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「塾ジイの日記」19 ―ふたつの思考プロセス~演繹法と帰納法~ー

久保克己

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テーマ:授業と復習の関係

出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。この度、子どもやその親御さんに伝えてきた学習や受験のノウハウが本当に妥当かどうかを自らで立証すべく行政書士試験を受験することにしました。これまで自身が発信してきた他人に向けたアドバイスや指導に則った行動を取ることにより、当事者としての感じ方や課題をこの日記に綴っていこうと思います。

スイッチチェンジ学習法

3/8(金)
前回の予備校の授業は民法の「抵当権」がテーマだった。本単元では多くのことをインプットし、理解しなければならない。「民法における抵当権の趣旨」「抵当権関連の13の事例(判例)」「根抵当権の仕組みとその事例」と盛りだくさんの内容じゃ。興味深い単元ではあるが項目が多いので知識が定着するまで何度も【アウトプット→再インプット→再アウトプット…】の作業を繰り返す必要がある。

法律の授業はいわゆる【演繹法】(複数の事実を足し合わせて結論を出す)の手法で展開される。法律というルールに事案を当てはめて判決を出す裁判の内容を学習するのだから必然的なやり方だ。この点が学習塾の授業との大きな違いじゃ。小中学生への指導は教科にもよるが概ね【帰納法】(複数の物事や事例をならべ、それらの事象に共通する情報・ルールを抽出し、共通項を統合して結論を得る)でおこなう方が良い場合が多い。例えば英語であれば、例文(具体例)をいくつか提示した後、文法(ルール)を説明する方が効率的じゃ。法律の授業は判例(具体例)が非常に多いので、判例(具体例)を提示してからの法律(ルール)解説のプロセスを踏むのは不可能ということじゃろうな。

しかし本試験は判旨(判決文)からも出題(例:空所補充〈多肢選択〉)される。ということは具体例のインプットが必要不可欠だということだ。予備校の授業テキストにも判例は記載してあるが、科目ごとになっているので、模擬テストの復習等【科目を横断する確認作業】をする際にはやや使い勝手が悪い。そこで具体例(判例)の情報が全科目分一冊に集約された教材を探してみた。あった!これじゃ!
全科目の判例が掲載してある。しかも各判例の確認テストも付いている。この問題を通して該当判例の知識が定着しているか否かをチェックできる。解答の〇×結果をエクセルのデータに入力し、直前期の学習の優先順位策定(×の判例を高順位にする)に活用しよう。
☞「塾ジイの日記」【外伝その2】 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5155575/
判例問題集には争点、判旨、判決がコンパクトにまとめられているので【再インプット】にも使える。解説には条文番号と判決日が記載されているので、授業テキストとの紐づけも可能じゃ。これは直前期の学習にはうってつけの教材じゃ。早速復習用の教材として活用することにした。これで【授業(インプット…演繹法】→【復習(アウトプット)…帰納法】という工程が確立した。このように【思考のプロセスを使い分けると知識の定着度が高まる】ことはわしも現役時代から感じていたことじゃ。上の工程を学習塾の授業に置き換えると【授業(インプット)…帰納法】→【復習(アウトプット①)…演繹法】→【宿題(アウトプット②)…帰納法】といったところじゃな。復習は【テキストの目次を見て具体例をイメージできるかの確認=目次学習】の形で実施し、そのうえで宿題の【問題演習=具体例の確認】を実施するという流れになる。大事なことは「帰納法・演繹法どちらかに偏っている」または「帰納法・演繹法を意識していない」授業や学習はその効果が半減する可能性があるということじゃな。学習に限らず【各作業の意図を明確にしたうえで方略を検討する】ことが重要じゃ。料理にも同じことが当てはまる。素材をどうしたいのかという意図によって作業内容、時間、工程が決まる。「なんとなく」やってはいけないということじゃな。

明後日は予備校の親睦会じゃ。現役の行政書士の先生と話ができる絶好のチャンスじゃ。飲みすぎないようにしなければ!

*人物名等はフィクションです
*参考書籍:「行政書士判例集」TAC出版
*drawn by 蒼りんごさん

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久保克己(塾講師)

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