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「塾ジイの日記」32 ―諦めという名の鎖を身をよじってほどいてゆく―

久保克己

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テーマ:受験勉強における学習方略と行動原理

出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。この度、子どもやその親御さんに伝えてきた学習や受験のノウハウが本当に妥当かどうかを自らで立証すべく行政書士試験に挑戦することにしました。これまで受験生に向けて発信してきたアドバイスや指導に則った行動を自身が取ることにより、当事者としての感じ方や課題をこの日記に綴っていこうと思います。

スランプ真っ只中


民法の二回目の到達度模試の結果が送られてきた。120点満点中40点(前回68点)、平均点77点(前回76点)、偏差値32(前回47)、判定C(前回B)、順位295人中281位(前回(340人中210位)という結果だった。最悪じゃ。成績表には以下のコメントがあった。

この科目については、まだまだ基礎力が足りません。細かい知識を詰め込むよりも、まずは基本的な知識を確実に習得しましょう。

偏差値32…あまり見たことがない数字じゃ。総合範囲ではなく、範囲限定の模試でのこの結果はかなり深刻じゃ。準備無く受験したのなら「こんなもんか…」で終わるんだが、今回もそれなりに事前学習をしたうえで試験に臨んだので、落胆もひとしおじゃ。前回の成績も良くなかったが、今回はそれを大幅に上回る悪さじゃ。順位も70位程下落した(受験者数がどういうわけか50名近く減少しているが…)。この状況はいわゆる「スランプ」じゃ。早かれ遅かれ到来するとは思っていたが、ここまでのレベルになるとは想定外だった。

「こんなんじゃ無理だよ」
「諦めた方が良いよ」
「そもそも無謀なんだよ」
どこからか、こんな「悪魔の囁き」が聞こえてくる。

辞めようと思えば今すぐ白旗を上げ、今夜から「晩酌タイム無制限三本勝負」の日常に戻れる。「とりあえず今日だけ、あと一時間だけ、あと5分だけ続けよう…」そんなエンドレスメッセージが脳内に響き渡る。

当初から【どんなに苦しくてもシナリオ通りに演じ切ること】を最重要課題にしていたにも関わらず、押し寄せてくる厳しい現実とそれに誘発される絶望感や無力感に飲み込まれて溺死しそうじゃ。しかし、ここで「ヤル気」という名の浮き輪を求めてはならんのじゃ。
☛「塾ジイの部屋」16 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5155813/

激悪の成績を取った今のわしに対して、現役時代のわしはどんな声をかけるだろう?
「今回の結果が本番でなくて良かったな!データ上は厳しいが、弱点が浮き彫りになったから良かったじゃないか!ここは辛いが【いつも通りの作業】を貫くんだ。答案用紙と成績表のデータを照合し、正答率が高かった不正解の設問を洗い出し、該当問題の解説の確認と授業テキストの該当ページを紐づけ、解答の根拠がわからなければ先生に質問する。この作業が最も有効な学習法なんだ。やるべきネタ、いわば“お宝”がたくさん手に入ったんだ。これを生かすも殺すも次に選択する行動が大事なんだ。『自分自身に勝つ』とか『根性で乗り越える』ということではなく、【やるべきことをやるべきときにやる】これだけを考えて歩き続けなさい」
☛「塾ジイの日記」21 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5157398/

こんな感じの指導をするかな。それなりに準備をしたにも関わらず成果が出なかった受験生への指導は、“諸刃”じゃ。正しいやり方を提示し、【感情に流されることなく同じペースで走り続ける】ことを的確に指導することが肝要じゃ。「今回は残念だったなー。まあ、あまり気にするな。また次がある。これをバネにして頑張れ!」のような抽象度の高いメッセージは全く意味が無いばかりか、生徒のモチベーションを大きく低下させる恐れがある。「慰め」ではなく【チャンスを生かす方略を提示すること】が大事なんじゃ。【あの成績を取ったおかげで合格できた】という状況を創出するためには、ここが踏ん張りどころ!…とはいうものの、感情棚上げして粛々と作業をこなすのは、かなりの精神力を要する。「なんで憶えられへんねん!」「何回同じ間違いやったら気が済むねん!」こんなセリフを吐きながら誤答の確認作業は効果的だがとても辛い。まさに“良薬口に苦し”の心境じゃ。ヤケ酒に走らずこの作業をやっている自分の状況
はハッキリ言って奇跡的じゃ。この立場になってみて、負の結果が出た直後の生徒との関わりの重要さを今更ながら痛感している。

今回は試験直後の見直し作業に加えて解説動画を視聴したので、正答率を基にしたテキストの確認作業は効率よく集中して実施できた。やはり【脳が欲しているタイミングでの情報注入】は効果的ということか。ただ不正解の設問が多かったので、見直しの作業にかなりの時間を要したが…。
☛「塾ジイの日記」17 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5155870/

全ての作業を終え、ビールを一杯飲み干した後、思わずこんな言葉を発してしまった。
「こんちくしょう!負けへんで!」

*このお話はフィクションです
*参考書籍:
  生き方 稲盛和夫 著
  デキる大人の勉強脳の作り方 池谷裕二 監修
  成績が上がる学びの習慣 紀野紗良 著
*今回のタイトルは中島みゆきさんの「ファイト」の歌詞より引用しました*drawn by 蒼りんごさん

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久保克己(塾講師)

株式会社京進

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