PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

「心の支援」を社会に広げ、心理療法で子どもの成長と家族を支える

子どもの心の成長を支える心理ケア、大人のカウンセリングのプロ

平井正三

プロフィール

#chapter1

対話や遊びを通して言葉にならないサインに耳を傾け、無意識の心を見つめる心理療法

 「年齢を問わず『自分のやりたいことが分からない』『集団の中でうまく馴染めない』といった生きづらさを感じる人は少なくありません。背景にあるのは、子ども時代の経験や家族関係の問題、経済的な不安や医療の課題などとさまざま。中には本人すら気づいていないケースもあります」

 そう話すのは、地下鉄烏丸御池駅近くにある「御池心理療法センター」代表の平井正三さん。大人だけでなく、子どもとも対話を通して無意識の心を見つめていく精神分析的心理療法を用い、時間をかけて心の内側をひも解いていきます。

 センター内はプライバシーに配慮し、カウンセリング室4室と待合室も全て個室に設けています。平井さんをはじめ、臨床心理士や心理療法士のほか教育や医療、福祉などの知見を持つ8名のセラピストが在籍。本人だけでなく、子どもの発達や不登校に悩む家族、教育・福祉の現場で子どもと関わる人など、あらゆる立場の人の声に耳を傾けています。

 「精神分析的心理療法とは、対話から過去の人間関係や夢を手がかりに、自分の内面を深く探ろうとするプロセスを通して、少しずつ自由を取り戻していくというもの。言葉で表現するのが難しい子どもの場合は、遊びの中で心を表現する『プレイセラピー』で、声にならないサインを受け止めます」

 平井さんは心理面のアプローチだけでなく、子どもの心理支援の基盤を広げようと、「NPO法人サポチル」を設立。学校や児童相談所、弁護士、医療機関などと連携し、経済的・社会的に困難を抱える家庭の子どもにも継続的なケアが受けられる機会を提供するととともに、心理支援に携わる専門家の育成にも力を注いでいます。

#chapter2

探究と実践の可能性を求めて、時々の出合いと気づきが指し示す道へ

 物理学を専攻していた学生時代、平井さんが身を置いたのは、難解な課題に黙々と挑む天才肌の学生たちが集う独特な世界でした。早々に自分との違いを痛感し、進むべき道を見失ったといいます。

 「そんな時、心惹かれたのが、友人が手にしていた一冊の書籍でした。著者は当時心理学研究の第一人者として知られていた河合隼雄先生。その講義を聴講するうち、心の領域、とりわけ子どものメンタルヘルスに強く関心を抱くようになったのです」
 
 当時の日本は欧米に比べて、臨床心理学はまだ創生期。研究レベルは高くとも、社会での実践という面では課題が山積していました。研究と実践の双方に可能性を見いだした平井さんは、サイエンスとは対照的ともいえる臨床心理の道に進みます。

 本格的に心理療法を学ぶために渡英した平井さんは、心に問題を抱える子どもや家族への精神分析的アプローチが、公的制度のもとで無料提供されているイギリスの姿に衝撃を受けます。社会全体にメンタルヘルスへの意識が根付いている様子を目の当たりにし、日本との違いを痛感。一方で、自身が育った地方都市では、地域性や経済的格差が子どもの成長や心の健康に少なからず影響を与える現実を感じてきました。

 「経済的な理由で適切なケアを受けられない子どもたちにこそ、公私の枠組みを越えて支援を届ける仕組みが必要ではないか」。その思いこそが、30年以上にわたって日英両国で臨床、教育、研究、そして社会全体の意識改革に取り組む原動力となっています。

#chapter3

地域全体で子どもの健全な成長を支える社会に、それぞれができることを

 「本来、子どもは家庭だけで育つものではありません。以前は地域ぐるみで子どもを見守り導くような風潮がありましたが、今はその結びつきが薄れつつあります」

 かつて公的な子育て支援の研究会の一員として、社会構造上の課題分析にも取り組んできた平井さん。現在は、専門家への助言や継続的支援(スーパービジョン)を通じて支援者の専門性を高めながら、社会全体の関心や意識を広げ、個人と社会の双方に変化を促す必要性を訴えています。

 平井さんが代表を務める「サポチル」(認定NPO法人子どもの心理療法支援会)の活動の中心にあるのは「子どもたちが健全に成長できる社会を実現する」という理念。公的支援の枠組みから取り残されてしまう子どもや家族に対し、家庭の経済状況に関わらず、それぞれの課題に寄り添いながら、地域全体で支える仕組みづくりを進めています。

 また、子どもの心理療法に特化した専門家育成機関としての役割も重視。体系的な教育プログラムの構築、資格認定制度やフォロー体制の整備など、次世代を見据えた質の高い教育基盤づくりにも力を注いでいます。

 「親御さんへの子育て相談や、大人の方へのカウンセリングも行う当センターをはじめ、複数の提携機関が、当事者の負担を抑えながら丁寧なケアを実践しています。賛同の輪は関西から関東へも広がりつつありますが、活動を継続していくためには、より多くの方々に現状を理解していただくことが不可欠です。子どもたちの健やかな成長を支えるために、今後も多くの方々と手を取り合いながら歩みを進めていきます」

(取材年月:2025年10月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

平井正三

子どもの心の成長を支える心理ケア、大人のカウンセリングのプロ

平井正三プロ

心理カウンセラー

御池心理療法センター

30年以上に渡り、日英で精神分析的心理療法の臨床経験をもとに、子どもと家族の心理相談や大人のカウンセリングに従事。御池心理療法センターでは、8名の心理士が所属し、利用者の様々なニーズにお応えします。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ京都に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または京都新聞が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO