「塾ジイの日記」32 ―諦めという名の鎖を身をよじってほどいてゆく―
出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。この度、子どもやその親御さんに伝えてきた学習や受験のノウハウが本当に妥当かどうかを自らで立証すべく行政書士試験を受験することにしました。これまで自身が発信してきた他人に向けたアドバイスや指導に則った行動を取ることにより、当事者としての感じ方や課題をこの日記に綴っていこうと思います。
予習の弊害
2月1日(木)
2月に突入した。すごく寒い日もたまにあるが総じて今年は暖冬じゃ。昔どこかの塾の先生が「寒くなると受験生は急に勉強し始める。暖冬だと受験生は勉強しない」と言ってな…。昨日は痛風が発症したのでビールは控えた。大体夏になることが多いんじゃが、最近発症の頻度が上がってきている。資格学校に行けなくなると困るのでしばらく焼酎にしよう。ん?それなら飲むな?ダメじゃダメじゃ!【好子(ご褒美)なくして行動なしじゃ】ルーティン(習慣)は継続しなければ成果が出ない。
昨日も授業があった。去年の12月開講のクラスなので、休憩時間とかで談笑している人たちが何人かいる。まあ、普通の光景じゃが…わしの感覚ではこういうところであまり仲良しグループは作らない方が良い。学習塾でもそうだが、「一緒に頑張ろう!」という雰囲気であれば良いのだが、「あなた一日何時間くらい勉強してるの?」「へー凄いわね!」みたいなやり取り…なんか「腹の探り合い」しているみたいでイヤじゃな…ということで、わしはここでは仲良しさんは作らないことにした。とは言うものの、教室にいる人の様子は気になる。授業中チラ見していると意外なことに気づいた。授業はテキストの重要箇所にアンダーラインや書き込みの作業が中心なんじゃが、すでにその作業をしている(テキストにアンダーラインや書き込みがしてある)人が複数いた。最初は「去年も受講していた人なのかな?」と思ったが、よく考えるとテキストの表紙の色は年度ごとに変わり、わしと同じ色の表紙なのでその可能性はない。だとすると…そうか!WEBを予め視聴したうえで、ライブの講義を受講しているのか!?熱心だな!1回2.5時間の講義を2回受講しているということは5時間か…5時間のインプットは結構ハードじゃな…。でも更に驚いたのは…そのような予習をやってきた人はほぼ全員スマホを見ている。「あ、わしと同じようにテキストの小見出しを入力しているのか!?あのやりかたはスタンダードだったのか…」と思ったが、ダメだと思いつつ隣の人のスマホの画面をチラ見すると…なんと!麻雀のゲームをやっているではないか!!一瞬我が目を疑った。でもすぐに状況が理解できた。この人たちは「もう今日の授業の内容知ってるもんね!」みたいなスタンスなんじゃろう。いやー、なんというか…これは本末転倒じゃ。おそらく「同じ内容を2回聞けば1回だけより覚えられるはず」という発想なのだろう。しかし【インプットした知識はアウトプットの作業をを通して定着する】んじゃ。「インプット→再インプット」は効率が悪いうえに記憶が定着しない。つまり予め授業内容を知ること(予習)が授業内容の理解や定着の阻害要因になっているとじゃ。
学習塾でも同じことが…
この現象は学習塾でも見られる。わしも現役時代に何回も経験した。中学1年生の英語じゃ。昔は中学から英語の授業がスタートしたので中1の最初はアルファベットの練習から始まる。ここで厄介なのが「幼少期から英語(英会話)を習っている生徒」じゃ。「ABCD…こんなもんやっとられるか!授業中寝ててもテストで満点取れるわ!」みたいなスタンスで優越感通り越して喪失感さえ感じているように見受けられる生徒が毎年数名いた。じゃが、そのような生徒が中1の10月くらいにテストの点数が急降下するシーンをわしは何回も見てきた。学校や塾の英語の勉強をまったくしないまま1学期を終え、そのままの意識で秋を迎えると、気が付くと英語がわからなくなっているという状況だ。このトラップにはまってしまうとなかなか抜け出せない。英語(英会話)に時間とお金を先行投資したことが英語学習の阻害要因になってしまうという何とも皮肉なお話なんじゃな。中1の説明会等の席上、英会話を習っている生徒やその親御さんには「学校の英語を侮ることなく、しっかり勉強する」旨強く忠告するんじゃが、落とし穴にはまってしまう生徒は必ずいた。
資格学校のT先生から見れば、わしの授業中の“スマホいじり”も同じく「麻雀かなんかをやっている」と思われているんじゃろうな…。しかしわしは初受講なのでテキストへの書き込みとスマホ入力の作業で大忙しなんじゃが…。今度T先生と話す機会があれば言っておこう。「わしは麻雀はやっとりゃせん!」
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