借金が返せなくなりそうなとき、どうすればいい?
5月も半ば、夏の到来を感じさせるような
暖かく朗らかな日々が続きますが
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回は、「不動産を賃貸する場合のリスク(危険)と対策」と題して
コラムを書いていきたいと思います。
1.(不動産賃貸のメリット)
資産家の方々が、不動産を第三者に賃貸するメリットとして
最も大きいのが
「利回りが大きい」ことです。
不動産の投資価格の、おおよそ、4~7%の年間利回り(年利)を得ることが
出来ます。
年利0.1%を下回る定期預金が珍しくない中、
不動産の年利は、とても投資対象としては魅力的です。
また、株式などの金融資産と異なり、
不動産の価値が大きく下落しない限り、
投資元本を大幅に割り込む結果になることもありません。
ですので、不動産賃貸については、今後ますます
メリットが大きい投資対象になっていくのではないか、と思われます。
2.(リスク(1)契約終了の困難性)
しかし、法律上、不動産の賃貸は、貸主にとって様々なリスクが存在します。
そのうちの一つ目が「契約終了の困難性」です。
まず、建物の所有を目的とする借地契約の場合、土地賃貸借契約の期間は
原則として30年と定められており、
30年を下回る期間を定めても30年とされてしまいます。
また、30年が経過したとしても、契約の更新を拒絶すべき正当な事由が
認められない限り、契約を更新したものとみなされてしまいます。
次に、借家契約についてですが、
契約期間を定めたとしても、
契約の更新を拒絶すべき正当な事由が認められない限り、
契約を更新したものとみなされてしまいます。
(もっとも、定期建物賃貸借契約を締結しておけば、
契約期間が満了すれば契約は終了いたしますが、
法律上、定期建物賃貸借契約の成立のためには、
書面の作成や説明義務など、様々な要件が課されております)
このように、賃貸借契約は終了させるのが困難であるため、
貸主側にとっては
「不動産を利用・処分したいと思った時点でも賃貸借契約が終了できず、
不動産を利用・処分できない」
というリスクが生じるのです。
3.(リスク(2)賃料不払いの場合の損失)
二つ目の場合として「賃料不払いの場合の損失」が挙げられます。
家賃を支払わない賃借人については、
法律上、賃貸借契約を解除し、
もって、賃借人に対し、賃貸目的物の明渡を求めることができます。
しかし、明渡しを求めたにもかかわらず、
賃借人が断固として明渡を行わなかった場合は、まず、
□ 賃借人への明渡を求める民事訴訟
を提起し、勝訴判決を得なければなりません。
なぜかというと、国家権力により強制的に明け渡しを実現しようとする場合は、
まず、裁判所という国家機関から、
民事訴訟の判決という「強制的に明渡をしてもいいですよ」という
お墨付きをもらわなければならないからです。
この結果、民事訴訟を行うための時間・手間・費用を要してしまいます。
訴訟に要する弁護士費用は、本当に事案によって異なりますが、
20~100万円程度になります。
なお、訴訟に要する弁護士費用を相手方に請求することはできません。
さらに、勝訴判決を経ても賃借人が明渡に応じなかった場合
□ 裁判所に民事執行手続を申し立てたうえでの強制執行
を行わなければなりません。
なぜかというと、
個人の財産に対し強制を行うのは、国家権力しかなしえず、
いわゆる自力救済
(例えば、私人が賃貸目的物の内部の動産を
賃借人の承諾なく撤去してしまうことなど)
は、禁止されているからです。
この結果、民事訴訟に加え、
強制執行を行うための時間・手間・費用を要してしまいます。
強制執行に要する費用としては、弁護士費用に加え、
実際に執行を行う執行官の費用などが必要となります。
それらの費用は、本当に事案によって異なりますが、
50~200万円程度になります。
強制執行に要した費用のうち、弁護士費用以外は、賃借人に請求できますが、賃借人に財産(資力)がなければ、事実上回収できません。
このように、賃貸借契約に基づく賃借人が賃料を支払わなかった場合でも
退去させることが困難であるため、
貸主側にとっては
「賃借人の賃料不払いの場合でも、
明渡のため、多額の費用の出費を余儀なくされる」
リスクが生じるのです。
なお、賃借人が賃料を支払わずに物件を明け渡さない場合の主な例として
以下の場合が挙げられます。
□ 賃借人が、賃貸人に対し嫌がらせを行う目的で
賃貸目的物を占有し続ける場合
(この場合がまず想定されますが、この場合以外にも以下の場合があります)
□ 賃借人に転居費用がなく、明渡しが経済的に不可能な場合
□ 賃借人が性格的にズボラで、次の転居先を自ら探さない場合
□ 賃借人が、いわゆる「夜逃げ」をしてしまった場合
□ 賃借人が賃貸目的物の内部で死亡していた場合
現在は2番目がかなり多いと思われます。
では、このような賃借人のリスクに対し、
賃貸人は、どのような対策を立てればよいでしょうか。
このことについては、次回のコラムで、述べたいと思います。