全治療を行いたいと、開業することにしました。」

#chapter2

「チーム医療」で一人一人に合った治療法を

 治療に取り組む時、大西さんは、「チーム医療」と言われる、医師、看護師、患者、患者の家族、それぞれが協力し合うということが重要だと言います。
「医師が病院でいくら治療をしても、家庭で暴飲暴食をしていては、意味がありません。例えば、ご家族に食べ盛りのお子さんがいる場合、食事制限をすると言っても、なかなか難しいものがあります。そんな時に、家族の理解と協力を得る。あるいは、そういう条件下でも可能な治療を考えないといけないかもしれません。」
医者本位の考えを押し付け、一方通行の治療をするのではなく、どうすれば、無理なく治療を続けていけるかを、家族を含めたチームで一緒に考える。それが大西さんの治療方針です。

 また、大西さんは、「健康寿命を延ばす」ということにも積極的に取り組んでいます。「健康寿命」とは、自分の足で歩き、介護を必要としないで生活できる期間のことです。
「ふくらはぎは第二の心臓と言われ、血液を心臓に送り返すポンプの役割をしています。病気などで一度、寝たきりになると、ふくらはぎの筋力が衰え、歩けなくなり、結果的に心臓に負担をかける危険性があります。高齢になると、一度、落ちた筋肉を取り戻すことは大変です。そうなる前に、筋力を落とさないリハビリを始めることが大切です。」
いつまでも自分の足で歩きたい。誰もが願うことですが、それに取り組む医師はまだまだ少数派だそうです。

大西内科ハートクリニック 外観

#chapter3

歳のせいだと、決めつけている症状はありませんか?

 心不全の専門医が思う、私たちが普段から気を付けるべきことは何かを聞いてみました。
「体の不調を歳のせいにしないことです。動悸やめまい、息切れといった症状を、『高齢だから仕方がない』または、『まだ若いから大丈夫』と決めつけておられる方がいます。実は、そこに重大な心疾患が隠れていることがあります。わずかな症状であっても、病院で相談すること。どんな病気でもそうですが、早期発見、早期治療が大切です。」
 大西さんは、診察で、できるだけ症状を詳しく聞き取り、その内容を重視しています。体の不調を感じ、病院へ行ったものの、検査結果に異常がないからと、治療をしてもらえなかった。そんな経験をした人は、少なくないはずです。
「症状があるということは、それが絶対なんです。私は、検査には限界があると考えています。検査結果だけで診断を下すということは、とてもナンセンスなことだと、普段から若い医師にも伝えています。」
 クリニックの仕事以外にも、三重大学大学院での指導、各地での講演活動と多忙な大西さん。
「心不全を専門に研究、治療をしている医師は少ないので、自分が伝えなければならないという使命感があります。その原動力は、学生時代に経験した、あの悲しい出来事なのかもしれません。」
 いつまでも初心を忘れず、真摯に患者と向き合う。その姿勢に多くの人が信頼を寄せています。

(取材月日:2013年5月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

大西勝也

健康について一緒に考える心不全治療のプロ

大西勝也プロ

内科医

大西内科ハートクリニック

原因が幅広く、治療が難しいとされる心不全治療において、長年、専門医として、研究、治療に携わってきた。その豊富な知識と経験で、一人一人に合った治療法を、患者と共に一緒に考え、信頼を得ている。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ三重に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または三重テレビ放送が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO