借金が返せなくなりそうなとき、どうすればいい?
本当に暑い日々が続きますが、
皆さん、体調は大丈夫でしょうか。
当事務所もクーラーに頼りきりで電気代がすごいことになっています。
さて、今回のコラムは、相続のお話を致します。
このうち、特に「遺言」について述べたいと思います。
聞いたことがある方もおられると思いますが、
遺言があるかないかで、全然異なる結論になります。
どのように異なった結論になるかについて
事例に基づき、説明をしていきたいと思います。
高齢のAさん(90歳、女性)は、長男のB,次男のCがおり、次男には、次男の娘のDがいます。
Aさんの夫は既に死亡しています。
Aさんと次男Cさんは、長男Bの妻のEさんと折り合いが悪く、
また、次男の娘のDの夫Fさんの収入が少ないため、
Aさんは、次男Cだけでなく、Dさんにも少し遺産を分けたいと思っていました。
Aさんの相続財産は、自宅の土地建物(A単独居住、評価額3000万円)、預貯金2000万円です。
このような事例において
1:「BとCは話し合ってDにも少し財産を分けるように」
と書いた手紙を残していた場合
2:自分で調べて、「BとCは話し合ってDにも少し財産を分けるように」
という内容の自筆証書遺言を作成し、残していた場合
3:「私の所有する不動産は、BとCに、2分の1ずつの割合で共同相続させる。
私の預貯金は、まず、私の債務と葬儀に関する費用、及び遺言執行者の報酬に充て、
残額のうち、2分の1をDに、4分の1をB、4分の1をCに相続させる。
遺言執行者に弁護士Oを指定し、報酬は100万円とする。」
という公正証書遺言を残していた場合
の3つの場合を想定して検討していきます。
まず、1.の場合ですが、手紙を書いただけでは、何ら法律上の効果が生じないので、
B・C・Dで協議が整わなければ、
法定相続人はBとCのままであり、
かつ、法定相続分は2分の1になります。
BとCは、土地建物3000万円、預貯金2000万円を二人で分ける協議を行うことになります。
その結果
(1)Aが望んでいた、Dへの相続は実現しません。
(2)BとCが、不動産・預貯金の取得・処分方法などをめぐって
協議が整わず、遺産分割調停で長期間の協議になるなど、紛争が長期化する危険があります。
場合によっては、BやCから寄与分や特別受益の主張がなされ、
紛争が長期化するおそれがあります。
なお、実際には、兄弟同士ではなく、兄弟の親族間(たとえば、本件ではBの妻EとC)
が揉める場合も多いです。
(3)より最悪のケースとしては、BとCが激しく揉めてしまった場合、
遺産分割審判がなされるまでの長期間、預貯金の払い戻しが全くできなくなります。
(以前は、BとCが、法定相続分の割合に基づき金融機関に請求する権利を
有していましたが、
判例の変更により、相続人全員の合意がなければ、
預貯金の払戻しの請求ができなくなりました)
そのため、10か月以内に相続税を支払うことが出来なくなり、延納手続きを取らざるをえず、多く相続税を支払わなければならなくなるおそれが生じます。
このように、被相続人の死後、相続人及びその親族の性格によっては、
相続手続で揉めてしまうおそれがあるのです。
(あくまで弁護士の見解ですが、スムーズな相続ができる割合は
それほど高くないのではないかと思います。)
次に、2.の場合を考えてみます。
この場合、法的な効果が生じる内容は、
「BとCは話し合ってDにも少し財産を分けるように」
協議すべき義務だけです。
ですので、協議が整わなかった場合は、
この自筆証書遺言の効果は生じず、
1.と同様の結論になってしまうのです。
ですので、遺言を書くのであれば、
しっかりとした法律上の効果が生じる内容の遺言を
作成しなければなりません。
最後に、3.のケースを検討します。
このような公正証書遺言を作成していれば、
死亡と共に、自動的に以下の内容の相続が確定し、
相続のための多くの手続きを、遺言で指定した遺言執行者が行ってくれます。
1.A所有の不動産は2分の1ずつBとCが相続されます。
あとは、BとCで協議し、売却して売却益を半分ずつにするか
どちらかが全部取得し、清算のための代償金を他方に支払うか
どちらかになります。
2.仮に死亡後の預貯金の残高が2000万円、債務と葬儀費用が100万円だった場合、
(1)遺言執行者のみの手続きで、預貯金をすべて払い戻します。
(2)そして、遺言執行者が、預貯金から債務と葬儀費用100万円を支払います。
(3)そして、残額1900万円のうち、
ア 900万円をDに支払い、
イ 450万円をBおよびCに支払い、
ウ 最後に遺言執行者Oが報酬100万円を受領して手続きが完了します。
3.B,C,D共にある程度の預貯金を取得できているので、
相続税の申告・納付もスムーズに行うことが出来ます。
B、Cは、明確に権利関係が定められていますので、
争うことはできません。
無事、紛争がない相続手続が実現できることになります。
このように、
相続後のトラブルの防止のためには、
相続に関する自己の希望を専門家に伝え、
かつ専門家のアドバイスを得て内容を練った上で遺言を作成することが
最も効果的です。
「私が亡くなったあとも、トラブルなく過ごしてほしい」と
お考えの方がおられましたら、
是非、当事務所にご相談頂くことを
お勧めいたします。
(相続の相談は30分無料です)
最後に、上記に述べたとおり、
相続に関する法律関係は、遺言があるかどうか、また遺言の内容により
大きく異なってきます。
遺言が見つかった場合の法律関係についても
適切なアドバイスを行うことができますので、
無料相談をご活用願えますと幸いです。